記事一覧

思わず嗚咽を

ごめんなさい。なんで今月分の更新がここまで遅くなったのかと申しますと、久々に連載休止に突入してしまった本編とのしばしの別れを惜しむあまりに、もし「読み解け」を書き上げてしまったらば本当にFSSとの暫時の別れを認識せねばならないのではないかという不安から、思わずてなしもは一人遠くに旅立ってしまって・・・
どなたも信じませんよね。もちろん冗談です。といっても心情的にはそれに近いんですけど、実際の理由は、表紙、内容ともにあまりに大変なものだったので逃げ回っていたということにつきます。弱虫です。逃げちゃ駄目だとつぶやく少年の姿が脳裏をよぎります。
しかし、いざ書くからにはやりますよ。ええ、やりますとも。


最初の見開き

内容から始めます。今号の表紙は、これから出版される副読本の内容紹介なんですから、後に回した方が納まりが良いだろうという判断です。

実はとってもデンジャラスなデザインの、ハスハのお城の塔の一室のテラスから、まだ少女と呼べるような佇まいの天才マイト、ミース・バランシェが空を見上げているカットから始まります。
アウクソーとミースの再会。それはおそらく、カイエンの手によってミースがDr.バランシェの養子にされた時以来のものなのでしょう。コミックスで言うと、4巻のエピソードですね。4巻のその内容がニュータイプ誌に掲載されたのは、確か1991年の初め頃です。・・・連載年数で言っても、ちょうど9年ぶりの再会ですよ、こりゃ。ジャンプでやってる「こち亀」の日暮サン(4年に一度、オリンピックイヤーにだけ現れるキャラ)より凄いかもしれません。ちなみに、作品内時間だと21年ぶりの再会ということになりますが、ジョーカー星団と僕らの世界とでは時間の流れ方が少々異なるそうなので、この年数通りの懐かしさだとは受け取らない方がよいでしょう。寿命も違うし。
・・・まてよ。ちょっと検証してみましょう。ジョーカーの人たちの限界寿命は、約300歳という話です。僕らで言うと100歳くらいでしょうか。約3倍です。で、21を3で割ると7。ものすごい単純計算ですが、感覚的には、命の恩人との7年くらいぶりの再会という感じかもしれません。ジョーカー人にとっての思春期というのがどれほどの長さなのかは解りませんが、もっとも多感な年頃にあこがれた人たちとの7年ぶりの再会ともなれば、そわそわするミースの、そして逃げ惑うカイエンの気持ちというのも、推して知るべし、でしょうか。いや、カイエンが逃げているのは、単純に「純粋に自分を想っている女性」に会うのが恥ずかしいからだと思いますが。
話題を本編に戻します。
アウクソーとの会話はこのシーンではわずか10あまりです。しかし、そこからいくつかの情報が読み取れます。
「バランシェ様」と呼ばれたミースは、「その名前は大きすぎる・・・」とつぶやいて、自分を以前のようにミースと呼んでくれと告げます。バランシェがマイトとしてあまりに巨大な存在であるということを、ミースは当然知っているわけです。すでに五本線のついたマイト服を身に纏える、立派なフルマイトになっているわけですが、そうなってみるとなお、バランシェという名前の巨大さが解るのでしょう。すでにミースは4巻の時のような物知らぬ少女ではないのでした。
照れながらカイエンの様子を聞くミース。自分の前に姿を見せてくれないカイエンが、気になってしょうがないのでしょう。それとなく聞いている風を装って、恥じらいながらよそ見までしています。いじらしや。
答えてアウクソーは「マスターはミース様がまぶしいみたいです」。しかしミースは、カイエンに避けられているように思えてなりません。ああ、恋するものは、えてして相手の言動を悪い方に考えてしまうものです。思い悩むミースは、自分がカイエンのお陰でここまで来られたのだというエピソードを語りはじめます。
カイエンに救われ、バランシェの養子になって間も無い頃と思われる少女時代。ミースは王立学校でのテストのカンニングの容疑をかけられ、それが濡れ衣であると涙乍らに訴えています。バランシェの傍らには、この頃里帰りをしていたファティマ・時が寄り添っています。ジャスタカークでMHグルーンを駆る天位騎士、アイオ・レーンのファティマです。といっても、この時代には何処に嫁いでいたのかは定かではないのですが。このファティマ・時は、この後バランシェの最期を見取るファティマでもあります。
代数の問題用紙があります。問題の数式の直後に、いきなり答えが書いてあります。バランシェはミースに詫びます。いきなりこんなレベルの高い学校に入れてしまってすまなかったと。カンニングせねばならないほど辛い状況に追い込んでしまったのかと謝ったわけです。
しかしミースは、泣きながら、そんなのは見たらすぐ答えがわかるのに、どうして複雑な式なんて使わなければならないのかと、バランシェに訴えるのです。バランシェは、その発言に違和感を感じて、ミースに問いかけを発します。「988年前の星団暦2001年、1月21日は何曜日だったかな?」、ミース一瞬で答えて「日曜日に決まってます・・・!」。まだ泣きじゃくるミースの前で、バランシェと時は自分たちが勘違いをしていたことに気がつくのです。僕は初めに読んだ時、ミースのこの能力は彼女が幼い頃に勉強を習っていたA-T先生、つまりファティマ・アトロポスの教育によるものなのかと思いました。バランシェはミースがアトロポスの教え子であるということは知らないはずですし。しかし真実は、僕なんかの予想をはるかに越えていきます。
この回想シーン中、バランシェはシルエットでしか登場していません。死の直前のその体は、すでにぼろぼろなのです。醜くなってしまったその姿をあえて見せる必要は無いのでしょう。バランシェは、死が訪れるその時までクールに描かれるのです。
それにしても、時のファティマスーツはまるで社長秘書のようで、フェティッシュな魅力がむんむんです。まさにインビンシブル・エロティシズム。デカダンスタイルまっしぐらです。


二つ目の見開き

バランシェはミースを試すことにします。なにやら得体の知れん100列からなる記号の配列を読み解き、101列目に来ると予想される記号列を述べよと言うのです。
超絶的な高性能生体コンピューターであるファティマの時ですら、それは全くわからないと言います。「4塩基配列」なんて言ってますから、遺伝子の話のようですが、僕らが知っているような知識はもちろん、なにやら高度な方法を用いたとしても先を予想するようなことは出来ないんだそうです。
ミースは一途に頑張ります。サンドイッチや紅茶にもほとんど手をつけず、おそらく数時間も集中し続けてこの問いに取り組んでいます。その傍らに「NEXT G4」と書かれたポリタンクのような箱があります。「富士の水」とも書いてあるのでほんとにポリタンクかと思ったのですが、これはきっとタワー型のコンピューターなのではないでしょうか。G4といえば、アップル社御用達のCPUの名前ですし。ミースの目の前のディスプレイにもコードが繋がってるようですし。富士の水というのは、水流式の冷却システムのことかなあなんて思ったりして。
さて、ミースが答えを出します。汗だくです。時はびっくりしています。そりゃそうでしょう、不可能事だと思っていたんですから。
バランシェはその答えを正解と認め、ミースを「マイト」であると断定します。複雑な数式から一瞬で答えを導き出し、閏年があるにも拘らず未来や過去の年月日の曜日を即答できる人間が、希にいるという話になります。暗算なんてしなくても、ぱっと頭に答えが浮かぶのだとか。それは、ジョーカーの世界では、”ルシェミ”というダイバーパワーの遺伝ということになっています。ちなみに、作中に書いてあるように、僕らの住む世界にもこういう「天才」というのはおりまして、アルバート・アインシュタインなんかも、答えが先に浮かんでから式を考える、なんて能力があったそうです。(これはついでの話ですが、以前てなしもはふと「天才」というものに興味を持ちまして、百科事典でその言葉を引いてみたんです。そしたら、そこにはこう書いてありました。「IQ160以上の人をそう呼ぶ。以前は140以上の人をそう呼んでいたが、最近は全体にIQが上がってきているので、160以上ということになった」それは古い百科事典でしたから、現在ではもっと数字が高くなってるかもしれません。・・・しかし、なんとも安易ですね(^^;。FSSの語る「天才」の神秘性のかけらもありゃしないと思います。)
閑話休題。”ルシェミ”というのは、非常に希なダイバーパワーであり、フルマイトになるための必須の能力のようです。そりゃ、生命を作りだそうというんですから、科学なんてものを超越した能力の持ち主でなければならないんでしょうね。努力と希有な才能がかみ合って、なおかつ優れた学習機関(ミースの場合はバランシェ)と出会わなければ、なれない職業。魅力的です。「マイト小説」なんて文学ジャンルが創れそうです。
それにしてもバランシェ、最初に「難しくはない」「ゲームだ」と言っておいて、次のページでは「このジョーカーでも私にしか解けぬ生体コードを解くか」と来たもんです。人を乗せるのがほんとに上手いお方。


三つ目の見開き

死を間近に覚悟しているバランシェは、自分にはもうこれくらいしかしてやれないと、ミースにディスクのようなものを渡します。それは、まさに恐るべき遺産でした。
バランシェが最後に取り組んでいた、”最強の女神”クローソーに続く、46体目の人造人間に関するデータです。それはすでにファティマではありませんでした。人の卵子に組み込まれ、受精をするとプログラムの展開が始まって人間のゲノムに食い込んでいくという、「超人間」を創るという技術の理論です。44体目にしてラキシスという「神」を創り出してしまった天才科学者が、さらにそこから進んだものを創りだそうとしているのです。
それを受け取った時のミースの表情は、まだ田舎育ちの無垢な少女のものです。しかし、その隣に描かれている、現在のミースの表情は違います。
何かを思いつめる女性が漂わせる、強烈な色香。名だけを継いだはずのバランシェから、その狂気も受け継いだのでしょうか。マッドサイエンティストが見つめる、その虚空には何が浮かんでみえるのか。
バランシェは告げました。それは「人の卵子」に埋め込むのだと。それは超帝国の純潔の騎士をも超える力を持つ存在になるだろうと。それは、バランシェの最後の作品であり、ミースの最初の”作品”であると・・・。
そのプログラムだけで、純潔の騎士すら上回る力を”作品”に与えることができるのならば、その素材の一旦である男性側の要因が、その超帝国の純潔の騎士に限りなく近い存在だったら、はたして何がおこるのか。何処まで行けてしまうのか。狂気の天才Dr.バランシェすら予想しなかったその領域の存在に気がついてしまった時、それがどんなバケモノを生み出してしまうのかも恐れずに、踏み出してしまうおぞましいまでの探求心を、持っている女性がいるとしたら。
自らの卵子にすでにその情報を埋め込み、その機会をうかがう狂気の科学者が、ひょっとしてここには描かれているのでしょうか。
そしてそうなるとミースは、はたして純粋な恋心だけでカイエンを求めているのでしょうか?
僕には、そのミースの横顔が、母の顔ですらあるように思えるのでした。・・・生まれ出た人の子供を取って喰うという、鬼子母神のような母の顔に。
ここで、FSSという作品上、最強の騎士と設定されている、「マキシ」の名前が、ついに連載中に登場いたしました。

さて、左のページに移りますと、わりと陽気なハスハ勢のお話になります。
まだ幼いながらも、後の凛々しさを想像させるデプレの表情にまずは引き込まれます。クリスティ隊の隊長(今もそうなのかは知りませんが)バルンガが、デプレにお土産の実剣を渡しています。こういった、実剣や光剣が人に譲られたり、受け継がれたりする話は、これからますます重要度を帯びて来るようです。
今回も、「人を殺した剣」と「殺していない剣」や「黒い光剣」などといった言葉が沢山出てきます。しかも、それを語るのはマグダルです。作中での超絶的なダイバーというのは、つまりある意味ではストレートに作品世界を語ってしまえる存在であるということだと思いますので、魔導帝国の女王たるマグダルの発言は、殊更大きな意味を持っていそうです。
今の所は、「YO!YOー!」なんて、クラブ乗りの挨拶がまことに可愛らしいのですが。


四つ目の見開き

まだ幼いこの双子にとっては、ひょっとしたらお互いは同一の存在であるのかもしれません。幼児にはよくあることですが、自分と相手の区別がまだはっきりとついていない状態なのかもしれません。そう思えてしまうほど、この二人は仲が良く、事ある毎に体を密着させているような気がします。のちにこの二人は引き裂かれ、安寿と厨子王のような辛く悲しい話になるといいますから、その分、今は幸せな時代として描かれているのでしょう。
しかし、いくらまだ幼いとはいえ、「新星団最強のくらっしゃーず」の名を襲名したこの二人を侮ってはいけません。会話の内容はすごいです。
まず、カイエンの尻を叩いてきたと。普通なら、利発でかわいい娘が渋る父親を後押しするなんていうのは和やかなホームドラマの一場面ですが、この場合はその結果、超人間であるマキシが生まれることになっていくわけで、上辺ほど生易しい問題では無いのです。多分。
そして次に、アマテラスが「いらしてたの」と言います。アマテラスは遠く離れたフロートテンプルで、やっとエイリアスを生み出すための眠りに入ったばかりであるにもかかわらず、マグダルが語っているのは過去形です。これはいったいどういう事なのでしょう?とりあえず確かなのは、「マグダルにとっては、それは過去の事になっている」ということなのですが、やはり意味がわかりません。先月に登場していたマギー・コーターにソープが会いに来るというエピソードがあるはずなので、これから(つまり連載再開後)そのハスハでのシーンが登場するのかと思っていたのですが・・・。マグダルがカイエンの後押しをするシーンも含めまして、この辺はコミックス化した時に書き足されるのかもしれませんね。多分、次の次である11巻の話になってしまうと思いますが。
それにしても、普通にみたら微笑ましい以外に印象の持ちようが無いはずのこの二人のじゃれあいを、矢鱈と真剣なまなざしで見つめるバルンガが不気味です。この男、一見ただの不気味さんですが、バランシェファティマのスパリチューダを娶るほどの騎士ですし、アルル・フォルテシモをスカウトして来るほどの腕も持っていますから、初登場の時は「ただのいい人」でしたが、この先侮れないです。
で、アルル様のご登場です。お美しや。
先日はDr.ダイヤモンドの元にいましたが、ここでハスハ入りを果たします。連載再開後のマジャステッィク・スタンド本戦にまで参戦するのかどうかは解りませんが、デプレの剣術の師匠にはなって行くようです。ということは、デプレの戦闘術は、黒騎士やコーラスと同じロンド系(この言い方で正しいのか解りませんが)ということになりそうですね。これでファティマがDr.モラードのものなら完全にコーラス系ですが、どうやら母親のパートナーだったコンコード(マイトはDr.スティル・クープ)を継ぐらしいので、系としてのなんとなくハスハオリジナルな匂いは残っていくみたいです。
さて、マグダルはアルルに告げます。「大きな黒い剣の持ち主を探しているのね」。
これはもちろん、彼女が持っている懐園剣のことでしょう。もとは超帝国の純潔の騎士ナッカンドラ・ビュー・スバースの物で、ハスハの剣聖デューク・ビザンチンに受け継がれ、今は何故かアルルが持っている大太刀です。ビザンチンが持っていたというならば、今回のことでハスハにそれが戻ったというのも、なんとなく肯けるような気がします。その剣の導きで、アルルがハスハ入りしたと考えればよいわけです。
彼女が探しているという、「懐園剣の持ち主」とは、すなわちこれから生まれて来るマキシの事に他ならないのですから。
しかし、マグダルの言の中にある「黒い光剣はこっち。黒い大きな剣はあっちでないと、さやから抜けないわよ」とはどういう意味なんでしょう。黒い光剣というのはもちろんカイエンが持っているもののことだと思います。ひょっとすると、懐園剣が一度、敵勢力、つまりボスヤスフォートの側の手に渡るということでしょうか?・・・そういえば、デコースが一時期それを持つなんて話を、どこかで聞いたことがあるような?むむむ?混乱混乱。
混乱しつつ次のページへ。


