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読み解け今月のFSS9月号 (01年8月21日)

 九月号発売から約二週間、ようやっと今月の「読み解け」に辿りつきました。
 FSSという作品の最大の属性はやはり「ロボットマンガ」であるということを教えてくれた今回の内容、さっそく見ていきましょう。


表紙

 少年のような面差しの女性のモノクロイラストです。
 直感ですが、先月号で手首だけ登場した女性騎士ナイアス・ブリュンヒルダかと思います。違うとしても、ぱっと見ジャコーやユーゾッタ、クリスティン、ダイ・グ、ズームらと同じ100歳(地球年齢で二十歳)前後のキャラクターのようですから、これから彼と彼女らの紡ぐメインストーリーに絡む人物なのではないかと推測されます。
 それにしても、これくらい足首の美しい女性が、現実のどこかに居ないものでしょうか。


最初のシーン:ワックストラックス店内にて

 今回は、一ページ、一コマごとに丁寧に見ていくのではなく、物語の流れに即したシーンごとの読み解きで行きたいと思います。これだけ遅くなっちゃったんですから、いつものように、スピード+細かさを売りにする必要はないですよね。

 戦争の中継を見て盛り上がる血気盛んな騎士達を、アイシャとジョルジュが横目で眺めています。
 騎士達は、重楷や斧で武装したAトールを実剣で次々と捌く黒騎士のデコースに感嘆の声を上げていますが、アイシャやジョルジュから見れば、スピードに勝る実剣の方が的確に敵MHの急所を大きな貫通力で攻撃できるのですから、デコースのやっていることのほうが当然なわけです。
 二人の後ろにはジャコーと三条香が無言で控えています。元々、ワックストラックスのマスター、ジョルジュ・スパンタウゼンはジャコーが現団長を務めるイオタ宇宙騎士団の騎士なのですから、この繋がりも当然です。
 ジョルジュが店を閉めてまでついてくるかは解りませんが、この後、アイシャとジャコー達が行動をともにする可能性は高いと思われます。ジャコーもアイシャもミラージュ騎士で、ミラージュの所属するAKDは表向きこのハスハ動乱を静観することになっていますが、実際にはこのように個人レベルで多くのミラージュがハスハ入りするようです。

 ところで、六コマ目のアイシャの背景で基本的なマンガの表現技法であるところの「カケアミ」が使われております。中学時代にひたすらこれをやった経験のあるてなしもは、なんだか懐かしかったです。
 こういった技法で表現される、終盤の、晴れ渡った大空の元で軍事国家同士の主力軍団があいまみえるシーンと、この暗い地下の酒場のシーンの明度の対比が面白いです。


二つ目のシーン:アララギ・ハイトの脱走

 顔はカイエンに似ているものの、騎士としての能力はてんで低く、おまけに性格も悪そうな騎士警察アララギ・ハイトが、ハスハで起こっている大乱戦のニュースを聞いて、戦に乗じて一旗上げてやろうと職務を放棄して脱走します。
 単騎で大国の騎士団を相手に大暴れするデコースのニュースは、こんなふうに星団中のあちこちで、野心ある若者達に火をつけてしまっているのです。
 このハイト、このあと意外な活躍をするらしいので要注意です。


三つ目のシーン:バキン・ラカン帝国の参戦

 ところを夜のバキン・ラカン帝国に移して、展開されているのはハスハの危機を救うべく騎士団を派遣したいと申し出る騎士団長ママドア・ユーゾッタと中立を守ろうとする若き聖帝ラ・シーラの押し問答です。
 何かにつけてまだ未熟であるとまわりの人から評価されてしまうラ・シーラは、今回も母親の前聖帝ミマスの助言を丸のみする形でユーゾッタの出陣を許してしまいます。なんだか頼りないぞ聖帝。
 騎士の登録と任命を司る、ある意味で星団でも最も権威のあるお人なのですから、おそらくはこの後、成長を重ねていって立派な人物になるのだとは思いますが、現時点では立場に振りまわされる子供そのもののように感じられます。がんばれラ・シーラ。


今回の最終シーン:大平原に展開するメヨーヨ朝廷軍と、フィルモア精鋭軍の対峙

 さて、今回の目玉シーンです。
 まず紙面に登場したのは、なんだか凄いことになっちゃってるクラーケンベール・メヨーヨ大帝です。コミックス六巻でファティマ専用の超高級売春宿の迷惑客などをしていた彼ですが、美少年顔はそのままに、髪は当時以上に半刈り、戦の興奮がおさまらないのか目蓋から額にかけてのイレズミはまだくっきりと浮かび上がっていて、オマケに鼻の下には細い二本のドジョウひげです。
 狂気を孕んだ武人の性とこのカブキっぷり、日本の戦国時代の雄である織田信長を連想させます。
 その戦闘力はさすがに確かなもので、ナカカラ王国国境の防衛騎士団を苦も無く粉砕した様子です。MHから降りてこれからの戦略を、指南役と思われるパイドル卿と相談しています。このパイドル卿というのは、やはり初代黒騎士ツーリ・パイドルの血筋の者なのでしょう。二人の背後には、メヨーヨ朝廷が正式採用したというドラゴントゥース抜きのMH新型アシュラテンプルと、そのスペシャル版にしてクラーケンベールの専用機、ブランベルジュテンプルことMH姫沁金剛。
 なんだかものすごくあてずっぽうな作戦を立てて、クラーケンベールは進軍を指示します。これが許されるだけの実力をこのメヨーヨ朝廷軍が持ち、また、そういう指示がゆるされるくらいにクラーケンベールは兵達から支持されているということがわかります。
 と、そこの前方に「超ド級エネルギーフィールド」が発生します。
 大軍団のテレポート・アウトです。
 発せられるエネルギー波を集めて、敵の割り出しを行うクラーケンベールのファティマ・アンドロメーダが、あることに気が付いて絶句します。敵は、わざわざテレポートの母船から星団識別信号を発信してきたのです。
 思わずクラーケンベールが「相当でかいぞ!!」と声を荒げます。「来た! どこだ!!」
 アンドロメーダが叫びます。
「フィルモア帝国ですっ!!」
 テレポート・アウトの光の中に、細く、昆虫めいた、殺傷力のカタマリのようなシルエットが浮かび上がります。

 右肩に、その歌声で船乗り達に死を呼ぶ海の魔物サイレンの図案が大きく描かれ、全身の各部には、レーダー王家の紋章であるウォータークラウンが刻印されています。
 轟音と共に右足を前に踏み出し、姿勢は低く、右手の黒い長剣は横に伸ばされ、左手の盾と一体化した短剣は、これも前に向かって斜め下に突き出されています。
 正視することもままならぬ光の中から歩み出してきた、これがフィルモア帝国最強MH、Vサイレン103・ネプチューンです。

 その後ろには、長大なポールに大きくフィルモアの紋の刻まれた旗をなびかせる、重MHアルカナサイレンのハートとダイヤが従い、そのさらに後方には、ざっと数えても40騎近い、重装甲のサイレンD型が長大なランスを天に向けて陣形を築いています。

 この大迫力の軍勢に、さしものクラーケンベールも「フィルモア帝国とは……」と冷や汗を垂らします。続けて「これは願ってもない……」と来るところが、さすが大帝と申せましょうか。
 パイドル卿も、まさか皇帝騎Vサイレンがいきなり前線に投入されるとは思っていなかったようで、かなり慌てています。
 皇帝騎Vサイレンは、103ネプチューンと104プロミネンスの二騎があり、そのどちらかにフィルモア皇帝が、そしてもう一方には皇帝と同権力をを持つ皇帝代理騎士ハイランダーが騎乗しています。

 美しいブロンドを獅子のたてがみのように広げた美女、クリスティン・Vが、クラーケンベール・メヨーヨ大帝に対して、ハイランダーとして宣戦を布告します。
「引かぬ場合はフィルモア騎士団がお相手いたす!」
 この時点で、フィルモアがこのハスハ動乱においてどこまで自国の野心を満たそうとしているかは解りませんが、とりあえずこの場面では、フィルモアはハスハの味方となりました。
 サイレンのコクピットから立ち上がり、見栄を切る下着姿のクリスティンの勇ましさよ。
 このまま行くなら、クリスティンとユーゾッタも同じ陣営に所属することになりますから、二人のファンとしてはほっと一安心です。

まとめ

 今回の内容は、もう「ネプチューンの登場シーンの格好良さ」これに尽きるでしょう。
 ロボットはやはり、止め絵で見栄を切ってナンボです。今月号を見てしまうと、ぐっと構えて相手を睨みつける姿勢で心を震わせてくれないようなロボットには、お金を払う気にはなりません!

 手短ですが今月はこれにて。
 すぐに十月号の読み解けでお会いしましょう。

祝・剣聖スキーンズ再登場(一コマのみ)

 今更繰り返すのもなんですが、本当にFSSというマンガは面白いと思います。
 今月もそれを再確認させてくれた内容の読み解きに、さっそく参りましょう。
 ちなみに、本来ならばこの「読み解け」はWeb上で最速のFSS感想文を目指すというコンセプトなのですが、今月号に関しましては、あるやむを得ない事情があってこうして数日遅れになってしまったことを、ご報告申し上げます。
 近所でバーチャファイター最新作のロケーションテストが始まってしまったんですもん。
 所持金がすっからかんになっていなかったら、今日もこの更新してなかったと思います。


表紙

 今や本編以上の大人気と言われる「がんばれESTちゃん」第三回が堂々の掲載です。いつのまにか専用のロゴも出来ております。
 エスト、アイシャ、そして作者のPSOのキャラクターであるS.I.Lの三人で、どつき漫才をしながら作者の近況を報告してますが、今回の内容は、やはりここで告知されている「FSSロビー」に積極的に参加させていただいている僕としては楽しいことこの上ないものです。
 この場を借りて僕からも、どうぞ興味のある方は、04シップ-08ブロック-08ロビー、通称「FSSロビー」に気楽に遊びに来てくださいと、宣伝させていただきます。
 特に、「はじめてDCを買いました」「はじめてオンラインに繋ぎました」という方には最適のロビーだと思いますよ。