五つ目の見開き

マグダルの言葉が、抽象的ながらも核心を言い当てているようで、アルルは冷や汗のようなものを流しながらこの幼い少女を見つめています。「あなたの”白い剣”が、”黒い剣”から私たちを守ってくれるから・・・・・・」マグダルはそう言います。
「白い剣」とは紛れも無く、アルルの所有しているMHエンゲイジ・オクターバーでしょう。ならば「黒い剣」とは、MHバッシュのことでしょうか。
MHエンゲイジは、すなわちMHジュノーンの元になった機体であり、ある意味でMHとしての魂みたいなものを共有していると考えます。ならば、はるか未来のジュノーにおいて、すみれの騎士バナロッテを守った「白い剣」にまで連綿と繋がる、そういう「何か」であると考えます。それと対になるのが黒騎士モンドの「黒い剣」であることもまた道理。はるか未来では共に戦う二本の剣も、この時代では敵、味方に別れて戦うことになってしまっているのでしょうね。
そして明かされる、太天位騎士ジャコーも一撃で沈んだ恐怖の必殺技「かーちゃんキック」の秘密。ポイントは、先にスカートを捲って見せることでした。一瞬そちらに気を引かれた隙に、しこたま股間を蹴り上げるという、身の毛もよだつような残虐な技です。アルル様なんかにこれを出された日には、まず男なら食らってしまいます。でも、これを男であるデプレに教えてもしょうがないような気もしますが・・・。(余談ですが、この技の仕組みって、「セクシーコマンドー」なのではないでしょうか。「すごいよ!マサルさん」をご存知ない方には意味不明だと思いますが、そう思ったもので・・・忘れて下さい。)
そして、ハスハに風が吹きます。
思えば、最初のエピソードではハスハは王様がお披露目に姿を見せたのみ。コーラスXハグーダ戦では参戦予定はあったもののラルゴ・ケンタウリのしくじりでタイミングを逸し、それ以降も所々に人物は出て来るものの、なかなか国自体が表舞台に出て来ることはありませんでした。しかし、マジャスティック・スタンド、そして後に続くと思われる「ハスハ動乱」ディフェンス・スタンドは、ハスハの物語です。
まさしく、この国に風が吹き始めたのでした。
風が吹き、その空が繋がって、AKD、フロートテンプルへと舞台は移ります。
美しいラキシスの膝を借りて眠る(ように見えている)年相応のボケじじい・・・もとい、能天気なアマテラスを、不敬な言葉で見下ろしながら呼び捨てにする謎の存在が現れます。


六つ目の見開き

今まで見たことのない四つ星のエンブレムを付けた、奇抜なデザインの戦艦がフロートテンプルに降り立ちました。謎の存在が、AKDの現状を語ります。
リィが死んでMHレッド・ミラージュの追い込みがストップ。これはミラージュですから当然アマテラスの私費で行われていた事業だったとは思いますが、AKDの国策でもあったはずです。いきなり、国としてのつまずきです。
総司令官のログナーは、一度死んでしまったので、十分に戦闘指揮の可能な状態にまで成長するのに30年はかかるとのこと。これは読者視点ですが、現在が3010年でマジャスティック・スタンド開始が3030年ですから、ログナーが表舞台に立つには10年足りません。
変わりに大兄になったサリオンはまだまだ力不足。これも、ボスやんに手玉に取られたという事実がありますので、しょうがないこと。実際、こう言われても、まだ今の彼にはふくれていることくらいしか出来ません。
アイシャはルーマー王国(AKDの属国の一つでしょうか)の女王陛下になったとかで、もう忙しくて動けないとか。これはまた、なんとも残念な話です。数年前には、まだキュキィを連れてボォスをうろついたりしていましたが、いよいよ、出番が減ってしまうのでしょうか。しかし、まだまだ彼女には、これから物語の中核になっていくはずのヨーン・バインツェルとの絡みがふんだんにあるはずなので、ここは期待して待ちましょう。コーダンテ家は、ワスチャという人物が継いだそうです。設定に見える、アイシャの妹でしょうね。その娘がおそらく、後にミラージュ入りするというルート・コーダンテなのでしょう。
さて、ここで問題です。”ファンタグリナス”とはなんでしょう。
・・・うう、なんじゃそりゃあと思わず泣きそうになりました。これはひょっとして、二重王朝とでも言うべきものなのでしょうか。アマテラス家にそんなシステムがあるなんて、聞いてないぞ、予想すらしていなかったぞ。
昔から日本では、特別格の高い神宮などに、天皇に近い血筋の者を斎宮として使えさせるという風習がありました。元は神だとかそういう日本の皇族の話は置いておきまして、このシステムは、大雑把な言い方ですがなにか中央で非常事態があった時に、そういった宗教組織に派遣されている皇族が中央のバックアアップとして活動できるという、便利なものになったりします。今回出てきたこの聖院サマは、AKDに対してそういった役割を持つ方なのではないでしょうか。
一緒に連れてきているファティマ・ダイオード。そのスタイルは表紙によれば「マンティック・モード」なんだそうですが・・・そんなの、知らないよ~(涙)。どうにも、他のファティマと比べて(バクスチュアルよりも!)機械的な印象がありますし。手を広げて走ったりとか、こういう仕種は個人的には好きなんですが。
話を聖院サマに戻しますが、ただ、このお兄さん、政治的などうのこうのよりも、どうやら他のキャラと同じく自分中心、唯我独尊でぶっとんでるキャラクターらしいので、こういうところは初めて見たキャラクターとは思えません(笑)そしてよくよく観察すると、襟元に、戦艦にも付いていた四つ星の紋章が、その意匠をより明確に僕らに見せてくれています。中にアルファベットが描いてあります。
A、U、G・・・E・・・まさか!


最後の見開き

華奢なボディ。広がった腰のスカート。特徴的なアームガード。そして、大きくせり出した両肩の、間違いなくアクティブバインダーな重装甲。その全てが黄金色に輝いていれば、言わずもがな。これは、オージェです。しかも、エルガイムに出てきた風の。
顔面部には、女性の顔をかたどったようなフェイスガードが張り付いています。聖院サマは「この世で一番美しいMHは、こいつだ!」なんて叫んでらっしゃいますが、なんとも悪趣味だともっぱらの評判です。僕もそう思います。装甲の下の積層金属構造とか、爪先の立ち具合とか、ふくらはぎの構造とか、細部のデザインにはちょっとビックリする所があったんですけど、この顔はいただけません。足元で変なポーズを取っているダイオードは、なんとも良いのですが。
しかあし。その来歴を読んで、僕らの度肝が抜かれます。マシンメサイア(MM)の時代から伝わっている、MHだって!?
それはつまり、MHエンプレスにMMエンシーのエンジンが積まれているというように、何か超帝国時代の、おそらくはオージェという名前のMMから、脈々とエンジンが受け継がれているということなのでしょうか。いや、そもそも、アマテラスのグリース王家はそんな超帝国時代から存続しているような、歴史のある王家でしたっけ?それはハスハやフィルモアの特権だったのでは・・・?
とりあえずそれは置いておきまして、最後のコマの話です。聖院サマは言います。「帝にお会いするのは、250年ぶりだというのに、かわらないなー」。250年前といえば、まだアマテラスがミラージュ騎士団を組織する前です。ならば、彼が「ミラージュに協力する気はない」と言うのもわかる気がします。そんな新造の騎士団がどうしたというんだ、という気持ちが無いわけはないでしょう。
あ、彼について一個思い付きました。日本の斎宮は、男系継承が基本である為か皇族の未婚の女子が派遣されるんですけど、AKDでは、アマテラスは例外的に男王ですけど、基本的に王位は女系継承でしたから、男子が斎宮になっているのかもしれません。まあ、これで彼の何かの謎が解けるというわけでもないのですが。
そんな謎な聖院様が、「いったい帝は何者なんだろうか、ホント・・・」とさらにアマテラスを不思議がるところで、ついに連載休止になりました。次期再開は、早ければ三ヶ月後、遅ければ半年以上も先のことになるでしょう。柱に書いてあるとおり、早い連載再開をお祈りしつつ・・・。

まとめ

見所ありすぎです。こんな状態でお休みに入っちゃっていいのでしょうか。
え~、今回の更新を書き始めた時点では、表紙に関する話も一気にやってしまおうと思っていたのですが、内容があまりに面白く、頭が混乱してきてしまったので、ちょっと間を空けることにします。すみません。

それにしても、果てしなく増えていく、人間、ファティマ、MH達。それらは、使い捨てにされることなく、時間の経過とともに複雑に絡まりあいます。3人キャラクターがいれば、それだけで十分に複雑な関係は構築できるでしょうに、これほどまでに増やされてしまっては、頭の中を全てFSSにしてしまってもまだ追いつかないくらいです。
そういう時に、このコーナーのような文章化され、一応整理されたテキストがあることは、少しは助かるのだなあと、以前の分を読み返していて思いました。少しでも人の助けになるのならば、不本意ながらに社会不適合者をやっている者としては、尽力せねばならんなあと、深く反省する所存です。

なんでも、今年の7月あたりにはファイナルファンタジーの最新作が登場するそうですが、ちょうど作者がそれにはまって、連載再開が一ヶ月は遅れそうなのが痛いです。さらに、夏のうちにはドラゴンクエストの最新作もでてしまうとか。ああ、合わせて二ヶ月は待たされるでしょうね。
FSSファンとは、つまるところ作者のドレイです。共にただ、耐えて待ちましょう。合掌。

キャラクターズ

 このHP唯一の連載企画といわれていたコーナーが半年ぶりに戻ってまいりました。
 とは言っても、我らがFSSの本誌連載が再開したというわけではありません。今月号、および先月号の月刊ニュータイプ誌上におけるFSSのページの内容が、それぞれ4ページづつという少分量でありながらあんまりにも濃いために、「こりゃ読み解いておかねば、あとあと整理がつかなくなって大変なことになるわい」と思い立ったというわけです。
 ところで、どうやら無事発売されたらしい待望の本格副読本「ナイトフラグス」(9月9日時点でまだ未入手)と、突然発表された9月末発売のコミックス第10巻。皆さんお買い逃し無きよう。
 この二ヶ月の誌上でのFSSページは、ようするにその「ナイトフラグス」の内容を少しだけ公開して購買意欲を煽ろうという企画なんだと思いますが、その「ナイトフラグス」自体が第一版が予約だけですでに売り切れ、二版は10月まで待ってね・・・とはどういうことだトイズプレス!(FSS関連本の出版元。)
 まあ、怒っていてもしょうがないので、とっとといつもの読み解きに移ります。公開順とは逆になりますが、今月号から参りましょう。
 ちなみに今回は、いつものように「ページごと」ではなく、紹介されているキャラクターとその紹介文ごとに読み解きを行います。
 あと、僕のPCの辞書ソフト変更に伴って、この更新から本文の文頭が一文字下がるようになりました。読みやすいですね。(自画自賛)

エンゲージ・オクターバーSR1

 「オリジナルジュノーン」なんて勝手な呼び名で呼んでは返って混乱を招くかもしれませんが、とにかく、FSSという作品に登場するすべてのロボットの中でももっとも人気の高いMHのひとつであるジュノーンや、他のエンゲージシリーズの元になっている、最初のエンゲージです。
 ご使用中のブラウザやモニターの性質によっても変わってしまうと思いますが、このページの背景の色の塗装をされた、ここ最近発表されたMHの中ではシンプルなデザインラインを持った騎体です。(誌上でMHに対して「騎体」という言葉が使われているので、ここでもその言葉を使います。)
 乗り手はアルル・メロディ・フォルテシモ4。魔導大戦ではハスハの旗騎として活躍してしまうのだそうです。
 連載の休止間際に、ハスハのMHが本格的な戦争に向けて重武装化していることが読み取れる記述がありましたが、それらの中に立つこの華麗な騎体はひときわ冴えることだろう、と記述されています。
 ジュノーンのシリーズはみんなそうですけど、二の腕が美しすぎます。


アルル・メロディ・フォルテシモ4

 上記のエンゲージSR1のヘッドライナーです。
 それぞれほんとに見目麗しいコーラスの暴風三王女のお一人で、パートナーは・・・誰だっけ?
 特別に新しい衣装というわけでもなく、連載に登場したときのペルシャの王女様のようなひらひらのいでたちです。
 この方、まさかコーラスの敵になると知っていてハスハに入ったわけではないんでしょうが、結果的には自分の出身国の軍勢と戦うことになります。まともな神経なら出撃拒否も辞さないんじゃないかと思うんですが、確か、彼女の行動原理は、コーラスの存在するロンド大陸の剣技の強さをを世に知らしめるコトだったはずですから、自分が勝てばそれでよし、負けたら負けたでコーラス軍の強さが証明されるんだからそれでよし、といったところでしょーか(まったく間違っているような気がしますが)。


セイレイ・コーラス王女

 コミックス三巻にもちらりと登場していたコーラスの王女様です。現コーラス国王であるコーラス4世の実の姉にあたるわけですが、見事なヤンキー家出娘に育っております。
 それにしても、なんと可愛い方でしょう。僕、彼女に完全にまいっております。降参です。
 騎乗するMHは先月に公開されているエンゲージ・オクターバーSR3です。
 魔導大戦の中では、どうやら彼女はどこかの軍勢に属するのではなく、目に付いた強そうなヤツに喧嘩を吹っかけたり、戦争の最中に突然現れてど真ん中に飛び込んで来たりするというとんでもなく無茶な役回りのようです。ああ、ヤンキーの心意気。
 ところで、何度でも言いますけど、彼女は可愛いです。衣装も大変にすばらしい。
 淡い緑色の生地が体に密着した上半身部分のデザインと、フレアスカートのように広がる下半身部分。白いロンググローブに、やっぱり白い膝までのハイヒールブーツ。腰までの短いマントを背にまとい、額に紋章のついたティアラを巻いて・・・あっ!
 このデザイン、「セーラームーン」ですがな。
 くしくも、セーラームーンの育ての親と言われる幾原監督と永野氏は最近異様に仲がよろしいわけで、なんだかそこらへんからデザイン原案を持ってきたのでは、などと考えてしまいます。
 しかし、セーラー服のイメージはすっかり払拭されているあたりが流石です。あえて挙げるなら、パレードのバトントワラーのようにも思えます。
 まあ、衣装の元デザインに予想がついたからといって、バトンならぬ細身の日本刀を手に持って、何者かを睨み付ける彼女のりりしいイラストの前に僕がへろへろになっているということには、何ら変わりはありません。


マロリー・ビュラード・ハイアラキ

 今回はじめて御三方並んで登場された暴風三王女のトリをつとめられますのは、これまた物騒な名前をお持ちのマロリー様です。初めて家系図に名前が出てきたときにはマロリー・マイスナーだった方ですね。
 この方、紹介文に目ん玉飛び出るような記述が満載です。
 まず、ボード・ビュラードの実の妹であり、名前を見ればわかるとおり剣聖「ハイアラキ」の名を継いでいて、ルース家の長女で、コーラス・マイスナー家のMH(エンゲイジMK2)とファティマ(モンスーン)を持ち出していて、魔導大戦ではアイシャと合流してアイシャの「フレーム・ハカランダ」と自分のMR2並べて大暴れするんだとか。な、なんだそりゃ。
 三王女の中では唯一の黒髪で、服装も派手な先の二人に比べてシックな忍者ルック、おまけに履いている靴も二人のようなハイヒールではありません。三人は手に持った剣もそれぞれで、アルルは光剣、セイレイ様は空色の鞘の日本刀、マロリーは朱色の鞘の二本差です。
 それにしても気になるのはこの三人の人間関係です。三人が三人ともそれぞれ異なる立場で魔導大戦に参加するみたいですし、今は「三王女」なんてセットで扱われてますけど、連載に登場したら意外とお互いに憎みあっているような剣呑な関係だったりして。


ファティマ・モンスーン

 コーラスの”デカダンスタイル”のファティマスーツに身を包んだ紫色の髪のかわいこちゃんです。
 マイスターは不明。最近わさわさと登場した新しいファティマ達と同じく、詳しいことはとにかくわかりませんが、元々はマイスナー家のファティマだったそうですから、間違い無く立派な銘があることと思います。ダイオードとか、このあたりのファティマの設定のために、過去のファティマ・マイトにもそろそろ焦点があたるのかもしれません。
 MK2の専属ファティマでもあるようです。


エンゲージ・オクターバーMK2

 ものすごくシンプルなデザインが返って力強さを感じさせる白灰色のMHです。エンゲージシリーズに限らず、今まで公開されているすべてのMHを見比べても、このMK2が一番シンプルな装甲形状をしているように思います。
 SR1と比べてみると、脚部、特にふくらはぎの形状の違いが目に付きます。建造された時点で、運用目的が違ったのかもしれません。(MHは原則として全天候・全地形対応の兵器ですけど。)
 もちろんヘッドライナーはマロリーです。