 と、PSOの話題は止まらなくなってしまうのでここまでにしまして、中身の方へ移ります。しかし、右下のコマの永野先生の描いた「キャス子」は貴重だなあ。


最初の見開き

 ページを開いて最初に目に飛び込んできたのは、左側のページの大ゴマで美しい女性の肩を抱く美丈夫でした。僕は思わず万歳三唱。
 すみません、またまたPSOの話題になってしまうんですが、このゲームで僕がメインで使っているキャラクターの名前は、こちらの超帝国の剣聖からいただいておりまして、「SKINS=Tena」と名乗っています。以前から「スキーンズが連載に再登場しないものかなあ」と祈っていたものですから、念願かなって嬉しさのあまり小躍りしたのでした。

 さてさて、もういい加減脱線は止めにしまして、この見開きを読んでいきます。
 ここで語られているのは、カイエンは子供を作ることが事実上不可能だったという事についてです。
 カイエンの両親はどちらも超帝国の純血の騎士であり、父はその中でも最強の騎士アサラム・スキーンズで、母も黒騎士団団長にしてドラゴン達と超帝国との歴史的和解の橋渡し役をしてのけた伝説のヤーン・バッシュ王女です。そんなあまりに強力な両親の染色体を受け継いだものですから、カイエンの染色体もまた非常に強力であり、普通の卵子ではカイエンの精子を受精した段階で破壊されてしまうか、母体が拒絶反応を起こして体外に排出されてしまいます。
 ところが、マグダルとデプレは無事に誕生しています。二人は、無事にこの世に産まれ出るため、その力を抑えて普通の胎児として成長したのでした。二人は母の胎内にいるうちから、お互いを励ましあって、支えあって生きてきたわけです。
 そうして、普通の双子として誕生するはずだった二人が、しかし、生まれた瞬間に超帝国の血が解放された、強力な騎士とダイバーの素質を持つ双子になったのだと、コンコードの残したヤーボの体の記録を調べたミースが語ります。

 この部分、ちょっと考えてみます。
 普通の子供として産まれるはずだったマグダルとデプレが、ミースにもわからない理由で、そんじょそこらの騎士やダイバーどころではなく、超帝国の血に目覚めた特別な人間になってしまいました。
 ミースの医師としての能力は、Drバランシェの後を継げるほどの超絶的なものであることはすでに語られています。そのミースにすら判らないのですから、これはすでに、人知を超えた何らかの力の干渉の行われた出来事と考えるのが自然です。
 おそらくは、後に星団中へ災厄の種を蒔くボスヤスフォートと戦い、これを制するために二人の力は解放されたのでしょう。ボスヤスフォートの覇道を、抑えたい立場の人物といえば、はたして誰であるか。で、考えてみますと、二人の両親であるヤーボとカイエンの出会いの遠まわしの原因に、コミックス三巻ラストでのムグミカ王女の言動があります。ここで暇を出されたヤーボがカステポーへ行き、顔なじみだったらしいカイエンと再会して、深い中になっちゃうわけです。
 ということは、あの時ヤーボにカステポー行きを薦めたムグミカの言動は、すべてアトールの神女としての計算に則ってのものだった……
 いえいえ、この考えは少々無粋に過ぎるというものです。
 確かに、アトールの神女たるムグミカ王女の進言が無ければ、ヤーボはハスハで謹慎を受けたままそれからしばらくを過ごし、今回の動乱にも一騎士(もしくは騎士団長)として参加、そしてただ討ち死に、なんてことになっていたかもしれません。
 しかしながら、ムグミカからヤーボに与えられた使命は、一生を塔の中で、籠の鳥のように過す王女に代わって、その目となり、その心を持って世界を検分し、見たもの、出会った人々のことを王女に伝えるというものでした。
 同じ女として、世界を見てきて欲しい。これは、アトールの神女ではなく、ムグミカ・ラオ・コレットという女性の、心からの願いだったのだと思います。だからこそ、その言葉に心を打たれたカイエンは、珍しく自分からヤーボに身の上話をすることになり、その話の中に登場するミースとヤーボの間にも縁が生まれ、それはやがてミースがハスハに協力するようになったのとも無関係とは言えないでしょう。そしてそれは、カイエン自身のハスハ入りの時の言葉である「ヤーボのかわりに腕となり目となろう…」に繋がっていきます。
 これほど多くの登場人物の、こんな細かな心情の機微まで、遥か太古の皇帝なんぞの計算づくであってたまるものですか。これは逆に、いかなる形であれ、この時代に、ボスヤスフォートと戦うことのできる能力を持った何者かが必要とされることだけが予想されていて、たまたま、カイエンとヤーボの間の子供にその白羽の矢が立ったと考えたほうが良いのではないかと思います。
 ものすごい潜在能力を持った二人が、たまたま双子だったおかげでお互いを支えあうことが出来て、たまたま無事に産まれることが出来た。そこに、両親の遺伝とは別の要素で、とてつもない力を発現させられた。マグダルとデプレに秘められた力の秘密とは、こういうことなのではないかと、僕はここで推論しておきます。
 マグダルとデプレを中心に据えた話というのは、本格的に語られるのはまだ少し先になりそうですから、この推論が良い所を突いているのか、全くの見当はずれなのか、定かになるまでしばらく楽しみに待ちたいと思います。

 さて、引き続きカイエン自身の話です。
 ここで、もう一つの純血の騎士の血統であるスバースの事が出来てます。スバースの血族というのはたくさん居て、慧茄、ディモス・ハイアラキ、ピックング・ハリス(スパーク)、マロリー・マイスナーなどなど、強力な騎士が名を連ねます。
 このようにスバースが星団に血を残せたのは、リチウム・バランス博士と、その時代のアトールの神子によって、血の力を弱められたからだそうです。しかし、カイエンは血の力も弱められていない上に、そもそもその血は超帝国でも最も強力な血統のものだったりしたわけですから、自然に子供ができないのは当然、といえるほどだったわけです。試しに調べてみましたが、この「スバースの血の力を弱めたアトールの神子」が誰なのかは特定できませんでした。名前がわかっている範囲では、五代前のアトールの神子であるエダクダか、年代的にはさらにその前の人物あたりがそうであるように思えます。
(ところで、これは全く本筋から離れる話ですが、僕がこの文中で使っている「神子」という言葉は、コミックスでの表記に準拠しています。今月号での表記は「巫女」になっています。)

 う。まだ右側の一ページ目だったんですね。やっと左のページに突入します。
 背景にうっすらと、おそらくジェットドラゴンと思われる巨大な存在のシルエットが浮かぶ大ゴマで、我が子を見守る母のような優しい眼差しのヤーン・バッシュ王女と、その王女を見詰めて肩に手を置いている剣聖アサラム・スキーンズです。
 ここで、カイエンの本当の名前が明らかにされています。一万年以上も昔に、炎の女皇帝が「カイエン・バッシュ・カステポー」の名を、ヤーン王女とスキーンズの子供に贈っていたのでした。
 ここで一つ定かになったのは、「カイエン」の名の由来です。現時点ではハスハのアルルが所有し、のちにマキシの手に渡って別次元にてその威力が発揮される謎の大太刀「懐園剣」のそもそもの持ち主はスキーンズであったといいますから、おそらく、その大太刀の伝承者という意味で、子供にカイエンという名前が与えられたのでしょう。AD世紀から伝わる大太刀の名前と現代の剣聖の名前が一致する謎が、これで解けました。スキーンズはどうやってこれを手に入れたのかという謎がまだありますけど。
 また、カイエンに「バッシュ」の名前が与えられていたというのは、ちょうど今、カイエンの居るハスハ王宮へデコースの駆るMHバッシュが襲いかかっているということで、歴史の皮肉を感じます。

 さて、ここでまた少し、わき道に反れます。これまた余計な思考実験です。
 剣聖スキーンズは身の丈2.5mだそうです。人間の骨格と、それを構成する主な物質であるカルシウムの性質を考えると、人間型の生き物は身長3mになった時点で腰からポキリと折れてしまうそうです。2.5mでも、ちょっとあぶないかも?
 そして、騎士といえども、当然、普通の体をした人間の親から産まれる者がほとんどなわけですから、その肉体を構成する物質も僕らと大差あるはずはありません。多少大食いだとしても、騎士は僕らと同じ物を食べてるわけですし。
 しかしながら、現在地球上で行われている主なスポーツの中でも最も運動量が激しいと言われるバスケットボールの、その最高峰NBAの一流選手の中には、均整の取れた2.3mほどの巨体をブンブン振りまわして信じられないほどの高さに飛びあがったり、フェイントをかけながらコートを走り回ったりしている人達が、何人もいます。
 この2.5mという数字は、MHの関節部分の構造一つにも嘘を吐かない作者の、リアリストな部分の現れのように思います。
 遺伝子改造や薬品の投与等の処置が取られるわけですから、僕らの知っている常識に当てはめる必要は本来は無いわけですが、そういう処置が行われた上での、2.5mという身長は、大きくて強くて動きの速い人間の、極限の数字として直感的に正しいなあと、僕は思いました。
 何度も、何度も繰り返し述べられているように、騎士も人間です。その超人的な肉体も、極限の部分では、人間という檻に閉じ込められているのではないかと僕は受け止めています。
 身体性の限界も、人間らしい心も、彼らは備えていて、だからこそ、まだ受精卵の状態でしかない我が子に、尊敬する皇帝から名前をいただき、それを地上に残して旅立たねばならなかったとき、王女は涙しています。コミックス9巻の185pです。