 ふぅ。やっと見開きひとつ分終わりました。ああ、東の空が白んでいます。
 今日中に完成しますように。


ファティマ・チャンダナ
ダイ・グ・フィルモア新皇帝
V・サイレン・プロミネンス

 このページの三キャラクターは騎士とファティマとMHが揃いになっているので、まとめていきます。
 登場以来、ずっとスカートファッションを続けているダイ・グ新皇帝君、以前に同誌面で線画で公開されていためちゃめちゃワイルドなファッションで登場です。
 その服の色と、チャンダナのプラスティックスタイル・スーツの色は、MHプロミネンスと同じ鮮やかなオレンジです。ドリームキャストカラーです。多分関係ないですけど。
 それにしても、クリスティンのネプチューンがカブトムシで、このプロミネンスがクワガタということなんでしょうが、なんとも勇壮な前立てをつけたMHです。
 紹介文の記述によりますと、その二騎の皇帝騎を、四騎のアルカナ・サイレンに率いられた六十騎以上のサイレンB・C・D型でガードするんだとか。さらに、元剣聖の慧茄とクラトーマ(レーダー王からもらったのかな)が、最新型MH「重帝騎ファントム」を駆って参戦するとのこと。「この布陣を崩すことなど絶対に不可能であろう。」はい、そりゃ不可能です。
 それにしても慧茄さん、少し前まで騎乗するMHが決まってなかったようでしたが、まさかフィルモアの新型に乗って現れるとは。しかも、人間なのにプラスティックスタイルの服を着て登場なさるとか。元気なおばあさんです。
 他にも、チャンダナの戦闘能力に関する記述とかいろいろ気になるところがあるんですが、見逃せないのは、ダイ・グのところにある「魔導大戦では若い騎士が一堂に会するため、接触も多く起こる。このフィルモア皇帝が前ページのヤンキー娘を食事に誘ってもおかしくはありません。」なるトコロ。むきー、セイレイ様に近づくなー!と早くも嫉妬モードに入っておりますお見苦しくてすみません。
 とにかく、魔導大戦はフィルモアがハスハに大侵攻を仕掛けるところがいきなりの見せ場なわけですから、この新皇帝の言動はストーリーの重要な要素に鳴っていくことは、間違いが無いのであります。


ファティマ・アンドロメーダ
MH・姫沁金剛

 IME98って便利ですねぇ。読みのわからない漢字をマウスで書いて検索できるなんて。「沁」の話ですけど。
 このMHの名前はきしんこんごうと読みます。ファティマはアンドロメーダ。ヘッドライナーは言わずと知れたクラーケンベール・メヨーヨ大帝です。
 別名はフランベルジュ・テンプル。テンプルと付くくらいですから設計はDr.ダイアモンドです。わ、名前に金剛って入ってる。こりゃよっぽどの自信作ですね。デザインは釣鐘と観音像だそうで、アンドロメーダのサリーのようなプラスティックスタイルとあいまって、全体的にインド風に仕上がっています。インドには釣鐘は無いでしょうけど。
 MHの装備は、左手にまんま釣鐘の形のシールド、右手には幅広のだんびらを下げております。今回紹介されているMHは、すべてこの「左手に盾、右手に剣」の装備です。きっと、ほとんどの騎体は連載に登場してもこのまんまの装備でしょう。そのヘッドライナー達は皆、実用性より見た目を重視して、なお苛烈な戦場で生き残れる騎士ばかりですから。


最近の美奈子さん

 ページの左上の方に活字と写真で構成された囲みがありまして、その中で先月号のFSSページにて彗星のように現れたファティマ美奈子・3D”氏”の近況報告が、どうやらご本人によって語られております。
 某有名ネットRPG2にはまりまくり、外見上の問題でレザーアーマーより上の鎧をまとわないソーサレスを操って、ディアブロやメフィストを瞬殺して遊んでいるそうです。
 バトルネットをやっていると「美奈子」さんにお会いすることもあるみたいで・・・やろうかな、PCも新しくしたことだし・・・。
 は。
 FSSの話題に戻ります。

ページ最後の小さな囲み&まとめ

 「ケサギ達のガスト・テンプル」
 「ユーゾッタのヴァイ・オ・ラ・エンプス」
 「錫華のハープーン・テンプル」
 「フェードラC(ツェー)」
 「ウラッツエンの兄、ダッグナートが駆るラインシャル・ヒューメトリー」
 ページの最後になって、いきなりこれだけの数の、いままで見たことの無い、ほとんど聞いたことの無いMHの名前がぽんぽん出てまいりました。そして、僕はひとつの不安に襲われたのです。
 ページを戻して確認してみると、他にも
「アイシャのフレーム・ハカランダ」

「慧茄の重帝騎ファントム」
なんて未知の名前も出てきています。
 僕にとりついた不安それは・・・「ひょっとして、それらの新しいMHは、『ナイトフラグス』にも載ってないんじゃないだろうか」というものです。
 「ナイトフラグス」が発売になったのは、予定通りならばつい数日前のこと。それを手に入れ、まるでもう、自分は魔導大戦におけるすべてを知ってしまったのだという満足感に微笑むファン達を、地獄の闇へ突き落とす、「まだあんたらに見せてないデザインはごまんとあるんだよ~」という作者のふんぞり返った笑い声が、なんだか誌面の向こうから聞こえてくるような・・・。冒頭に書いたとおり、僕はまだそれを手に入れていませんから、これらのことは憶測に過ぎません。しかしながら、もし、僕が予定通りに先にそれを手に入れており、そのデザイン郡の圧倒的なボリュームにもみくちゃにされ、自虐的な快感を味わいながら「へっへっへ、これでマジャスティックスタンドもどーんと来いじゃ~」とうすら笑っていた矢先に、そんな「未知の名前の群れ」を目撃してしまったとしたら・・・
 ど、どうなんでしょう。どなたか、もう「ナイトフラグス」を入手された方はいらっしゃいませんか?教えてください、どうか。ハープーン・テンプルはそこにいますか?フェードラCは何色のMHなんですか?

 恐れおののきつつ。
 いきなりですが、本日の更新はここまでにしとうございます。
 ここまでさんざオチにむけてのネタ振りをしてまいりましたが、体力、および時間的に限界が来てしまいました。
 「読み解け先月のFSS」は、9月10日分の更新にてお楽しみください。


 中途半端で切ってしまったので、なんだか、月に代わってお仕置きされそうです。

キャラクターズ+

 昨日から今日の間にかけて判明した重大な事実があります。なんと、「ナイトフラグス」の発売日が9月9日にずれ込んでいたのです。
 すぐさま懇意にしている模型店に入荷したかどうか問い合わせましたところ、月曜日に問屋からの便があるので、それに入っているかもしれないとのこと。
 つまり昨日、原稿を書いている時点(早朝)では、まだ日本中の誰も、ナイトフラグスを手に入れていなかったのです。焦ることありませんでした。
 模型屋さんの手違いが無い限りは、僕も明日の昼過ぎ頃には入手できますから、一日はゆっくり内容を確認するとして、明々後日以降の更新にてその内容を反映させたものが書けることと思います。

 そうそう、改めて読み返してみましたら、昨日の更新のあちこちに間違いがあることに気がつきました。とりわけ、セイレイ様の所属陣営について「とくに無いらしい」なんて書いた部分は大きな誤りで、月刊ニュータイプ9月号のFSSページの記述によれば、彼女はコーラス軍のエリート騎士団トリオに混じって魔導大戦に参加するとのことです。
 資料の読みを軽視するとこういうことになるのだという戒めになりました。今日はそんなことが無いように注意いたします。

 では、昨日の続きにまいりたいと思います。
 先月号、つまり、月刊ニュータイプ9月号の中ほどに載っていたFSS関連記事4ページ、その中で紹介されたキャラクター達の、僕の主観的な整理、読み解きです。
 AKD陣営の四キャラクターと、ハスハやらバハットマやらフィルモアやらの五キャラクター、そして分類不能な存在・約一名が紹介されています。


ファティマ・イカロス

 ついに出ました、男性型ファティマのプラスティックスタイル。
 女性型と同じく、全身くまなくエナメル系素材で覆われたデザインです。ひょっとしたら男性型には男性型の異なるデザインラインがあるのでは、とも思っていたのですが、基本的に同じモノであるようです。
 最近、MTVなどで見かけるミュージッククリップなどに、まんまプラスティックスタイルなコスチュームの人がいたりしますけど、さすがに男性にこれを着せているのは見たことがありませんでした。やっぱり永野氏は突きぬけてます。(特に、少し前にカセットテープのCMか何かで、歌手のMisiaさんがまるでコンコードのプラスティックスタイルのような衣装で歌い踊ってるものを見たときは驚きました。ボンネットまでつけてました。時代ですね。)
 男性型ファティマだと、どうしても股間が気になってしまいますが、それも意図的なデザインの一部なんだと僕は考えます。女性型ファティマのものも、股間部は少々露骨に食い込みが描かれていますし、こういう、全身をくまなく覆い尽くす未来的なイメージのデザインだからこそ、そういった根源的な要素も強調する必要がある、ということではないでしょうか。
 って、そんな目で見ちゃいけないのかもしれませんけど。


ファティマ・弁天(ヴィンティン)

 ニームとも呼ばれ、三つの名を持つファティマとして、設定だけはかなり古い資料にも載っているファティマです。
 脇の記述にも「良い出来だ!!ようやく登場。」とありますように、昔から作者のお気に入りのファティマであったようです。昔から設定があったということは、間違い無くデカダンスタイルのデザインもあるのでしょう。見たいなあ。
 褐色の肌、赤いアイシャドウ、ピンクのルージュと派手お化粧のわりに大人しげな印象を受けるのは、アーリア人系の穏やかな輪郭と優しげな表情のせいでしょうか。
 手元の資料によりますと、クリアランスはVVS1、パワーゲージはB-A-A-2A-Aで、バランシェファティマの№6。パワーゲージの読み方は、順に戦闘能力、MHコントロール能力、演算能力、耐久性、精神安定性です。戦闘能力がBである以外はすべてA以上で、特に耐久性においては2Aときわめて優秀です。
 マスターは、強天位騎士のジャコー。操るMHは、多分シルバー・シュペルター・ハイドラです。

 さて、この「マンガの話」の中のFSSに関する更新で、以前僕は 「4ファッティスについて」 というのを書いておりますが、その時に、このファティマ・ニームについてある予想をたてました。
「4ファッティスの一人『ニーヴ』とバランシェファティマの『ニーム』は、『ハルペルとインタシティ』『アウクソーとフォーカスライト』のように、同一ファティマなのではないか」
というものです。
 根拠としては、「名前が似ていること」あとは「ちょっとボケ子ちゃんファティマであること」程度しか挙げておりませんが、もしこれが当たっていれば、ボケ子ちゃん繋がりで残る最後の4ファッティス「SSL」の正体はチャンダナということになって、4ファッティスの現在の姿が全員確定することになります。
 この「ボケ子ちゃん繋がり」というのは、つまり、「寿命が来つつあるファティマ」ということです。同世代のインタシティはすでに寿命で亡くなっているわけで、ひょっとしたらこの二人も老衰寸前のファティマなのではないかと。フォーカスライトは、アウクソーは複数の情報体を持っている、という話が以前にちゃんとありましたから、そのおかげで二倍長生きできたりするのでまだ寿命ではない、みたいな設定になっているのではないでしょうか。
 それにしても、この予想が当たってしまうとすれば、ニームとチャンダナに関しては魔導大戦中にインタシティのような悲しい話が描かれることになりそうで、少々切ない気分です。


セイント・グリース

 出ました、グリーン・ネイパー、聖院サマ。連載休止の最後の回にいきなり登場されて、僕らを混乱のどん底に叩き込んでくださった、その地位、セリフ、お供から背景にいたるまで、謎だらけのお方です。
 僕は、FSSというのはつまるところ「人類が神を産む物語」であると考えているのですが、その「神」にもっとも近いところまで近づいたお方の一人がこの方なのではないでしょうか。
 太陽星団内では無いと思われる謎の場所「走馬灯と蜃気楼の空間・ファンタズマゴリア」から250年ぶりに帰還中ということで、きっと彼には、星団の外での重要なお仕事があるのでしょう。遥か昔の時代にスタント遊星に向かい肉体を捨てた「炎の女皇帝」や、モナークセイクレッドのかなたへ旅立ったといわれる「オプチカル・タイフォーン」のような存在なのでしょう。もちろん、彼と彼女らが何を目的に、どこで、何をしているのかは僕には全然わかりませんが、ただ一つ言えることは、このFSSの物語の中でその彼らよりもっとすごいことを、アマテラスはのちにやり遂げるのだろうということです。
 彼らはかなりの超越的存在ではあるようですが、まだ「人」ではあるようです。しかし、アマテラスは「全次元全能神」になる存在なのですから(いや、もちろんすでに神なんですけど)。
 あ、そういえば、どうしてアマテラスって産まれつき「神」なんでしょう?さしもの聖院サマもアマテラスの正体についてだけは首をかしげていらっしゃいましたっけ。アマテラスの出生の秘密、それはつまり過去のAKDの王家の秘密であるはずです。ということは、古くから王家を知る存在であるはずの聖院サマが、これから何かそういった話を展開してくれるかもしれません。
 ただ、魔導大戦においては、どうやら国家間の思惑といったような常識的な理由で無い部分で思いっきり武力介入をしてしまう役ドコロの模様・・・。エンゲージ・オクターバーSR1のアルル様と戦うことになるようです。


レッド・ミラージュ

 記述部分にいきなり「このロボットは星団最強のMHなどではない。」と宣言されています。
 以下、まんま引用します。

 「史上最強のロボットである。もはやモーターヘッドとは呼ばれず、モーターメシア、モーターカイザーと呼ばれるにふさわしい。破壊と殺戮の本能しか持ち合わせず、騎士とファティマが搭乗することによって何とかその本能を抑えられているにすぎない。唯一、黄金のMHのみに服従する。
  この最強のロボットはバングもシュペルターも、ヤクトミラージュさえも数秒で破壊する。事実、物語が終焉する7777年まで、このレッド・ミラージュを倒せたMHは一騎たりとて存在しない。」

 ついに行われた最強宣言。ガンダムよりも、ジャイアントロボよりも、マジンガーZよりも、マッハバロンよりも、ゴジュラスよりも、ユニクロンよりも、マクロスよりも、ガオガイガーよりも、ガンバスターよりも、イデオンよりも、ゴーグよりも、隠大将軍よりも、テムジンよりも、ロボット刑事よりも、ついでにドラえもんよりも、レッドミラージュは強いんです。
 はい、納得です。それを納得させるだけのたたずまいが、このイラストにはあります。
 ところで、このレッド・ミラージュ、もちろん形式番号の類はついてないんですけど、ただファティマルームに「オレンジの三つ巴」が。
 まさかヤーン・バッシュ王女ご自身ではないでしょうから、乗っているファティマはエストです。ううむ、いったい何時、誰が駆る騎体なのでしょう。ログナーか、アマテラスか・・・。

 と、ここまで来たところで、ふと時計を見るとすでに9月10日もあと30分を切っております。
 すみません、二日連続の時間切れです。
 最後の見開き1ページ分はまた明日、9月11日の更新にて行うことにいたします。


 9月号のFSSページを最後まで見た方だけがご存知のあの「恐怖」が、もう間近に迫っております。

意味深

朝、ニュータイプ誌を買いに行き、帰ってきて読んだらすぐ書くこのコーナー。今月も張りきってまいりましょ~。

表紙

どうやら、フィルモア王家のサイレン指揮用MH「プロミネンス」の、読者への初お披露目のようですね。
左手のシールドについているウオータークラウンの紋章に、腰部前面についているプロミネンスの紋章、そしてなにより手前に大きく描かれているファティマはチャンダナでしょうから、間違いありません。
MHの肩やファティマの頭部についているオレンジ色のぐるぐるマークも、どうやら意味のある紋章のようです。残念ながらDCのマークでは無いようです。
カブトムシのようにせり出した頭部の形状が印象的なMHです。よく見ると、肩の関節部分の構造がこれまでのMHと違っているような気もします。この機体が活躍するのは、連載再開後でしょうね。


最初の見開き

先月号のラストシーンを、城の外からスペクターとポーターが見上げているカットと、その修復が始まっているカットが連続して描かれ、時間の経過が表現されています。ブッラックスリーの災悪はAKDから去りました。
くつろぐアマテラスに対してバハットマに報復戦争を仕掛けるべきと激昂しながら進言するサリオンに、アマテラスは報復戦争の愚を説いて冷たく突き放します。
アマテラスの冷たくも正しい論理に、サリオン少年は何も言い返すことができません。


二つ目の見開き

アマテラスが、ボスヤスフォートに関わることすなわち災悪そのものであるということを静かに説明します。(それはちょうど、インターネット上の会議室荒らしのような性質のものであります)
そして自らの言葉を「老巧なこと」として話しを切り上げ、アマテラスは控えの者に声をかけます。
「ちょうどいい頃だ用意を!」
サリオンの元服です。
それまでサリオンの母親代わりを勤めていたマージャが、細く美しい実剣をささげ持ち、プラスティックスタイルに身を包んで登場します。それまで死亡扱いになっていたサリオンは戸籍を戻され、サリオン自身が両親を殺してしまったために取り潰されていたシナーテ家に代ってエミーテ家が興され、この日からサリオンは天照家第一親王斑鳩王子としてミラージュ騎士団およびAKD全軍総司令に任命されました。
後に星団中にその名を轟かす”LED”、斑鳩王子の誕生です。
そしてアマテラスはつぶやきます。ボスヤスフォートに引導を渡すのは我々ではないのかもしれないよ、と。


三つ目の見開き

今回のシリーズ「ザ・シバレース」のエンディングエピソードのタイトルが明かされます。
「L.L.L.」
FSSのイメージCDの中に永野氏自身の作曲によるほぼ同名の曲がありますが、それとの関係は分かりません。Lとは、最強(LED)のLのことなのか、ラキシスの頭文字のLなのか、はたまたサイズのLなのか。木陰でまどろむアマテラスのところに、ファティマスーツを着たラキシスがやってきます。


四つ目の見開き

見開きに跨って、二本の線とその内側にラキシスとアマテラスによる会話が書かれた12のフキダシがあるだけの、ちょっと驚いてしまうページです。
その内容は、アマテラスが自分の内側にいるソープ、ソープダッシュ、リンス、東の君のそれぞれの人格が、自分がアマテラスでいるときも処理されないでいるという、アマテラスが自分の内側を告白するというものです。
優しい口調で、バランシェが死んだ時に自分の内側で起こった複雑な分裂を、恋人のラキシスのあいの手を受けながら語ってゆきます。それは、神というにはほどとおい、まるで僕らが時々物思うような、自分との対話の話でした。聞いてくれる優しい人が居るからこそ語れる、自分への呼びかけのような独白です。

五つ目の見開き

語りは続きます。
死んでいった者達の思いが大地や空へと拡散していき、やがて宇宙へと溶け込んでいくのを、人の数倍の年月を生きてきた自分は今まで見つめ続けてきたし、これからも人が先にゆくのを見ていくのかもしれないと、アマテラスはつぶやきます。
ジョーカーの人々の寿命は約300年。しかしアマテラスはこの3010年の時点でゆうに1000年を越える年齢を数えています。どれほどの超越者になろうとも、悲しみや苦しみの感情に慣れてしまうなんてことはないという、FSSで繰り返し語られるテーマです。
ページの下段には、11の人物がシルエットで描かれています。何人かは、それが誰なのか大体見当がつきます。
右から、不明、メイザー・ブローズ(不確定)、ヨーン・バインツェル(不確定)、ジャコー・クォン・ハッシュ、鈴華御前、不明(ファティマとおもわれるが)、プリンセス・タイトネイヴ、斑鳩王子、パナール・エックス、胎児のログナー、そして剣聖蒔子。
これから活躍し、そしてアマテラスより先に死んでいく人々です。

六つ目の見開き

フェザードラゴンが死に、その新たな幼生が生まれていないことが、ぽつりとアマテラスの口から語られます。それに気がついたのは、どうやらアマテラスとマグダルだけのようです。アマテラスは、マグダルに会いに行くと告げてラキシスの膝枕を借りて眠り込むように意識を失います。おそらく別体のリンスか誰かを飛ばしたのでしょう。
残されたラキシスは、期待していた恋人としての語らいもなく行ってしまったアマテラスにあっけにとられ、終いには怒り出して残された体をぽこぽこ叩いたりと、かわいいことこの上ないです。
その時のラキシスの最後のセリフです。
「いったい・・・いつになったら
私を傷物にしてくださるのでしょうか?
この方は・・・」
なんだかナマナマしさも漂うような、少女の本音の告白のようですが、これには少し深い意味があるような気がします。ラキシス自身は、いとしい人と結ばれたいという素直な気持ちから発言しているのでしょうが、ラキシスとアマテラスが結ばれる時というのは、すなわちカレンの誕生の時。それはFSSのエンドエピソードです。
このところ、ラキシスはよく置き去りにされます。星団中があわただしく、アマテラスはデルタ・ベレン星大統領という表の顔もそれ以外の裏の顔も大忙しですから、あっちこっちに飛び回っています。コミックス三巻でも、忙しいソープとかまってもらえないラキシスというエピソードがありました。発表されている年表を見る限りでは、これから先も、かなり長い間ラキシスは置いてけぼりを食らうのではないでしょうか。
その立場が逆転し、いなくなったラキシスをアマテラスが追いかける話、それこそが年表に記されている第三部にあたる話になるわけで、その、おそらく20年も30年も先に描かれる予定の話の前振りや複線張りが、今こうやって行われているのでしょう。
そして舞台はマグダルのいるハスハの地へ移ります。

七つ目の見開き

コミックス九巻のラスト以来のご登場のマイケル・ジョーイ・ギラと共に、腕の立ちそうな女性騎士ヘアード・グローバに、ぶかぶかの正装が可愛らしい少年騎士アード・ゼニヤソタと、ハイヒールを履きなれず歩き辛らそうな少女騎士ヒン・モンダッタの登場です。この二人のお子様騎士は、それでもモラード・カーバイト博士の最新作「カプリコーン」と「エベレスト」のマスターだそうですから、かなりの騎士の素養があることは間違いありません。
ギラは、この二人のお子様騎士を年齢の近いデプレのお付きにしようとして、デプレを探しています。デプレとマグダルは、どうやらあのクリスティ隊の隊長バルンガのところに入り浸っているようです。”掃除屋”クリスティ隊のハスハ内での評判の悪さと、マグダルとデプレが信頼を置くくらいなら評判通りの人物ではなさそうだという、ギラとヘアードの会話が描かれます。
そして、バランシェ伯が入城したというニュースもヘアードによって語られます。バランシェの名を継いだ、ミース・シルバー、後の剣聖蒔子の母親です。
場面が変わって、どうやらMHの整備場近くと思われる広場です。登場したのはマギー・コーター。名作MHクルマルス・シリーズの製作者ゼビア・コーターの子孫に当たる人物です。そして、マイトとしてのソープの師匠にもあたる人物です。そこには、自分の養女であるミースに出会うことを恐れて逃げてきたハスハの総騎士団長である剣聖カイエンの姿も見えます。
マギーは、どうやら鍛冶として名高い鈴華御前に、MH用の武器を大量に発注していたようです。斧、根、矛、どれも重さを生かした打撃系の破壊武器です。多少の刃こぼれなど気にしなくてすむ実用性重視の武器を大量に発注したとなれば、やはり実戦、それも組織立った大規模な戦闘、つまり戦争が近いということでしょう。ミースが城に呼ばれたのも、おそらくは兵器であるファティマ達のメンテナンスのため。スパリチューダやアウクソー等、バランシェファティマすら数人を擁する大国家ですから、ミースほどのマイトも必要になるわけですね。
おそらくこれからミースとカイエンは再会し、そして蒔子が生まれるきっかけになる出来事が起こるのでしょうが、それは来月までのお預けになってしまいました。

まとめ

このままいくと、次号ではマグダル、デプレ、ミース、リンス(ソープかも)などなど、重要人物目白押しのサービスカットが満載になりそうです。
果たして次号でシメなのか、もう一月続くのかわかりませんが、今シリーズの幕引きもそうとう派手なものになりそうです。
ではまた来月。

いっぱい死ぬ

サア、今月もやってまいりました、こどものくに現在唯一の定例企画、「読み解け今月のFSS」の時間です。
そんなにわかり辛くもなかったみたいなので、先回と同じく見開き単位で読み解いていく事にします。このコーナーを読んでいるのはほんの三四人だという噂もありますが、気にしないでゴー!

表紙

先月までの本編解説コーナー状態からうってかわって、今月はひさびさの作者の趣味のコーナーです。
永野護のすべてのデザインの根底にあるというドイツ戦車、そのプラモデルのお話。ロシアの戦車キットメーカーの話からはじまって、簡単な戦車キット史みたいなものが語られつつ、情熱がぶちまけられたコラムになっております。戦車のキットって、作るの大変なんだろうな・・・。
今年からの「ニュータイプ全ページカラー化」の恩恵を唯一受けていないと言われるFSSですが、表紙だけでもこうやってちょっと色が着いているのはお洒落で嬉しいですね。


最初の見開き

ヌーソード・グラファイト(以下ヌー)のつぶやき「こいつ・・・姫様のお披露目にいた・・・?」。さすがのゴーズとAKDの剣指南役を務めるヌーでも、1巻に登場した時のデコースとのあまりの変わりぶりに驚いている様子。あの時は、あんまり強そうに見えませんでしたからねえ。その向こうでは、ウラッツエンがリイの遺体に気が付いて、ちょっと大きなコマで回想シーン。どうやら、彼は特別リイと仲が良かった様です。一緒にいる赤ちゃんはリイの子供、おそらくパナール・エックスでしょう。間違っても、ウラッツエンの子供ではなさそうです。
カッと来たウラッツエン、ヌーの制止も聞かずに残像攻撃(ディレイアタック)でデコースに飛び掛かりますが、剣が流され、そして突然ウラッツエンの腹から出血!ヌーはウラッツエンに動くなと叫びます。腹の傷はデコースのストラトブレードによるもの。どうやら、ストラトブレードとは、デコースが人差し指一本で放つ極小の真空斬りのことだったようです。変則の二刀流で戦いながら、さらに同時でもう一本真空の剣を使えるとは、デコースやはりおそるべし。それを一瞬で見抜いたヌーもまたおそるべし。
そして、それを見切った上で、ヌーが仕掛けます。神速の踏み込みからまっすぐな打ち込みです。これもディレイアタックで、デコースはさすがに二刀を使って防ぎますが、肩まで衝撃は抜け、サングラスも吹っ飛びます。ところが次のコマ、デコースは剣を受けたまま回り込み、ヌーの膝を踏み折り、一瞬でとどめをさしてしまいました。腹の傷をさらしで応急処置したウラッツエンが驚いたところで次のページへ。


二つ目の見開き

ウラッツエン曰く、デコースの剣技には”型”がなく、それでいて相手の剣を受け流したり変幻自在に動けたりするのは、デコースの剣がとてつもなく重いからだとか。強いキャラが、何故強いのかちゃんと理由が存在しているあたりが、このマンガの素晴らしいところです。超一流の騎士であるウラッツエンが驚くくらいですから、デコースの剣はまさに常識はずれなんでしょう。それを操れるデコースの膂力もおして知るべし。(永野護の実家には、何本も日本刀があったそうで、その”重さ”を幼い頃から体で知っているからこそ、こういう設定が作れるのでしょう。古今東西を問わず、剣という武器の破壊力はだいたいその重さに起因するみたいですからね(スターウオーズは別)。剣の類の武器が出て来るマンガは数あれど、そこまで解って描いてる作者はそんなにいないのではないでしょうか。「ベルセルク」の表現は秀逸だと思いますが。)
サリオン王子からウラッツエンに、テレパシーで指令が下ります。デコースに対抗できそうな腕を持った騎士であるブラフォードとアイシャはカステポーに行っていて留守だから、勝てないのは解ってるけど、なんとかそこでしのいでくれとのこと。しかしまともに動けるミラージュは自分一人、しかも大量出血中ということで冷や汗が走ったところに、救世主登場!スパークです。しかし、ぶっとびもんです。重量30Kgの「ブリ」を持って、エプロン姿に、ごていねいに包丁まで持って現れます。数ヶ月前から「凄い騎士だ」と言われ続けていたスパークですが、よもやこんな姿で登場するとは・・・また作者にやられました。スパークの後ろに控えているのは、先月号でやられてしまったステートバルロ・カイダ(以下カイダ)のファティマ、カレちゃんです。手にした買い物篭には、大根、ねぎ、にんじん。ということは、スパークはぶり大根を作るつもりなんでしょう。この時期、一番美味しい料理の一つですね。
スパークはどうやら、毎週水曜日にはお料理教室を開いているようです。今日の犠牲者はたまたまカレだったんでしょうね。このコマのカレの驚きの表情は、自分のマスターが倒れているのを目の当たりにしているからでしょう。初登場にしてあっさりやられてしまったカイダですが、設定によると彼の真価はMHのコントロールの凄さにあるらしいので、大目に見てあげましょう。どうやらカイダは重傷を負ったものの生きているみたいですし、パートナーも無事なわけですから、近いうちにMH戦で汚名返上してくれるかもしれません。
左のページに入りまして、デコースとスパークの罵り合いがはじまります。どうやらこの二人は旧知の仲のようです。大変下品な発言をしながら、エプロンと、何故か上下の服まで脱いで下着姿になってしまうスパーク。しかし、表情を崩してすんごい顔をしているので全然色気はありません。「エストがほしい!」とデコースにおねだりするも断られ、「じゃ今晩のオカズは・・・」と包丁を持ち直して、ハートマーク付きで「君だーっ」と言った瞬間のスパーク、いきなり美人になってます。やはり慧茄の血筋、顔の造詣も素晴らしい。ちなみにこの時手にしている大きな包丁には「錫」の銘が付いています。のちに判明しますが、これは鈴華御前のうった包丁なんだそうで、なるほど、これならデコースの剣とも戦えるのでしょう。スパークは「刃物を持たせりゃ世界一」(4月号参照)なんだそうですから、こういう露骨な”刃物”の方が使い易いのかもしれません。
カレに指示を出しつつ、さっと分身をかましてデコースに襲いかかります!


三つ目の見開き

デコース、真剣な表情で小粒の汗を浮かべながら構えます。デコースの「慧茄のできそこない!!」という叫びに答えるがごとく、スパークは十二体分身からのリングスライサー同時攻撃二十四本!デコースの動きが止ります。まさに先代の剣聖慧茄の必殺技、ダブルヘキサグラムです。そして、慧茄と同じく、それをおとりにして後ろからスパークの攻撃がデコースに。一瞬の反応の応酬があり、お互いに傷を負って二人は離れます。しかし、重傷なのは明らかにデコース。先月あれほど強かったデコースに、互角以上の立ち回りです。デコースの「もーやだこの女ボクちゃん帰る!!」発言が出たところで、次の見開きへ。


四つ目の見開き

舞台は玉座回廊へ。ここを守るのは、まだ自体を把握しきれていないハインド・キル(以下ハインド)と、レフトナンバーのミューリー・キンキー王女(以下キンキー)&メル・ズーム(以下ズーム)です。先のとがった帽子がなんだか可愛いキンキーと、サワギが大好きで浮かれているズーム、そしてハインドの前に、FSSでは非常ォ~に珍しい、肉感的な美女が現れます。彼女はバハットマ魔法帝国のビューティー・ペール(以下ペール)でした。・・・エストじゃありませんでした。また予想外した~!ペールってもっと小物だと思ってたんだもん!しかしとんでもない大物だった事がじきに判明します。
過去、ラキシスにも噛み付いた事のあるズームが、何故かペール相手には恐れおののいていることも気にかかりつつ、ハインドの切り込みが横なぎにペールを一閃。しかしその瞬間大爆発!が起こって爆風をもろに受けたハインドは一発でぼろ屑のようになってしまいました。すぐに次の見開きです。


五つ目の見開き

壁際にこともなげに立っているペールを見たキンキー、とっさに謎の技(すぐに「十文字霞切り」と判明します。わお、某忍者マンガの技みたい)をかけて今度こそペールを倒した、と思ったらまたもや大爆発!その瞬間、キンキーの前に立ち、盾になって再び爆風を浴びたハインド!身を呈して乙女をかばう、まさに騎士の鑑と言えましょう。
コスチュームが吹き飛ばされたお陰で、やっとキンキーの姿を見る事が出来ました。アーリア系の美少女です。ハインドが身を呈してかばい、王家の王子であるサリオンを「サリオン様」と名指しで呼べるところから見て、やはり彼女はアマテラス王家に連なるものなんでしょう。手元の資料には以前から「王女」ってはっきり書いてあったんですけど、具体的にどうなのかっていうのは今までよく分からなかったんですよね。あ、まだ何もはっきりしたわけじゃないですね。
一方ズームは大変な事になっております。離れていたせいか、爆風は浴びなかったようですが、なんとペールに向かって「お母ちゃんやめてェ!!」ペールによって今までかけていた「成長を止める魔法」を解除され、あっさりズームはジャコーやヨーンやクリスティンと同年代の少女になってしまいました。今シリーズで大活躍中のこの百歳前後(地球の感覚ではだいたいハタチくらい)の年代のキャラクターが、また一人増えました。おなじダイバーということで、桜子あたりとのカラミがこれからあるかもしれませんね。