 戦争は国家の一大事ですが、出生の秘密もまた個人の一大事です。戦の轟音と石礫の飛び交う中、二人の会話は続きます。


二つ目の見開き

 最初の見開きの最後のコマから話題を引き継ぎますが、カイエンの体の秘密に関する驚くべきミースの発言です。
 抗体、超帝国のDNA、ループしたDNA、胸腺と、人間の生命活動の根底にかかわる部分からの、カイエンの特徴があかされます。しかし、これらの難しい用語を一つ一つ考察していく必要はありません。ミースがわかりやすくまとめてくれます。

「それはファティマの能力!」

 ジョーカーの人々の寿命は300年程度であるはずなのに、カイエンはすでにそれを遥かに越える年数を生きています。カイエンの強力な受精卵を宿し、いわゆる「代理母」として健康にカイエンを産み落としたファティマ・クーンから、カイエンは様々な老化現象を抑えるファティマの特質を受け継いでいたのでした。
 コミックスの6巻、星団歴2992年の時点で、カイエンはラキシスに、自分の母親はクーンで、そして「ついにボクの父はわからずだったヨ」と告げています。確証はありませんが、ひょっとしてカイエンは今この時、はじめて自分の父と母の名を知ったのではないでしょうか。さしものカイエンも、ぽつぽつとしか返事を返せません。一方ミースは、カイエンに、カイエンがどうやってこの世に生を受けたのかを説明し終えてから、自分も、カイエンの子を産むために、同じ方法を取ったと言い、それから涙を零し、声を荒げます。
 好きだから、あなたのことしか考えていないから、誰よりもよく、あなたのことを知っていたかった。
 カイエンの精子を受け止めるために、まずミースは自分の卵巣に「MAXIMUM」のプログラムが埋め込まれた卵を産むための特別な処置を施しました。そして、アウクソーの体にその卵巣を移植して、冷凍保存されていたカイエンの精子を受精させます。
 真っ黒なシルエットに、虚ろな瞳だけが浮かぶ、そら恐ろしげなミースがこう呟きます。

「その状態で 卵は10年間も 寝かされていたのよ……」
「なぜって? 私の体がね… なじむために…」


三つ目の見開き

「そうよ…… 私の子宮はファティマ型のものに取り替えてあるの でないと この子が成長できないから」

 ミースがハスハ入りしたのは20年前の星団暦3010年です。はじめの10年は、おそらくカイエンという騎士の解析に費やされ、そして10年目にアウクソーへの細工によってカイエンの受精卵を入手し、それから自分の体内にファティマの子宮を移植して、それが体になじむまでさらに10年間。
 そこに受精卵を移植して、今、ミースの胎内にはカイエンの子がいます。
 自らの体と下腹部を抱くミースの後ろには、若き日のDrバランシェが影の様に立ち、己の狂気の後継者を頼もしげに見下ろしています。Drバランシェの最後の狂気、46体目の作品「MAXIMUM」はここに息づいているのです。

「星団史で初めて産まれる シバレースが 今、ここにいるわ……」

 この発言を読んでやっと気が付いたんですが、「シバレース」という言葉は騎士の尊称として使われる言葉なんですね。ジョーカー星団では、ファティマのみならず、騎士もまた尊敬されるだけでなく、差別の対象になることが多いようです。そんな中で、クリスティンやミラージュの騎士達のように、大きな運命までを背負ってなお騎士として戦う人々に、敬意を込めて「シバレース」という呼びかけが使われるのだと思います。って、これに気がついてなかったのは僕だけでしょうか。今まで、いろいろなところで、いろいろな人が、騎士のことをシバレースと呼ぶのを見て、なんだろうなあと気にかかってはいたんですが、あんまりよく考えたことがありませんでした。

 さて、そんなミースを見て、うつむいたままにカイエンは、ミースの狂気を言葉で指摘しつづけます。ミースは「いいの!」と逆上し、命を救った者は、救われた者に対してその後の人生に責任が発生するという内容の言葉を、ぽろぽろ涙を零しながら叫びます。あの日、レジスタンスの村で撃たれて死んでいたはずの少女を、助けたのはあなたなのだから、と。
 その発言を受けて、カイエンが光剣を抜きます。
 光剣であるにもかかわらず、片刃で、反身が付いているように見える、これはコミックス4巻の口絵の、カイエンがFSSにイラストとして初登場したときに下げていたあの黒い光剣ではありませんか。
 ミースはとっくに覚悟を決めているようです。瞳を開ききったまま、もう、最後まで言葉を紡いでしまいます。
 自分は心からカイエンのことを愛しているつもりだった。だから、その子供を欲しいと思った。しかし……


四つ目の見開き

 本当は、研究者として、超生命体を生み出す研究を完成させたくてこんなことをしてしまったのかも知れない。
 そのうち、それがわからなくなってしまった。
 もうミースは、何も隠していません。今までこれほどに叫んできたカイエンへの思いさえも、己の研究を正当化するための自分への偽りだったのかもしれない、という告白です。人の命を弄んでいるのは、自分かもしれないと、まさしく自分が殺されることさえも肯定した呟きのように思えます。