六つ目の見開き

さて、いよいよ玉座です。サリオン、ベクター・オービット(以下オービット)、ブローズの三人が到着すると、そこにはすでにつるりぬるりとした謎の影がいます。サリオンとて、後にヤクトミラージュ一機で星を一つ占領してしまう(らしい)ほどの騎士ですから、まだ子供である現時点でも並の騎士では無いはずですが、正体の分からぬ相手にはやはり警戒をします。相手の出方を見るために、オービットとブローズは捨て身の覚悟で前に出ます。オービットは高名な剣豪、ブローズは、どうやらミラージュナンバー3のランドアンドスパコーン(以下ランド)と同様に体を機械化した騎士のようです。
謎の影は自分の正体を明かします。やはりボスヤスフォート(以下ボスやん)でした。その襟元には、アトールの紋章が付いています。たしかこの男は超帝国の遺児であるという話ですから、この紋章を付ける資格があると言えるのかもしれません。しかし、最近出て来るキャラクター、みんなこの紋章付けてる気がするなあ。ブローズの体をあっさりボスやんの影のような防護膜が鋭く貫いて、最後の見開きへ。


最後の見開き

即座にブローズをサポートし、救出するオービット。しかし、そこに襲い掛かった魔法波が、無情にオービットの体を粉砕します。そしてボスやんの防護膜がサリオンの方に伸びてきたところを、まるではじめからそこにいたかのようなポーズで、目にも止らぬ早さで登場したランドが救います。飛び上がって避けようとしたサリオンの額にも、汗が浮かんでいます。・・・半ズボンのサリオン君かわいいなあ。おっと、失礼しました。このコ、すごい美形なんですもん。
さてここから、一巻以来久々に戦闘シーンに登場のランドが、ミラージュ・ナンバー3の腕をみせてくれそうです。ボスやんの、まるで自分が超帝国の星帝であるかのような発言もやたら気になるところでありますが、といったところで次号に続きます。


まとめ

先月号に引き続き、戦闘シーンがメインのサービス満点の回でした。それにしても、ミラージュ騎士団があまりにも弱く見えてしまって、不憫でなりません。来月号で巻き返しなるんでしょうか?ミラージュ騎士の強さの代名詞と言うべきログナー、アイシャの不在に加え、実力者ブラフォードも居ないといっても、レフトナンバーもスパークを除いてほぼ総崩れとは・・・。しかし、彼らはこの後、「モナークセイクレッド」において十分過ぎるほど恐ろしい騎士団の実力を見せ付けてくれるはずですから、たとえここでイメージが悪くなったところで、あまり関係無いのかもしれませんね。まあとりあえずは、カッコよく登場したランドと、いまだ無傷のサリオンの来月での活躍を期待しましょう。
MH戦はないのかも。デコースは「帰る」発言をしてしまいましたから、重装甲版のバッシュのお披露目はまだ先になってしまうのかもしれません。となると、ひょっとしてミューズのSSIクバルカンとの対決まで出番無しかも。この黒騎士と白騎士の対決は、連載再開後の目玉のひとつでしょうね、きっと。
さあ、来月号、この混乱にどう決着がつくのでしょう?やはりポイントはそろそろ登場するはずの、アマテラスの「エイリアス」なんでしょうか?

絶叫

週末にかかるため、発売日がいつもより早かった今月号。もしや、と思って本屋に行ってみたのは正解でした。そして、平日の誰も家にいない日中にFSSが読めてラッキーでした。今月号を読みながら、てなしもは何度も恥ずかしいほど大きな悲鳴をあげるはめに陥ったのですから。

表紙

永野護が代表を務める会社、トイズプレスが扱う新商品「グレイトフルデッドのビーンベア」その他もろもろの広告的写真記事です。
海洋堂のファティマフィギュアやFSSマウスパッド、マグダルとデプレのフィギュアの紹介もあります。えらくポップでサイケな表紙であり、その次ページからの激しい展開をまったく想像させないものでした。


最初の見開き

ギニャ。
一目見て唖然。読めない文字が沢山目に飛び込んできます。場合によってはこれをすべて訳さねばならないかも、と想像しててなしもの意識が少し飛びましたが、何者かの呼ぶ声(後に正体判明)で我を取り戻し、まずは右端のコマから読みはじめます。
侵入者ボスヤスフォート(以下ボスやん)の一人語りは、一般的なダイバーの力が古のものよりもはるかに衰えてしまったことを説明します。次のコマ、話を聞かないグリース・サリオン王子(以下サリオン)は、ボスやんの攻撃が自分には見えず、ランドアンドスパコーン(以下ランド)には見える理由を、自分が持っているダイバーパワーのせいであると気が付き、自分がこの場では足手まといでしかないことを認識しています。最強のダイバーであるボスやんには、まわりにいるすべてのダイバーの心が読めてしまうのでしょう。まだ少年なれど騎士としての力は星団屈指であるはずのサリオンが、先月号でやすやすとボスやんに手玉に取られていたわけが、こうして説明されました。FSS作品内の戦闘において、「敵の先が読める」ことが何よりも強いということが、このシーンでも証明されているわけです。(例1:コミックス9巻登場の、スパリチューダが得意とした演算戦。例2:最強騎士の一人デコースの出足を、ファティマであるにも関わらず止めてみせたバ-シャ。)
これは、永野護氏が筐体を買うほどはまってしまったゲームセンターの対戦格闘ゲームの影響も考えられます。どんなに強力な技が使えるキャラクターで戦っていても、こちらの攻撃パターンを読まれてしまっては相手に勝てないということを、対戦格闘ゲームは体に教えてくれます。
さて、やっと3コマ目。いきなり部屋の扉を吹き飛ばして何者かが登場します。横文字で書かれた彼の発言は、おそらくドイツ語です。読めません。しかし、所々日本語が混ざっているのでそれを拾い上げてみると、「豆大福」「大福」「アズキ」「アンコ!!」・・・・・・???
それを見たサリオン、慌てて城内に緊急脱出命令を飛ばします。曰く、「デザートが食えずブチ切れた奴が来よった!!」次のコマの命令を受けている女性は、スパークかとも思ったのですが、ひょっとしたら以前にも名前の出てきたことのある「ホワイトリンクス」ご本人かもしれません。どうやら彼女が城内の連絡網を仕切っているようです。テレパシー能力に特化したダイバー、といったところでしょうか。同じコマの向こうの方に変な生き物がいますが、これは先月急成長したズームのように思えます。
左のページに入りまして怒り狂うドイツ語の主の姿がはっきりと姿を現します。バビロン国王にしてミラージュ騎士団司令、F・U・ログナー(以下ログナー)その人です。周りの人間の反応から判断して、どうやらログナーのドイツ語の内容は、食後のデザートに豆大福を食べようとしていたところに騒ぎが起こって、それが食べられなかったのでオレは頭に来ているゾ、といったところのようです。ジャーマンメタルでも聞きながら食事をとっていたのでしょうか。とりあえず翻訳をしなくてもストーリー理解に影響は無さそうですが、でもきっと、何か面白いことを言っているに違いありません。どなたか、ドイツ語に堪能な方がいらっしゃいましたら、部分的にでも訳しててなしもに教えてくださいまし。
「サリオン!Hau ab!!」とログナーが叫んで、ボスやんVSログナー戦闘開始です。多分、「どいてろサリオン!」くらいの意味なんでしょう。


二つ目の見開き

ボスやんが手下の変な生き物を呼びます。曰く、「バビロン王!私は君とマトモに戦うほどおろかではない」。今まで強敵と戦うことがほとんど無く、実力が不明だったログナーですが、最強のダイバーであるボスやんが戦いを避けたがるほどの騎士であるということがついに作中で判明しました。ついでに、ボスやんが失われたダイバーパワー、生命の様々なしくみを操る能力である「ルシェミ」の持ち主であることも判明します。あ、忘れてはいけません、フロートテンプルで何かあるとしゃしゃり出てくるアマテラスかあちゃん(以下ミコト)もひょっこり出てきました。
ログナー&ミコトVS変な生き物、ボスやん&ランドVSサリオン、と戦いの組み合わせが変わったところで次の見開きへ。


三つ目の見開き

ボスやんからいきなり放たれた衝撃波を避けられないサリオンを、ランドが体を張って守ります。それにしても、サリオンはかわゆいです。成長すると超絶美形の斑鳩王子になるわけですが、現時点でも、まんま美少女で通る顔立ちです。
ボスやんの正面に出現した光の玉。ついに登場したメル・リンス・ウザーレ・ターマ(以下リンス)です。外見はクローソーですが、その正体はアマテラスの別体です。それを見て憤るボスやん。アマテラスが本当の力(神の力?)を出せば自分なんて一瞬で消し飛ぶというのに、わざわざ別体なんぞを出してくるというアマテラスの余裕が、苛立たしいようです。そうではなく、ここに来たのはリンスの意志であり、すべてがアマテラスの余裕である、というような考えは間違っているとリンスは訴えますが、ボスやんは話を聞かず、相手をアマテラスそのものとして憤りを吐き出し続けます。この作品の大きなテーマの一つであるはずの、神にあがらう人間の苦悩の姿がそこにあるように思えます。実はアマテラスは悪であるという視点を持つことで、この作品はより深い解釈を可能にするのでしょう。それにしても、人の話を聞かない奴が多いなあ。
リンス=アマテラスが来たことで発憤したランドが攻勢に出ます。先月号で体を貫かれ吹き飛んだブローズも、まだ息があったようでランドの呼びかけに応じて動きます。


四つ目の見開き

この最初のコマを見たとたん、僕は全身の血が頭に上ってくるのを感じました。床に突っ伏して、カーペットをかきむしりました。しかしそれでもこらえきれず、僕は大声を上げて、飛び上がりました。ちくしょう!と、思い切り声を張り上げました。何たる不覚、何たる狡猾、何たる作者のアイデア力。
そこに描かれているのは、大きく張り出した両肩の装甲から無数のファンネルを打ち出す、人間サイズの戦闘兵器でした。尖ったくちばし、円筒形のアームガード、ローブのすそから見えるMHとは異なるデザインラインの脚部パーツ、そして腕に刻まれた「Q」の文字。まさかブローズが「キュベレイ」であったとは。
しばらく、のけぞるようにしながら、自分の太股を何度もたたき、奇声を上げる自分を、どうしても押さえることが出来ませんでした。
「機動戦士Zガンダム」がTVで放映されたのは、僕が小学校三年生の頃でした。キュベレイは、「Z」「ZZ」二作続けて登場した敵役、ハマーンカーンの搭乗した名MSです。そして「ZZ」の時には、ほぼ同デザインの「キュベレイMk2」が別口で登場し、僕はそれに乗っていた無邪気なクローン少女への募る思いが募りすぎ、いまだに自分の自転車にそのまま「キュベレイMk2」と名前をつけているという始末なのです。そんなキュベレイ。もう十五年も前から、自分の自転車をそれに見立てて、毎日のように親しんできたそのデザインが、まさかそのデザインの生みの親である永野護氏のマンガFSSに再び登場しようとは。先ほど、ログナーのドイツ語を見て飛びかけたてなしもの意識を、呼び戻してくれたのは、きっとこの「キュベレイ・デザイン」だったのにまちがいありません。こんなにいとおしいのですから。
ブローズがFSSに初登場したのは、コミックスだと6巻です。この頃すでにニュータイプ誌を毎月買っていましたから、おそらく最初に目にしたのはコミックス発刊一年前の93年のこと。およそ、7年前です。なんということでしょう、僕は7年もまえから、いとおしいそのデザインを目にしておりながら、それに気が付いていなかったのです。確かに、その頃のブローズの姿は今回登場したものとはずいぶんと異なっていて、かろうじて金属製の尖った指のデザインがキュベレイっぽく無いことも無い、といったところなのですが、それでもキュベレイはキュベレイです。その上、先月号を見返してみたところ、ブローズはその特徴的な腕部を大きく振りまわして「Q」の文字を何度も見せつけ、肩部や脚部もはっきりと公開しています。遅くとも、先月号の段階では、識別は可能だったのです。なあんとなく、「Q」の文字が気になったり、前腕部の装甲の形を見たことがあるような気はしていたのですが、まさかMSが人間サイズで登場し、体を貫かれて「ぐわっ!!」なんて叫ぶとは思いませんから、まったく気が付くことは出来ませんでした。ここ数年無かったほどの、完敗です。参りました。永野さん、一生ついていきます。
さて、そんなブローズですが、活躍はそこだけ。無数のファンネルを飛ばしてボスやんを撹乱しますが、おいしいところはランドに持っていかれます。機械の体であることを生かしてボスやんの火炎を無効化したランドは、その一瞬の隙に切り込んで、ボスやんの右腕を切り落とします。落ちた腕には、六亡星とヘビの入れ墨がありますが、何かの紋章なのでしょうか。ボロボロになったランドを気遣うリンスと、えらく余裕な感じのログナーをせかすミコトを見ながら、次の見開きへ。


五つ目の見開き

ログナーに襲い掛かる、ボスやんの変な生き物の怪光線を、霊体であるミコトが体を張って守ります。ドリフのコントのようにボロボロになって、肌も露に艶姿を見せてくださるミコトさまですが、さすが霊体、一瞬で衣服が戻ります。自分を守ってくれたミコトに対してまたもやドイツ語で何事かささやきかえすログナー。多分、「次の一発で終わらせます」みたいなことを言っているんだと思うのですが。
強く右足を横に踏み出し、体全体をひねって力をため出すログナー。その踏み込みだけで、床に亀裂が走ります。八極拳という中国拳法に存在するという「震脚」を思い起こさせる、すさまじい踏み込みです。リンスがその場に居る全員に注意を促します。星団最強剣技「マキシマムバスタータイフォーン(M・B・T)」をログナーが放とうとしているのです。M・B・Tは星団史上最強騎士といわれるマキシだけが使える技なのかと思っていましたが、やっぱりログナーも使えるみたいです。ログナーが、今回唯一の、ドイツ語でない言葉を叫びます。「Rock’n Roll!!」


六つ目の見開き

全身のひねりから生まれた強力な衝撃波が、ボスやんの変な生き物を襲い、破壊します。勢いあまって、お城の外壁も崩壊し、あたりは崩れはじめます。事前に城からの退去命令を出していたサリオンは、こうなることを予期していたのでしょう。
敗北を認めたボスやんが、以前にヤクトミラージュに乗ったシャフトを殺した時のように、去り際にサリオンの命を奪おうとします。サリオンは自由を奪われ何も出来ません。危うし、といったところで最後の見開きへ。


最後の見開き

サリオンに向かって放たれた「絶対零度」を阻止すべく、リンスが放った衝撃波ですが、一瞬間に合わず、絶対零度はサリオンに命中します。リンスの衝撃波もボスやんに命中しますが、サリオンこれまでか、と思ったところに、身を挺してサリオンをかばったログナーの姿が浮かび上がります。絶対零度によって瞬時に凍り付いたログナーの体は、すでに崩れはじめて、まさに弁慶の立ち往生の状態になっています。おそらく、このログナーはここで死んでしまうのでしょう。マジャスティク・スタンドの本格始動はマンガ内時間で20年後の3030年あたりからですから、生まれ変わった次のログナーは早くてもまだ20歳、僕らの年齢に換算するとまだ6~7歳くらいですから、まあ、諜報活動ならともかく、まともな戦には参加できないことになります。その時代に、ここでログナーに命を救われたサリオンが代りにミラージュ騎士団司令となって活躍するはずですから、計算はばっちり合います。
ミラージュ全体にはかなり大きなダメージを与えながらも、金星クラスを落とせなかったボスやんが、ぼろぼろになりながらその場を去ります。去り際のセリフから、ボスやんのねらいの一つはラキシスだったことがわかります。2ヶ月前の予想通り、実際には今もスペクターの意図は不明ですが、スペクターに姿を消されたラキシスは結果的にこの騒動から身を守れたことになります。
そして最後の一コマ・・・・・・え、なにこれ?
羊水らしきものの中に浮かぶエンプレスのシンボルと、そこからへその緒が繋がった胎児と、それに触れようとしている手。多重積層装甲のような底面。直感的には、モラード・カーバイト制作の最高傑作ファティマ、「タワー」の現在の姿なのではないかと思うのです。しかし「タワー」は、コミックス9巻に二コマだけ登場した時には、まだ人の姿になっていない胎児でした。あれからマンガ内時間で17年ほどが経過しています。いくらジョーカー星団とはいえ、いくらファティマとはいえそれほど長い間胎児であり続けるということも無いように思えます。そして、それに触れようとしている手も、モラードの手にしては繊細過ぎます。これは女性か、ファティマの手のようにも思えます。手の甲には何かしら紋章が浮かび上がっているようですが、ここからも、僕にはなにも判別できません。急に時間が飛んだのでしょうか。過去、またはずうっと未来へ。それとも、これは別の何者かなのでしょうか。


まとめ

フロートテンプルが大混乱になりました、チャンチャン♪・・・先月号を読んだ時点で、こんな感じで終わるかと思っていた今月号の話でしたが、ふたを開けてみればどっこい、ここ一年くらいの連載の中でも一、二を争うような内容の濃い話でありました。例えば、アマテラスと、ソープ、リンスはそれぞれ別の意志を持っているというのも、かなり大きな話です。これまで、ソープとアマテラスに関しては、まず同一人格だと思われていましたが、再考証が必要になりそうです。また、最近登場した東の君も、ヨーンを監視していたシーンから解るように重要な人格みたいですから、要素として頭に入れておかねばならなくなります。
また、明かされたログナーの実力や、想像以上だったランドの剣技、そして僕が衝撃を受けたブローズのキュベレイ・デザイン。特にキュベレイ・デザインは、FSSワールドが、今後デザイン上だけでも他の永野作品、例えばガンダムワールドなんかと接点を持ちうるということを証明しているわけですから、下手をすればZガンダム・モチーフのMHやメッサーラ・デザインの人間なんかも出てきてしまうかもしれません。ブレンパワードすら可能性はあるわけです。いえ、ブレン・デザインは、LEDミラージュやサイレンの新装甲に採用された「積層装甲」という形ですでに登場しているんでしたね。

来月号からは今回のシリーズのエピローグが始まるようですが、そこで語られるのはどんなエピソードなんでしょうか。連載中断前というのは、かならず読者の度肝を抜きにかかってくるのが永野護のいつもの手法ですから、今回もドキドキしながら待たねばなりません。僕らの想像力を爆発的に膨らませてくれて、なおかつエンドエピソードとしてふさわしいものが提示されることと思います。また外れるかもしれませんが、僕の予想としては次期連載時に主役格になるはずのマグダルとデプレのエピソード、もしくは、マキシの誕生にまつわる、ミースとカイエンのエピソードあたりではないでしょうか。以前会議室の方で話の出ていた「バトンタッチ」の考えから行くと、ボスやんから「超帝国のザ・シバレース」繋がりでタワーに行くかも、とも思うのですが。
もう一つ可能性があるとすれば、今回はとにかくたくさんの登場人物がたくさんのエピソードと共に登場しましたから、そのほとんどの人物がもう一度づつ登場するようなわかりやすい「まとめ」をやるかもしれません。でもでも、完全な新キャラをいきなり出して、読者を混乱させて終わるかも・・・・・・。
とかく、妄想の種は尽きません。あな恐ろしやFSS。

最初の妖精たち

「インタシティ」
「フォーカスライト」
「SSL」
「ニーヴ」

この四体のファティマを総称して、「4ファッティス」と呼びます。
ジョーカー星団最悪の戦闘兵器、モーターヘッド(以下MH)のコントロール補佐の為にDr.リチウム・バランスによって生み出された、生体コンピューター、人造人間。彼女たちは、その最初の四体です。
ファティマというのは、戦争の道具です。道具であるからには、その性能の良し悪しが重要です。これまでFSSという作品において、ファティマの性能というのは、そのファティマが成人した時に計られるという「パワーゲージ」によって比べられるものだと、僕ら読者は思っていました。例えば、Dr.バランシェ最後のファティマ「アトロポス」は、5つのパワーゲージすべてが3Aという超絶的なファティマです(平均的な騎士の能力が2Aなのですから、その凄さも解ろうというものです。アトロポスは、戦闘能力、MHコントロール能力等において、天然の騎士を上回っているわけです。)。ところが、そのパワーゲージ以上にファティマの能力を左右する要素があることが、「第五話 ザ・シバレース」の、エピソード4、「皇帝たちの操り人形」の中で、明らかにされました。
それは、「経験」でした。
長い戦闘経験等の蓄積は、性能差をも跳ね除け、能力に勝る敵に勝つことが出来るということを、そのエピソードの中で他でもない4ファッティスの一人「インタシティ」が証明し、また、いまだ描かれない後の時代において、星団のほとんどを手中に収めたアマテラスがただ一つ恐れたもの、それはその時代に敵方に所属していたファティマ「エスト」の豊富な戦闘経験であったといいます。
ジョーカー星団史上もっとも数奇な運命を辿ったファティマであるとされる「エスト」は別格としても、戦闘経験がファティマの性能の優劣に大きく関わるのだとすれば、もともとの彼女たちの性能が未知数なのではっきりとは判りませんが、星団歴2310年に作られた4ファッティスは、現在の連載中の時代である3000年代以降には、700年近い戦闘経験の蓄積によって、すでに並のファティマでは太刀打ち出来ないような非常に重要なファティマになっていると言えるはずです。
そして、その存在が明るみに出るやいなや、そのうちの一人はメインストーリーに絡み、一人は実はとっくの昔に作中に登場しまくっていた事が判明し、後の二人も年表中に名前の出るような主要人物達とドンドン絡みはじめ、その存在は到底無視出来るものでは無くなりました。
更に言うならば、ジョーカーに住む一般人の2倍以上の寿命を持つ(まだ確定したわけではありませんが)彼女たちは、歴史上の有名人物たちのパートナーとして、また、絶対無比の軍事兵器として、歴史が動くその現場に居合わせ続けているはずなわけで、彼女たちが、それぞれの時代に、何処で、誰と、何をしていたのかというのを整理する事は、難解なFSSの物語全体を理解し、これからの物語をよりスムーズに読み解いていくためにとても有益な事だと考えます。
その上もっと重要な事は、このFSSという物語は、ファティマという虐げられた人造生命体の種族が、「救われる」物語であるという大きな骨格を持っているという事です。最初のファティマである4ファッティスの生涯を辿る事は、FSSのストーリーの骨格に近づく事に他ならないはずです。

よって、これから、4ファッティスについて現時点(1999年11月8日)で判っている限りの情報を元に、彼女たちのパーソナルデータと、彼女たちに関係する人物の情報を、僕の憶測も含めつつ、簡単にまとめたいと思います。ただ、FSSが連載されている月刊ニュータイプ誌の新しい号がちょうど明日発売なので、いきなり近日中に改訂版の更新をしなければならなくなるかもしれませんが・・・。
(ふう。前置きだけでこんなにかかってしまいました。)

ファティマ「インタシティ」について

インタシティは、連載中ですでにお亡くなりになっているファティマなので、その生涯の最初と最後を明確に線引き出来る分、他の三体よりも足跡を辿りやすいです。
4ファッティスは、四人ともはじめに”純血の騎士”ナッカンドラ・スバースに仕えました。その後、それぞれに自分の「マスター」を選び、各国に散っていきました。彼女の最初のマスターは、ハスハの剣聖ビザンチンでした。星団歴2500年代にハスハで起こったミグノシア大動乱において、十ヶ国を相手に戦い、見事ハスハの大地を守りきったという、ちょんまげ頭のシブいおっちゃんです。ダグラス・カイエンやアマテラス、シャフト(げ!)等の師匠として知られる剣聖デイモス・ハイアラキの、さらに師匠にあたる人物で、アトロポスも使う剣聖剣技「飛燕剣」の生みの親でもあります。そんなビザンチンと共に、インタシティはハスハを守りました。
その後、彼女がどんな騎士にどのように仕えたのか、やはり詳しい事は定かではありませんが、彼女は星団歴2977年頃に、彼女の生みの親の子孫であるDr.バランシェの元に一時身を寄せ、そこで特殊な処置を受けます。インタシティとしてのデータをすべて隠し、無銘のファティマ「ハルペル」として、再び世に出たのです。それは、「最初のファティマ」として博物館に飾られるのではなく、生命の火が燃え尽きる最後の一瞬まで、一ファティマとして騎士の元に寄り添い続けたいという、彼女自身の願いをバランシェが叶えたものでした。
察するに、その直前まで、インタシティはハスハかどこかの博物館や研究所で、歴史に残るファティマとして、展示物同然の扱いを受けていたのかもしれません。
そして彼女は命尽き、彼女の身を案じてくれる騎士の手の中で、多くの優しい人々と、自分がかつて乗り込んだ二機のMHに見取られて、静かに息を引き取ります。星団史上、寿命で死んだ最初のファティマです。コミックス九巻に収録されているそのシーンは、何度読み返しても胸に込み上げて来るものがあって、目頭が熱くなります。
彼女がその昔守り切り、最後の瞬間まで仕えていたハスハ共和国&アトール聖導王朝は、これ以降、カイエンの息子、天位騎士デプレッサー・ビート(デプレ・ツェン・アトール)が守ります。デプレは剣聖ビザンチンのMHエンプレスを駆り、インタシティの最期を見取ったファティマであるコンコードをパートナーに、この地を守り続けるのです。そして、MHエンプレスはDr.モラード最後のファティマにして、最高のファティマであり、アトール聖導王朝最後の騎士でもあるという「タワー」に引き継がれます。それは、星団歴にして6800年のあたりの出来事であるといわれています。


ファティマ「ファーカスライト」について

フォーカスライトは、ファティマが「お披露目」をするようになってからも、ナッカンドラ・スバースに仕え続けました。騎士のことを「ヘッドライナー(天を取る者)」と呼ぶ事がありますが、その呼称はもともとスバースの個人的な呼ばれかたで、それが長い時間をかけて星団中に広がったのです。このことだけでも、この騎士の歴史上の影響力の強さをうかがい知る事が出来ます。
星団歴以前のAD世紀に生れ、何度も封印を受けながら長い時間を生き続けてきたスバースは、星団歴2499年に7000年にも及んだその生涯を終えます。その時、彼にはアラド・バスコ・スバースという娘がいましたが、彼女がフォーカスライトを継いだのかどうかは、定かではありません。フォーカスライトは、「純血の騎士」に仕えようとする強い意志を持っているという話なので、すでにその時代の人間の血が入ってしまったアラドには仕えなかったのかもしれません。
その後、彼女が仕えた相手としてはっきりしているのは、剣聖ダグラス・カイエンです。カイエンのパートナーである、バランシェファティマ38番「アウクソー」は、実はフォーカスライトであるらしいのです。カイエンは、バランシェがLEDドラゴンから貰い受けた「純血の騎士の受精卵」を、ファティマ「クーン」に着床させて産ませた、紛れも無い純血の騎士ですから、フォーカスライトが仕える条件に当てはまりますし、そのままの体では寿命が近いということを悟った彼女が、バランシェに頼んで複数の情報体を体に作ってもらい、別時代の別のファティマとしてカイエンに仕えたというのも、納得がいく話です。
さて、カイエンの没後、フォーカスライトが誰に嫁ぐのかについてなのですが、実は、手元にある資料がそれぞれ異なる記載になっていて、よく分からなくなっているのです。
ある資料には、カイエンの息子マキシが、アウクソーを継ぐとあります。しかし、手元にあるうちで最も信頼のおける資料である「FSSエピソードガイド」(角川書店刊、1997年)によれば、マキシのパートナーはSSLであるとされています。もちろん、マキシが二人供をパートナーにしていた可能性もあるわけですが、星団史上最強騎士と謳われる彼の、パートナーであるファティマが、そんなあやふやな事も無いのでは、と僕は考えるのですが・・・。
そして、フォーカスライトは後に、ラベル・ジュード(コーラス六世)の元に嫁ぐようです。しかしながら、その時の彼女の名前は「デルタ・ベレン」というものになっているそうです。そして、デルタ・ベレンは人の形をしていないファティマであるとも言われています。これはただの憶測ですが、フォーカスライトはいずれかのファティママイト(おそらくはカイエンの娘であり妻であるDr.ミース・シルバー)の手によって、エトラムルファティマへと作り変えられるのではないでしょうか。そして、ラベルのMHであるジュノーン・オクターヴ(ユニコーン、さらに別名ジャッジメント・ミラージュ)にあるといわれる二つのファティマルームに、クローソーとともにおさまるのではないでしょうか。
・・・まてよ。そういえば、ラベルとフォーカスライトが並んで立っているショットが、コミックス八巻の182ページにあったような。そうなると、やっぱりこの時代も彼女は人型のままなんでしょうか。
しかし、それ以前にフォーカスライトにはもっと大きな謎があるんです。それは彼女の名前です。「フォーカスライト」というのは、AKDの数代前の先祖の名前にあるのです。その名も「レディオス・フォーカスライト」。”純血の騎士”ナッカンドラ・スバースを前時代の皇帝から受け取った、AD世紀と星団歴を繋ぐ人物です。レディオスというのはアマテラスの一族の幼名で、ソープ君も使っている名前ですから、彼女がアマテラス王家の先祖に当たる事は間違い無いでしょう。また、「デルタ・ベレン」というのも、アマテラス王家の住む星の名前ですから、やはりこのファティマとアマテラス王家が無関係であるとは考え難いです。
はっきり言います。このファティマはまだまだわからない事だらけです。


ファティマ「SSL」について

SSLは、太陽王レーダー四世に嫁ぎました。何故にこの王が「太陽王」と呼ばれているのかはまだ定かではありませんが、こういう立派な呼称が付くくらいの名君だったのでしょう。レーダー王家といえば、もちろんフィルモア帝国です。カラミティ・ゴーダースに渡ったSSLがどんな活躍をしたのか、残念ながらこれもまだ詳しくはわかりません。
次に彼女の所在が確認出来るのは、臨終間際のインタシティの言葉からです。どうやら、SSLはバランシェの手によって封印を施されているらしいのです。そのまま普通に活動を続けていたら、インタシティのように寿命が来てしまいますから、冷凍睡眠のような延命措置をしているのかもしれません。何を待つために延命をしているのかは不明ですが・・・。
そして、剣聖マキシのパートナーとして、彼女は星団史に名前を大きく現します。駆逐型MHデストニアス(レッド・ミラージュB4、さらに又の名を暁姫)を駆ってわずか数十年の間に300機オーバーのMHを撃破する星団最強騎士、そのパートナーですから、その能力も計り知れません。
ただ、マキシは非常に若いうちに死んでしまうらしいのです。何らかの敵と戦い、ジョーカー星団に住む全ての生命の命を守って死ぬらしいのですが、その戦いをMHに乗らずにこなすという事もあまり考えられません。その際に、SSLも一緒に命を失うという可能性があります。しかしながら、SSLと上記のフォーカスライトは情報が錯綜していて、どの災難がどちらに降り注ぐのか、いまだにはっきりしませんから、SSLがどんな活躍をするファティマなのか、まだよく分からないというのが本当のところです。まさか、アウクソーみたいにもう僕らの前に姿を現している、なんてことは無いと思いますが(多分)。


ファティマ「ニーヴ」について

ニーヴは、初めてマスターを「選んだ」ファティマです。そのお相手はジェスター・ルース。ミッション・ルース(ボード・ヴュラード)の曾祖父にあたる人物です。まだトラン連邦は成立しておらず、レント国が独立国として存在していた頃の王様で、ナッカンドラ・スバースの娘アラド・バスコ・スバースを側室に迎えた騎士です。アラドとの間には二男一女を設け、そのうちの次男は後の剣聖、デイモス・ハイアラキであるというところからも、彼の騎士としての素質の高さがわかります。また、その長男や長女の血筋には、剣聖慧茄・ダイ・グ・フィルモアや、天位より上の小天位の位を持つオルオカン・ハリス、その娘で、ミラージュレフトナンバーのピッキング・ハリス(スパーク)、その更に子孫のベルベット・ワイズメル、そして連載にまだ二ページ出てきただけなのに話題性バリバリのマロリー・マイスナー(多分)等、とんでもない騎士が鈴生です。
しかしながら、ニーヴがいつ何をして、そしてこれからどう活躍するのか、それを示す資料は今のところ皆無です。ただ一つだけ判っている事は、SSLと同じようにバランシェの手によって封印されているらしいということだけです。
この「封印」というのが曲者で、普通この言葉を聞くと、どこかの研究室の奥深くにでも開かずの扉を作ってそこに冷凍睡眠でもしているのではないか、なんて思い浮かぶわけですが、ひょっとして、もっと意外なところに隠されているのではないか、なんて僕は考えます。長いことこのマンガのファンをやっていると、考えがひねくれてくるんです。
例えば、ハルペルやアウクソーと同じように、別のファティマの人格を植え付けて隠してしまうというのはどうでしょう。実は二人ほど、気になるファティマがいるんです。
一人目は、以前、慧茄に仕え、今(星団歴3000年代初頭)はフィルモア・ファイブ(ダイ・グ)に仕えている、バランシェファティマ5番のチャンダナです。その根拠はただ一点、「ボケた性格」です。冗談で言っているのではありません。チャンダナがちょっとボケた感じの可愛いファティマであることは、連載の11月号に(吹き出しの外の発言ではありますが)はっきりと描写されており、Dr.プリズン・コークスもそのボケぶりをいぶかしんで「バランシェの設計ミス」とまで言っています。そして、コミックス九巻103ページにおいて、ニーヴは「吹き出しの外で」ほえほえ、ふにら~、すき~、と、なんともボケた発言をしているではありませんか!(力説!)しかも、この発言は、そのコマの中の細かい文字で、その場に居合わせたアマテラスが聞いていることがはっきりと描かれています。ニーヴがこういう発言をしたという、れっきとした証人までいるわけです。これは、この二人が同一の精神を持つファティマであるという伏線ではないでしょうか?僕はこういう「ボケ子ちゃん」が好きなので、たまたまこのコマが記憶に残っていてチャンダナと繋がったのですが、他にこの事に気が付けた読者は一体何人ほどいるのでしょう?・・・とはいっても、ただの僕の思い込み、勘違い、見当違いかもしれないんですけどね。
さて、もう一人の気になるファティマは、同じくバランシェファティマの、チャンダナと僅か一つ違い、6番のニーム(ヴィンティン、弁天とも)です。根拠は、こっちも単純、その名前がニーヴに似ている事です。ニームのマスターは、強天位騎士ジャコー・クオン・ハッシュ。カイエンからシルバーナイトの称号を譲り受け、ミラージュ騎士団の騎士団外騎士としても扱われる非常に強力な騎士です。星団歴3000年前後の頃にまだ幼い少年ですから、ジャコーが活躍するのはまさにこれからなわけですが、そのパートナーであるニームは少なくとも50年以上前に成人しているファティマなわけで、バランシェの銘入りのファティマの、これほど古いナンバーのものが、それ以前に高名な騎士の元に嫁いでいないはずはなく、その素生が明らかになっていない以上、とっても怪しいファティマなわけです。ちなみに、ニームには三つの名前がある、なんて以前から作者はよく注釈をいれており、そのあたりからも、彼女がただのファティマではない事がうかがえるので、ニーヴの変わり身である可能性を強く感じるのです。
こうして考えてみると、この二人のナンバーが並んでいる事が、偶然とは思えなくなります。ひょっとして、どちらかがニーヴであるという、作者の謎かけなのでしょうか?もしくは、一人はニーヴで、もう一人はSSLなのかもしれません。となると、レーダー王繋がりでチャンダナの方がSSLなのかも・・・いや、そうなるとSSLまでボケ子ちゃんということになってしまう・・・。いやいや、そもそも4ファッティスに個性の差があったかどうか・・・。

と、いうわけで、こうして並べてみても、やっぱり謎だらけです。さあ、今月のFSSを読みましょう。
そこにはいくつかの謎の答えと、それに倍する数の、僕らが求めて止まない、新たなる謎が記されているはずです!