 そこへ、王宮の目の前のMH戦で弾かれた、敵MHの壁のように巨大な手斧がうなりをあげて飛んできました。
 それを片手の光剣一振りで真っ二つにし、ミースを守るカイエン!
 抜かれた光剣は、やはりミースを守るためのものだったのです。
 そんなふうに、事も無げにカイエンが見せた超剣技に、ミースの胎内のマキシが微かに反応しています。のちの剣聖マキシがはじめて知覚した外部情報は、この父親の剣技だったのかもしれません。
 カイエンは、どこまでもカイエンで、あの時レジスタンスの村でミースやアトロポスを救ったように、今回も変わらず、美しい婦人のために戦います。

 ミースに、カイエンの黒い光剣が託されます。このように騎士が誰かに剣を託す場面は、今までこの作品の中で何度も描かれてきました。
 コーラス三世、ファティマ・ウリクル、シャーリィ・ランダース。いずれも、その騎士が命を失うことを覚悟した場面です。
 泣いてすがるミースの首筋に優しく手を当てて気絶させ、剣聖は戦場に赴きます。
 コミックス4巻に収録されている、カイエンの初登場エピソードは、星団最強の剣聖であるはずのカイエンが、不意打ちにやられて最愛のパートナーを失ってしまうという内容のものでした。戦場では、剣聖にすら、一つの命が守れないことがあります。それは、剣聖自身の命に関しても、同じ事が言えるはずです。


五つ目の見開き

 場面が変わりまして、デコース&エストの駆るMHバッシュ・ザ・ブラックナイトの最前戦です。
 前回に引き続き、エストからこまめに情報を受けながら指揮官として的確に指示を出しています。
 ハスハ側も、お馴染みのマイケル・ジョーイ・ギラがハスハ名物の戦闘用の薬物の使用による血管の浮き出た仲間と共に、状況分析と今後の戦況の予想を行っています。
 そのハスハの騎士達も唸らされるほどに、デコースの黒騎士は驚異的な強さを発揮しています。


六つ目の見開き

 またもや場面が変わりまして、今度はハスハの遥か上空、大気圏の外で実況を続けている放送局の音声による、ハスハ各地の戦況レポートです。戦争がエンタテインメント化されています。
 ハスハ中部のナカカラ王国国境沿いに軍を展開していたクラーケンベール大帝のメヨーヨ朝廷王宮騎士団が進軍を開始し、また、ハスハ・ギーレル王国にはジャスタカーク公国のMHシャクターの一群がエア・ドーリーから投下されています。
 ジャスタカークの騎士団は、騎士の中の騎士と呼ばれる天位騎士アイオ・レーンが騎士団長を務めており、そのMHグルーンもハスハの地に豪快に着地しております。おお、まさしくこの二本角はグルーンです。ここから放電して来るのです(それは『エルガイム』だ)。
 『ナイトフラグス』によると、ジャスタカーク公国は過去、ハスハの一部を領土としていたことがあり、その後奪い返されたものを、今回また奪い返そうということのようです。
 ハスハというのは星団中でも有数の大国ですから、他国とのしがらみもまた膨大で、一度戦乱が起こるとこのように様々な目的を持って他国が動くわけですね。
 最後のコマでは、また別の騎士団が数騎のMH青騎士を降下させようとしています。


最期の見開き

 初登場の女性騎士が、こちらも初登場のMHを起動させています。起動スイッチの横に「-SIREN-R 3021」とあります。
 3021年と言えば、三ヶ月ほど前に発売されたこの作品の連載15周年を記念した増刊本「FSS ISSUE」に載っていた、ピープルカレンダー・ジョーカー3021年4月版が思い起こされます。(このピープルズカレンダーで一回読み解きをやっておこうと思っていたのですが、もう遅くなってしまったようです。うーむ)
 ありました。どうやら、この女性騎士こそ、5月号の読み解けでスパークの別名かも? と無責任に扱った三ツ星傭兵騎士団のナイアス・ブリュンヒルダです。あきらかにあのスパーク(ミス・マドラ?)とは別人ですね。パートナーは、ここに名前の出ているジゼル。あ、ジゼルってバランシェファティマだったような気が。
 いつぞやのアルルのように、傭兵の強さを大国の騎士団に見せ付けてやろう、というような内容の発言をして、その初陣のMHを発進させます。
 ひどく細身の、どこと無く禍禍しいシルエットに、大きな鎌と二本の角。これは、連載再開の五月号の表紙を飾った、あのMHではあるまいか。これまた、シルエットだけなのにため息が出るほど美しい騎体です。設定資料集の『ナイトフラグス』でサイレンR型というのを確認してみますと、……載ってません。ぐうう。
 しかしこのMHは、「重帝騎ファントム」だろうということに今までの「読み解け」ではしてきてありますので、今回もファントムということで行きます。
 で、こちらのMHファントムですが、ISSUEによれば三ツ星傭兵団のオーナーなる人物からの届け物だそうです。それが誰なのかと考えてみたとき、どこかで聞いた「ファントムは二騎あるらしい」という情報が思い出されました。もう一人、ファントムに乗ってやってくることが公開されている人物、それは元剣聖・恐るべきおばあちゃまの慧茄です。大きな傭兵団というのは大国がバックにいていろいろと援助していることが多いそうですから、この三ツ星傭兵団というのはフィルモアか、もしくは元剣聖にして元フィルモア皇帝であるところの慧茄の莫大(と思われる)な資産から援助を受けているのではないかと、推測します。
 あと、よくは知らないんですが、このナイアスのしている腕時計、ものすごい高級品ではないでしょうか。アクセサリー一つ見ても、AKD入団前のブラフォードの貧乏生活とは大違いです。同じフリーでも、バックがあるか、無いかの差かと思われます。