整理するゾ~

というわけで、毎月10日前後に、その月の月刊ニュータイプ誌に掲載されたFSSについての僕なりの読み解きをやる事にしました。
皆さんがFSSを読まれる時の参考にしていただければ幸いです。当然、このコーナーはすでに今月のFSSを読んだ方が読まれる事を想定して書きますので、未読の方はそれを覚悟の上で、読むか読まないかを決めて下さいね。

表紙

おそらく初公開、コーラス王朝の家系図です。”大帝”ディス・バイス・コーラス・ワンナインから始まる、コーラス王朝成立以後の、作者曰く「削りに削った」家系図だそうです。
この1ページだけでもワンコーナー書けちゃうくらいの内容の濃さなので、細かい事は又いずれ、追求を入れます。
ただ、謝罪と訂正を一つ。僕はこのHP上で何度か「アルル様=マロリー・マイスナー」説を掲げてまいりましたが。大嘘でした。すみません。完全に別人で、マロリー・マイスナー(マロリー・ハイアラキ)、アルル・フォルテシモ・メロディ・フォース、セイレイ・コーラスの三人で、暴風あばずれ3王女・・・もとい、麗しの風の3王女なんだそうです。これからの動乱の時代に、星団中で暴れまわるコーラス籍の三人なんだそうです。
このコーナーを定例にすることにした以上、これから、こういう訂正を何度も入れる事になるんでしょう。でも、ばりばり予断を入れていくつもりです。楽しいから。


最初の見開き

「見開き」単位で語っていく事にします。
まず、星団歴3010年の晩秋のフロートテンプルをバックに、控えめなタイトルコール。「ブラック・スリー」。黒い三人ですね。誰の事でしょう?多分、じきにわかります。
今回もお留守番のラキシスと、その退屈な姫様をあやす、道化師スペクター&ポーター。先月号ではキモノに身を包んで可憐にして妖しい美しさをちらっと見せてくれたラキシスですが、三年後の今号では、いつものように置いてけぼりを食っています。ごていねいに秋雨まで降って、寂しさを演出しております。カエルさんプリントの傘が可愛いです。
姫様の退屈、それは一大事とスペクター駆け寄り、「かくれんぼー」なる秘術で姫様をぱっと隠して、それを見ていたポーターの拍手とともにこのシーンは終わります。
いやいや、ちょと待って下さい。ラキシスが消えた、これこそ何にもまして一大事です。スペクターは「全能神ジョーカー」でありますから、ラキシスを消してしまう事くらいわけはないでしょうし、ひょっとしたらあまりに寂しそうなラキシスを見かねて、アマテラスの居場所、つまりこの後に登場するカラミティ星衛星軌道星団会議場に彼女を送ってあげたのかもしれません。しかし、スペクターが、そんな単純な心理で行動するでしょうか。彼は、FSSという作品全体の、とてつもなく大きな流れを見ながら、いつも行動しているふしがあります。そしてもちろん、一見何事もなさそうなシーンに重要な意味を持たせるのはこの作品の常套手段。今回、このシーンが一番重要であると僕は考えます。
現に、今号の後半は、スペクターの預言通りに城中みんな大サワギになっているではありませんか。


二つ目の見開き

舞台を星団会議場に移し、ぐぐっと大人になった、でも中身は以前のままの、ジャコー・クオン・ハッシュの登場です。
母親のイマラ・ロウト・ジャジャス、ミラージュの名門レオパルト・クリサリスとともに、星団会議に出席するアマテラスのお供について来たのだと思われます。また、他にも多くの人物が来ているらしい事がAKD貴賓室のざわついた雰囲気からわかります。おそらくAKDの外交官達でしょう。なんせアマテラスはデルタ・ベレン星一つ丸々の大統領ですから、外交交渉の規模もデルタ・ベレン内に存在する多くの国の分、相当な大きさになっているわけです。
ヤクザの若頭のような風体で、せっかくの美形の顔を歪ませまくって暴言を吐いて暴れまくるジャコーに、イマラの母ちゃんキックが炸裂、イマラの下着がモロ見えという、コミックス三巻でイマラを見た時からファンになっている僕にはたまらないサービスシーンがあり(下着のブランドが見分けられる人なら、きっともっと楽しいに違いない)、さりげなくイマラの過去、”アティアの鬼姫”と呼ばれた宇宙海賊時代が、三条という名の人物から語られます。いなせな喋りかたをするこの美女は、ジャコーが騎士団長(ジャコー曰く、組長)をしているイオタ騎士団の人物のようで、ついでに彼女の口から、すでにこの時代ジャコーが強天位を持っているということも告げられます。強天位でも避けられない母ちゃんキックおそるべし。
後、このページの見所は、「はう・・・」となったイマラの可愛さですね。「痛いでスゥ~ッ」とママドア・ユーゾッタの口癖がジャコーに移っているあたりも、この二人の仲も続いているらしく気にかかるところですが、個人的には、三条の「香車のイヤリング」も素敵だと思います。すっかりナイスミドルになっているレオパルトの呟きもかわいいです。


三つ目の見開き

いきなり正装をしたヒューズレス・カーリーの登場。ミラージュレフトナンバー5番の彼女も、アマテラスのお供に来ているようです。この時代、裏メンバーであるはずのレフトの連中も、わりと表に出て活躍しているようです。コミックス九巻でも、ワックストラックスのマスターが最近見かけるミラージュの騎士の中に”スパーク”の名を挙げていました。知れ渡っているのは暗号名までみたいですが。
さて、このカーリーの着ている服、左前です。イマラが着ているのは同様のデザインながらほぼ左右対称の右前のもの。そしてレオパルトが着ているのは類似の意匠が凝らされた4つボタンのスーツ。おそらく、この三人でレオパルトを中心にして並ぶ事を考えてデザインされた服では・・・と思ったら、後で出てきたヌー・ソード・グラファイトも類似デザインの服を着ていたので、多分、この時代のミラージュナイトの制服なんですな、こりゃ。深読みしすぎました。ライトナンバー、つまり表ミラージュは右前、裏ミラージュは左前の制服なのでしょう。
錫華御前に呼ばれているということで、ジャコーは、カーリー、三条と共に部屋を出ます。おそらく、ジャコーがDr.ダイアモンドの新作MH、マイティシリーズのうちの一つの乗り手になるという件の話でしょう。途中、ドス(光剣)とヤッパ(実剣)の話が出てきますが、そうなるとチャカはMHってことになるのかも?冗談はさて置き、この見開きで最大のコマを使って花と点描をしょった美少女がいきなり登場します。セイレイ・コーラスです。コーラス・サードの長女君、コミックス二巻以来の登場です。ロンググローブにはしっかりサードの紋章が入っています。「くすくすっ!!」なんて笑うあたり、美少女キャラ好きのツボを押しまくりですが、タバコは吸うわ喧嘩は吹っかけるわの見事なヤンキーぶり。また見事です。ちなみに僕はショートカットの女の子に弱いという属性を持っているので、メロメロです。ファンクラブ作ろうかなあ。
セイレイはジャコーが強天位騎士であると聞いても怯みません。冗談と思ったのかもしれませんが、コーラス王家直系の第一子は強力な騎士であるとトビラに書いてあったので、彼女は本気で強天位騎士と立合える自信があったのかもしれません。
カーリーに本名を言い当てられて退散するあたりもヤンキー気取ったお嬢様っぽくてイイ感じですが、タバコのポイ捨てはいけないと思いました。
このページの背景をよく見ると、エープ騎士団、フィルモアの紋をマントに付けた人物、そしてクバルカンの騎士らしき人物も見えます。アマテラスが呼ばれるほどの会議ですから当然なのでしょうが、ハスハ、フィルモア、クバルカンの三大国からもかなりの重要人物が来ていると推測されます。あと、ラストの、片手でジャコーを止めているカーリーの技量も、見落としてはいけないトコロでしょう。


四つ目の見開き

三条の、セイレイのヤンキーぶりに思わず組にスカウトしたくなったという呟きが楽しいです。そしてカーリーは元・コーラスのトリオの騎士だった事がわかります。トリオといえば、コーラスのエリート騎士団です。カーリーはその将軍であったとも、何かで聞いた事があります。そのまま、コーラス王朝メロディ家の話、そして先月号に出てきたアルルの話になります。コーラス王朝最強の騎士、という話と、今号の表紙の情報を合わせれば、ほぼ、彼女の正体は判明したといえます。まあ、そのアルル様がこれからどんな活躍をするのかというのが、一番興味があるところに決まっているわけですけどね。
気を付けたいのは二コマ目の、やっと真面目な表情をしてくれたジャコーのバストアップです。まだ少年の面影の残った色男ですが、その胸元には、先先月号でカイエンの元に現れたフィルモア・ファイブそっくりな傷痕が見えます。クリスティン・Vとママドア・ユーゾッタ同様、彼ら二人も少年時代に、カイエンに叩きのめされ、そこで天位を受けたのでしょう。
ここでちょっと気になる事を。どうも、歴代の剣聖というのは、天位を配って歩く慣習のようなものがある気がするのです。
デイモス・ハイアラキは、カイエンはもちろん、アマテラスにも天位を与え、シャフトにもそれらしい事をしたみたいですし、コーラスセカンドにも剣技「ブレイクダウン・タイフォーン」を伝えています。セカンドはエストにもマスターと呼ばれたほどの騎士ですから、これまた天位を貰っていたかもしれません。その時代時代の強い騎士を見つけ出し、一定数以上の天位騎士を生み出す事で、彼らは何かの秩序を作っているような気がするのです。ひょっとしてジョーカー星団の国家間のパワーバランスというのは、個人レベルでの名君や天位騎士の配置などで変化するのではないでしょうか。僕らの世界の感覚でいえばおかしな話の気もしますが、MH一機の差が戦争の勝ち負けにもつながってしまうようなジョーカー星団の話ですから、あながち妄想とも言えないと思います。例えば、今号の表紙にも、コーラス・フォースが騎士として動かなかった事が、魔導大戦から始まるジョーカーの動乱を押さえる事が出来なかった理由である、なんてことも書いてありますし。
さて、閑話休題。ジャコーのセクハラ発言でオチが付いた後、場面はアマテラスの部屋に移ります。
イマラとレオパルトの前で、アマテラスは”エイリアス(別体)”を出そうとしています。分身や、剣聖剣技”ミラー”とも異なる、実体を持たない別の体を作り出すというアマテラスだけが使える特殊なダイバーパワーのようです。AKDの魔導組織ダイバーズ・パラ・ギルドの長メル・リンスや、東(あがり)の君といった別体をアマテラスは使うようです。東の君というのは、多分八月号でナトリウム・シング・桜子の前に現れた謎の人物の事だと思います。胸に「東」って書いてありましたし。
アマテラスが急がないといけないような出来事が起こっているという、舞台は再びフロートテンプルの主塔玉座へ。(「朱塔」玉座かも)


五つ目の見開き

人通りの多い中央ロビーのような所に、三つの影が現れます。その瞬間気が付いたのは、裏ミラージュのリーダー、グリース・サリオン。さすが「LED」(最強)の二つ名を持つ騎士です。矢継ぎ早に支持を出し、城全体にS級アラートを出します。表ミラージュ全員にまで戦闘体制を指示出来るという事は、アマテラス不在の時は、完全に王としての権限があるのでしょう。ひょっとしたら、もう成人していて「斑鳩大兄王子」の名を持っているのかもしれません。
そして、自分直下の裏ミラージュには個別に命令を出します。ミューリー・キンキー王女には玉座回廊の警備を、ベクター・オービットとメイザー・ブロースは自分と一緒に玉座へ。そして、スパークが不在である事に「ぬかった!!こんな時に!!」と悔恨の情を漏らします。ここから、サリオンがこれほど取り乱すくらい、今回はとてつもない非常事態なのだということと、前々号で慧茄が言っていた通り、スパークがそれほど強力な騎士なのだということがわかります。「カラミティの陛下はとうにお気づきだ」のセリフ通り、この前のページの段階でアマテラスは敵の侵入に気が付いてエイリアスを作りはじめているわけですが、それに気が付けるサリオンもさすがです。彼は騎士であると同時にダイバーパワーも持っているので、そういう事もわかるのでしょう。この時サリオンのまわりに集まっているメンバーをよく見ると、メル・ズームもいます。カイエンが対戦を嫌ったほどの力を持つ彼女は、次号以降で活躍してくれるかもしれません。
さて、左のページに入って、黒いフードを被った三つの影が実体化します。これが今回のエピソードのタイトル「ブラック・スリー」になっているわけですね。この時点でこの三人の正体を示すものは、何も無いかと思いきや、よく見ると三人が胸につけているのは以前登場したディス・ボスヤスフォートがつけていたのと同じ紋章。ということは、この三人はザ・マジャスティック・スタンドの最大の悪役、ボスヤスフォートの手の者なのでしょう。ついでに、三人のうちの右側の女性らしいシルエットの人物の足元を見ると、大変美しい足首が見えています。美しい足首といえば、ファティマ・エストです。ただし、いくらなんでも足首だけでその正体を見切る事は出来ませんから、彼女の正体は保留としておきます。たしか、ボスヤスフォート陣営にはビューティー・ペールという強力な女性ダイバーがいたはずですしね。
往年の忍者マンガのような表現で、二人の騎士が現場に走り込んで来るところで、次のページへ。


六つ目の見開き

やってきたのは、ミラージュナンバー7番メル・アトワイト・リイ・エックスと、16番ステートバルロ・カイダ。「リイ様こやつらっ!!」「おのれ何やつだ!!」時代がかったセリフもしっくり来るような大立ち回りのシーンですが、次の瞬間粉砕されてしまうリイ!
通常、騎士とダイバーが戦う場合、勝つのは100%騎士であると言われています。反応速度の差で、騎士がダイバーを押さえてしまえるからです。ところがこのシーン、リイに出来たのは太刀をとっさに構える事くらいだったようで、不意打ちのように粉砕されます。あえて名前を付けるなら「ディスインテグレート(分解)」とでも言えそうな、残酷な攻撃魔法を受けて、バラバラになってしまったリイと、それを見て驚くステートバルロ。リイやステートバルロにとって、想像の範囲外の攻撃だったのでしょう。
この事から、この黒い三人の中心にいるつるりぬるりとした人物の正体はおおよそ、想像がつきます。不可能なはずなのに、なんなく騎士を殺傷せしめるダイバー。やはり、ボスヤスフォート本人でしょう。
ステートバルロの制止の声と打ち込みに反応して、その太刀を「ギシ!!」っと受止めた黒い三人のうちの右の人物。そのフードが「ドッ」と落とされます。