 左側の最後のページに入りまして、まずは戦況を知らせるTVを見詰めるアマテラス、ラキシス、そして……これは、パナール・エックスですね。
 ブラックスリーの襲撃にあって胴体をまるごと吹き飛ばされてしまったリィ・エックスは、やはりあのまま亡くなられてしまったようです。
 三人とも、非常に楽そうな服装でリラックスしていますが、やはりTVの向こうから伝えられる戦乱の様子に表情を曇らせています。ただの視聴者と違って、仮にも星団トップレベルの大国の国家元首なわけですから、何かしら戦を止める手段があるのではないかとラキシスは問い掛けるのですが、アマテラスはやや冷たい表情で、それを”歴史”と人は言うのだと答えます。
 ちなみにこの場面でアマテラスが着ているTシャツのプリントは、僕のマウスパッドとお揃いです。

 同じ頃、遠く離れたカステポーのバー、ワックストラックスでは、ルーマー国の女王位を戴冠して身軽に動けなくなったはずのアイシャが、どうやら相変わらずお忍びでこの地を訪れ、バーのマスターであるジョルジュ・スパンタウゼンとハスハの戦況中継を見ているのでした。

「こんなものを一日中放送されちゃあ 星団中の騎士は我慢できないよね」

 アイシャが更なる戦況の拡大を予想したところで、次号に続く、となりました。

まとめ

 今月号も非常に見所の多かったのですが、その中でも特に注目したのは、カイエンがミースを守って、飛来する巨大なMHの手斧を真っ二つにするシーンです。
 ひさびさに、カイエンが剣聖の凄さを見せつけたこのシーンは、僕らのような以前からのファンにカイエンの格好良さを再認識させてくれると共に、まだこの作品のファンになって日の浅い方や、今月号ではじめて触れたという方にも、そうとう印象に残る場面になり得ているのではないでしょうか。
 以前にも書きましたが、この作品の素晴らしい部分の第一は、現時点で連載がまだ続いていることです。三国志も源氏物語もガリア戦記もこの点においてはFSSに劣ります。連載が続いている以上は、常に新しい読者の視線に晒される機会があるわけで、この作品は常にそういう機会に新しい読者を獲得しつづけるだけのポテンシャルの高い魅力的なシーンを提供しつづけてくれていると思います。
 これだけ長く続けば、ずっと読んでくれている常連向けに特化した内輪受けだけの話にしてしまいたいという誘惑も普通はあるはずなんです。しかし、この作者は逆に、まるでそんな常連を切り離すかのような態度を時折見せ、僕らはそこに必死でしがみ付かざるを得ませんから、結局、常に新しい読者のような気持ちで作品と向き合うことになります。これこそが、僕らがこの作品に魅了されて止まない理由なのかもしれません。

 来月号もそんな、新鮮な感動が与えられることと思います。
 作者は、必ずしも僕らの見たいものを描いてくれるわけではなく、僕らの想像を超えたところにある魅力的なものを、僕らの想像の外からぽん、と視界に放り込んでくれるのです。
 これも一つの、送り手と受け手の理想的な関係だと思います。

わっくわく

 一日遅れました。ごめんなさいまし。


三つ目の見開きの続き

 黒騎士とエスト、そしてヨーンに思いを馳せたところまででした。
 考えてみれば、黒騎士というのはFSSという作品の冒頭をLEDの相手役として飾り、しかも、それがFSSという作品の「エンド・エピソード」でもあるとされているわけですから、ある意味ではLEDと同等にFSSを象徴するキャラクターなわけです。
 この第六話でも、ヨーンとエストにまつわる話は魔導大戦と並んで物語の中心に据えられるそうです。すでに短くは語られたエピソードですが、はるか未来のジュノーにも、モンド・ホータスという黒騎士が登場します。
 そもそも「黒騎士」という言葉だけで相当に格好良い印象がありますが、それをここまで具現化している作品には、ほかにお目にかかったことはありません。