七つ目の見開き(最終ページ)

それは黒騎士デコース・ワイズメルでした。改定前のコミックス一巻に描かれていた黒騎士の装束に身を包み、胸には三つ巴の黒騎士の紋章、袖に輝く「EST」の文字。ステートバルロの打ち込みを一太刀受けた次の瞬間には、背中を貫いて仕留めてしまいました。アンチヒーロー、デコースの恐ろしいまでの強さが発揮されます。
「どけっ!どけどけっ!!」っとそこに遅れてやってきたのはミラージュナンバー12番のウラッツエン・ジイと17番のヌー・ソード・グラファイト。仲間二人の死体を前に、事態が把握出来ないまま剣を構える二人。ゴーズ騎士団の剣指南役を勤めるグラファイトと、ヴーグラ騎士団の筆頭ダッグナート・ボア・ジイ天位騎士を兄に持つウラッツエンは、黒騎士デコースを相手にどう戦うのか、といったところで次号につづいてしまいました。


まとめ

先月号は、沢山の謎をほうり投げて読者を混乱の渦に巻き込むような話でしたが、今号は一転、ストーリーを急展開させて読者を引き込む話でした。まあ、どちらにせよ、来月が待ち遠しい事は変りません。
改めて見返してみると、つるりぬるりとしたボスヤスフォートらしき人物は、彼のエイリアスなのかも知れませんね。驚異的な黒い三人の実力と、それを押さえる裏ミラージュの力が拮抗したところに、颯爽と現れたスパークがボスやんの首級を上げて見せ、ところがそれはエイリアスでしかなかった、ということろでこのエピソードは終わるのではないでしょうか。エイリアスが使えるのはアマテラスだけのはずなのに、というわけで、ボスやんの強さがクローズアップされるわけです。とりあえず、FSSには伝統的に「後だしが勝つ」という法則がありますので、スパーク大活躍は揺るぎ無いところだと思います。・・・まてよ、そういえば、後の時代に登場するというベルベット・ワイズメルなる騎士は、その姓からデコースの血筋なのは間違い無いのですが、スパークの血筋にもその名が出てきています。ということは、この二人の間に何らかの関係が発生するのでしょうか?恋愛から強姦(うわ)までいろいろと想像はできますが、どうにも早く真実を知りたい部分であります。
さて、以前にもコミックス六巻でフロートテンプルが混乱の渦に巻き込まれたことがありましたが、あの時はラキシスが気張って、事無きを得る事ができました。ところが今回は、そのラキシスが冒頭で消えてしまっています。ラキシスが出ていって、神の力で簡単に片を付けさせるわけにはいかないのか、それともボスやんには神すらも殺す力があるために、その姿をスペクターが隠さざるを得なかったのかわかりませんが、今回のエピソードに収拾を付けるための一つの鍵が、すでに失われているわけです。この条件下では、ラキシスが殺される事はありませんから、まあ、スペクターのウルトラCが炸裂したという見方が一番当てはまる気がします。
黒い三人の侵入に、その瞬間に気がついたのがサリオン、少し前に気がついたのがアマテラス、そして、そのずうっと前に気がついて手を打っていたのがスペクター、というわけですね。

後、黒い三人のうちの最後の一人はやっぱりエストなんだろうなと思います。「黒い」と言ってるんですから、「黒き死の女神」とまで呼ばれる彼女でなきゃ嘘でしょう。しかし、エストはこの後のモナークセイクレッドの時代にはアマテラス陣営に所属するはずですから、そんな彼女が今回どんな殺戮をフロートテンプル内でしてしまうのかといった辺りが、FSSの今後に繋がる見方、でしょうか。
きっと、今回のエピソードが来月号か再来月号で終わったら、コミックス十巻のための休筆期間に入ってしまうんでしょうねえ。出来たらその前に、ウワサされているログナーのエピソードってやつを読みたいものですが・・・(今回、彼は何をしているんでしょう?)。

純粋な響きのカッコ良さ

FSSに登場する人々やファティマ達の身につける衣服や、幾多のMHや機動兵器、街や城の建造物に至るまで、全てのデザインは、作者の永野護氏自身が行っているそうです。
どのデザインを見ても、とにかく格好良いです。何かの模倣ではなく創造。引用はあっても、高度のアレンジが加えられています。
そのデザインセンスはキャラクタターの人格や歴史上の役割等をも含んだ「キャラクターデザイン」や、登場する全てのものの「名前」にまで及んでおり、作者の才能をこれでもかと読者に見せ付けます。
今回は、それらのありとあらゆる「デザイン群」の中でも、とりわけ僕の好きなMH、特にこれから注目のMHの、その名前をいくつか取り上げ、語ってみようと思います。

まずは、ハスハ共和国のATOLL(エイトール)の新規改良型・「ATOLLダンダグラーダ」。すでにATOLLには12種類の装甲パターンがあると発表されていますが、このダンダグラーダはそれらに属さない、新しいATOLLのようです。一説には宇宙戦用のMHであるとも言われていますが、現時点では、その開発にエンブリヨ隊のワンダン・ハレーのファティマ「ハルペル」が関わっていたということしか明らかになっておらず、登場が待たれるMHの一つです。なにせ、現在連載中のFSSのシリーズ、「ザ・マジャスティックスタンド(大君主の調律)」においての主役的な役割を果たす国家の新規MHなわけですから、作者も気合が入っているはずで、半端なデザインではありますまい。

続いて、皇帝レーダー8世が退位したばかりのフィルモア帝国。フィルモアといえば、ジョーカー中の泣く子も黙る「一つ目のサイレン」で有名な軍事大国でありますが、そのサイレンを指揮するための王用MH、プロミネンスが気にかかります。もちろん、フィルモアの王用MHならば、ハイランダー(フィルモアの国家全権代理騎士)に就任したクリスティン・Vがレーダー王より預かっている「V・サイレン(別名:ネプチューン)」が有名ですが、レーダー王家とは別のもう一つの王族、フィルモア王家専用のMHとして、この機体があるのだそうです。プロミネンスを駆るヘッドライナーは、どうやら次のフィルモア皇帝に即位するらしき、フィルモア・ファイブ。ジャコー(ミラージュ騎士イマラの息子で、ジョルジュ・スパンタウゼンからイオタ宇宙騎士団を、剣聖カイエンからシルバーナイトの称号を譲り受けた、後に強天位を取る熱血騎士)とも旧知の仲らしい彼は、「ザ・マジャスティックスタンド」の最中、動乱のハスハに武力介入をするらしいのですが、そこにクリスティン・Vやバキン・ラカン帝国の天位騎士アマドア・ユーゾッタらとからんで、どのような活躍をしてくれるのか、そのMHのデザイン同様、目が離せないのであります。
特に、フィルモアではMHの重装甲化が進んでおり、ちらりとだけ連載に登場した、試験運転中のアルカナ・サイレン(皇帝警護用MH)がとんでもない厚さの装甲を羽織っていただけに、プロミネンスもそういった戦車的カッコ良さを前面に押し出したデザインなのでは、と予想しております。

「ザ・マジャスティックスタンド」での悪役は、大魔道師ディス・ボスヤスフォートと三代目黒騎士デコース・ワイズメル率いるバッハトマ魔法帝国のバッハトマ黒騎士団、クラーケンベール・メヨーヨが大僧帝に即位したメヨーヨ四奉開経連合朝のメヨーヨ108金剛遊撃騎士団、AKDから盗み出したデータを元に新型MHを作ったコーネラ帝国のスケーヤ騎士団、アイオ・レーン天位騎士を擁するジャスタカーク帝国のジャスタ宮殿騎士団、さらには幾多の傭兵国家等が名を連ねます。そして、それぞれの騎士団の所有する主なMHは、バッハトマが重装甲版のMHバッシュ・ザ・ブラックナイト、MHアウェイケン、MHバルブガット、メヨーヨはMH姫沁金剛(きしんこんこう)、MHアシュラテンプルDD、スケーヤが傑作MHカン、ジャスタがMHグルーン、MHエルダグライン、MHシャクター、などなどなのでありますが、なんでもアシュラテンプルDDというのは、すでに四巻で登場しているアシュラテンプルとはまったく異なるデザインなんだそうで、そうなると重装甲版バッシュ以外は、すべて新登場、新デザインのMHということになります。悪役側だけですでにこれだけの数のMHが出演予定・・・・・・いったいどれほど大規模な戦争が描かれることか・・・。

さて、「ザ・マジャスティックスタンド」終了後には、いよいよ年表に記されているAKDによる星団大侵攻「モナークセイクレッド」が始まるわけですが、その時代になると、また多くのMHの存在とそのデザインが明らかになることでしょう。今のところ、僕はこの時代の情報をほとんど持っていないため、ただただ期待に胸を膨らませるばかりです。しかしながら、この時代以降に登場するという噂のMHの名前は、いくつか聞き及んでいますので、それを挙げていきましょう。

人気の高いトリオ・コーラス王朝は、ベルリンMK=2・ドラクロアと、4100年に登場するジュノーン・オクターブ(別名:ユニコーン)。ドラクロアは、最近連載の方に登場したドクター・ダイアモンドの設計したMHだそうです。ジュノーン・オクターブの方は、二つのファティマルームを持つMHであるといわれ、コーラス6世が乗り込んで、その時代悪の巣窟と化しているAKDを打ち倒します。

ミラージュマシンでも、いまだ未公開のMHはいくつかありますが、その中でも、古い年表に「とても美しいMHである」とだけ記されているゴウト・ミラージュと、7777年、惑星フォーチュン上で完成すると言われているLED・ミラージュ2あたりは、生半可なデザインや設定では無いことが容易に想像出来ます。


今回の資料はほとんどがコミックスに頼ったもので、トイズプレス社のFSS公式副読本、「クロニクル」や「キャラクターズ」を引用すれば、いくつかのMHはそのデザインが公開されているでしょうし、それに倍する数の未公開MHの名前も見付かることでしょう。それにしても驚きなのは、これら無数のMHのデザインのほとんどを、作者はすでに10年前に終わらせているらしいということです。全体のストーリーラインも、FSSマスターシナリオという原作小説のようなものが連載開始時には出来上がっていたんだそうで、とにかくこの作者は、確信犯的に物語を進めています。
この、「手のひらの上で踊る」感覚を突破するためには、作者の想像の上を行くしかありません。そういう意図を持って、今回はとにかくデザインが未登場のMHばかりを取り上げてみました。デザインの予想であの作者を上回るのはとても難しいことですが、名前や設定に関してならば、ここでこうして一度整理しておいたことで、いつか、何かはっと気がつけることがあるかもしれません。最近連載上で明らかになったファティマ「エスト」とMHバッシュの真実に関する伏線は、10年前に刊行されたコミックスの二巻から張られたものでしたが、いっぱしのFSSファンとしましては、これから作者が仕掛けようとしている(あるいはもう仕掛けられている)幾多の伏線のうち、いくつかにでも反応しておきたいものです。

※はなはだ頼りないですが、今回の内容に、てなしもの調べ間違いや思い違いなどによるミスがあるかもしれません。そういうものに気が付かれた方がいらっしゃいましたら、どうか会議室か、メールにてご一報をよろしくお願いします。事実確認のうえ、迅速に訂正いたします。

F.S.S.は果てしなく面白い

「ファイブスター物語」(以下FSS)は、SFロボットマンガです。

このマンガの一番素晴らしいところは、現在まだ月刊ニュータイプ誌上でばりばり連載されていることです。
これだけスケールが大きく、細部まで考え抜かれた設定、古今東西の名作と比べてもなんら見劣りしないエピソード群、魅力的なたくさんのキャラクター、抜群のデザインセンス(作者はデザイナーでもある)に裏打ちされたロボットや登場人物たちの衣装、などなどが詰まった作品が、現在進行形で読めてしまうという幸福。
今、この時代に日本に生んでくれたことを両親に感謝してしまいます。
多くの優れた要素は作品内で混ざり合い、物語のグレードを引き上げます。「シュミの悪いMH(モーターヘッド。FSSに登場する戦闘用ロボットの名前)」と悪口を言われるシーンには趣味の悪いものが、「なんと美しいMHだ」と溜息をつくシーンには、美しいMHがちゃんと出てきて、読者はマンガのキャラクターと思いを共にすることが出来ます。
それは、キャラクターのつけているアクセサリーや服のブランドの設定から、MHの駆動パーツのそれぞれの機能や発する音に関する設定、国家群の成り立ち、舞台になる街の民俗、風俗、意識、モラル、流行、美意識、価値観に至るまでしっかりと用意され、しかもそれは華やかに活躍する「騎士」や「ファティマ」達の表の物語によりリアリティーを出すためにしか使われないという徹底ぶりと繋がって、ただひたすら僕らに良質のエンタテインメントを与えてくれます。
あえて言うならば、FSSは「過剰」なのです。コミックの一コマ一コマに情報が満ち溢れ、ケレン味たっぷりのアクションや、身を切るような片思いや、燃え上がる怒りの炎のストーリーなどを繊細な編み物のように紡ぎだします。

コミックス第一巻を開くと、まずはフルカラーの登場キャラクター紹介、そして細い線でびっしりと書き込まれたMHの紹介があります。
そこには、それぞれの説明というには余りにも不確かな、未来への予言めいた紹介文が丁寧につけられていて、このマンガが単なるアクションマンガではなく、壮大な大河物語であることを、まず読者に感じさせます。
物語の始まりは、嵐の吹き荒れる中、岩山にへばりつくように建っている山小屋の中での、少年と老人の会話です。
山の向こうから聞こえてくる金属音について、少年は老人にたずねます。「あれはMHの音だよ」「もう2週間も前に戦争は終わったんでしょ?」「目の前の敵を倒すまで、騎士の戦いは終わらないのさ」そして飛来する、巨大なMHの盾。老人が語っていたのは、御伽噺ではなく、現実でした。

シーンは山の向こう、巨大な2つのかげ。繊細なラインを持った白いMHが無骨な黒いMHと大胆な構図でにらみ合っています。剣技が飛び交い、戦いの中で騎士をサポートしている「ファティマ」の存在が説明されます。巨大な戦闘力を持ったMHを、騎士とともにコントロールする少女型生体コンピューター。戦いはいつしか終わり、勝った騎士と負けた騎士の誇り高い対面、そして人間と何一つ変らぬ感情を見せるお互いのファティマの対比が描かれます。
この戦いの終了は、ある長い戦争の終結でもありました。
やっと登場した白く長い髪を持つ主人公らしき青年が、この戦争で彼が失った多くの大切な人々の名前をつぶやきます。そして、モノローグでこのエピソードはFSSのエンド・エピソードであることが語られ、物語は、それ以前の時代、多くのヒーロー、ヒロインが輝いていた時代を語りはじめるのです。

このあと第一巻で語られているのは、ある少女の恋が成就するとてもHAPPYな物語です。
ただ、その少女は最強の力を持つファティマで、恋の相手は何やらいわくありげな最高の腕を持つMH整備士。「ファティマは騎士でない者に嫁いではならない」という法律のあるこの世界では、禁断の恋である上に、性能の良いファティマはMH同様最高の軍事兵器としても扱われるわけで、FSSの舞台であるジョーカー星団中で話題になるような、大逃走劇が繰り広げられます。
しかし、その逃走劇も幕引きは一瞬。我々の住む地球よりも数段科学の進んでいるジョーカー星団での最強兵器、MHが登場して一気に話を終わらせてくれます。
ここがまたこの作品の独特な部分で、FSSの中で、MHの持つ圧倒的な戦闘能力は、戦争だけでなく、そのストーリーをも一瞬で終わらせる力を持っているのです。作品内だけではなく、作品の流れに対してもMHは斧をふるうのです。こういった「メタ」の視点が、より一層このマンガを楽しむためのカギになっています。

「難しい」とこの作品がよく言われてしまうのは、その世界観がとても綿密に構成されているからです。MHがあって、ファティマがいて、超人的な能力を持った騎士がいるこの世界は、読みながら学ばねばならないことは多いですが、その空気が掴めてきた時の見返りもたっぷりあります。
ストーリーは、決して難しかったり堅苦しかったりするものではありません。アレンジは効いていても、常に物語の王道を周到しています。
もうじき第一巻は英語訳されるそうですが、せっかく日本語が使えて、現在出ている9巻までに加えて現在進行中の連載まで読めるのですから、この幸運を甘受しようではありませんか。

次回以降の更新では、この果てしなく面白いマンガを生み出している永野護という天才についての話を中心に進めていきたいと思います。