 さて、バルンガ隊長(このころにはもう”隊長”ではないでしょうけど)が、「ミス・マドラ」に声をかけます。敬語です。
 誌面から読み取れる少ない情報から考えてみますと、バッハトマの侵攻によって一度崩壊したハスハ王宮の人々が、ミラージュやクバルカンの力を借りて今まさに王都ハスハントを取り戻さんとしている場面なわけですが、そういった立場上、手伝ってくれているミラージュ騎士には敬語になるのも道理、といったところでしょうか。
 マドラがバルンガに請われてマキシを抑えにかかります。
「皇子の言うことを聞けば、この私から剣聖の称号を渡そう! 欲しかったんでしょう?」
 マドラはほぼ間違い無くスパークなわけですが、どうやらこの時代、剣聖の称号はこのスパークが持っているか、もしくは預かっている、そういう立場なようです。
 コミックス十巻でデコースがスパークのことを「慧茄の出来損ない」と罵るシーンがありました。慧茄自身がスパークのことを「すごい騎士になっている」と評したこともあります。超帝国直系のカイエンや、その上をいく(と思われる)マキシをのぞけば、スパークが慧茄から剣聖を継いでいるというのも納得できるところです。
 そして恐るべきは、騎士として強い盛りであろう年齢と思われるスパークをして、まだかなり幼いにもかかわらず、剣聖を譲ってもよいと思わせてしまうマキシの戦闘能力です。それはまだ誌面には描かれていませんが、次のコマからのスパークのセリフは、マキシの能力と性格を想像させ、読者を震え上がらせるに足るものでした。

「これはゲームだ そなたの母上を殺さずに城を制圧する!」
 ハスハの復権がかかった一戦も、マキシにはゲームと理解させるほうが都合がよいのです。つまり、それくらいに、まだマキシは物事がわかっていない。
「そうしたら君の好きなようにするといい」
 敵の城に飛び込んで、動くものすべてを殺し尽くすということです。
「ただし!!」
「ミースは殺しても 犯してもいけない! 我慢しなさいっ!!」
 なんという過激な言葉でしょう。特別に、繰り返しこう告げておかねば、マキシはそれをしてしまう恐れがあるというのです。
 これまでの部分で、マキシは一応、ミースのことを丁寧に母様と呼んでいました。しかしそれは、デプレのような母を慕う心から出たものではなく、おそらくは、まわりからそう呼ぶように教えられたからそう呼んでいるにすぎないわけです。

 連載に登場する前から、ファンの間では極めて人気の高かったマキシですが、果たして今回の初登場に際しての、恐るべきこの言動、どのように皆さんは受け取られましたでしょうか。
 設定上、かなりの”壊れた”キャラクターだろうとは想像していた僕も、衝撃を禁じえませんでした。ここ最近のキャラクターのなかでも過激さという意味では頭ひとつ飛びぬけていたスパークでさえも、声を張り上げて静止しようとしています。


四つ目の見開き

 たっぷりの毛髪を束ねるおおきなリボンが可愛らしいマキシが、「うー 剣聖・・・・・・」と、幼児の自制心を発揮している場面に、もくもくと雲のようなものがかかる演出とともに、舞台は天上世界に戻ります。
 U・R・Iやシルヴィスもいます。冒頭に出ていたシルヴィスはやっぱり本物だったかな?
 さて、この見開きの内容も強烈です。神々の会話は、いままでのFSSには登場しなかった新たな視点からのものになっています。
 天上世界のマキシは、ハスハの出来事に干渉し、心残りを清算したいようです。そして、アマテラスオオミカミはそれを制限付きで許可します。
 これはちょうど、僕らがコミックスや年表を読む感覚と同じなのではないかと思います。僕らは作品に干渉することはできませんが、そこは、一読者と神の違いです。
 この後、舞台は魔導大戦の始まる3030年へと一度時間が戻ります。そこから、今回の前半のシーンまでの四十五年間というのが、この第六話の主な内容になるようです。
 その時代を生きるキャラクターたち、それを俯瞰している神たちに、読者の視点も巻き込んで、さらにはアマテラスオオミカミは読者をも超えた視点に立っている気配をみせており、そういった何重にも入り組んだ入れ子状の構成で、いよいよ魔導大戦は幕をあけるわけです。

 マキシは「心残り」があるといい、それを「四十四分間の奇蹟」で償うといいます。
 その奇蹟の内容、いや、そもそも、その「心残り」の内容こそ、大変に気になるところなわけで、今回の話はその重要性を示唆しているわけですが、ここで僕が注目したいのは、そのマキシの干渉によって生まれる二つの歴史です。
 順当に考えて、マキシが心残りを作ってしまった歴史Aと、今回の干渉の結果それが解決される歴史Bという、二つの物語がこれから語られる可能性をもっているわけです。
 僕の知っている限りでは、ジョーカー星団でのマキシは、デプレたちと協力してハスハを開放した後に、スタント遊星にまつわる忌まわしい出来事によって死亡し、そしてタイカ宇宙へ送られていくはずです。さて、この流れは、歴史のAとB、どちらの後に連なる物語なのでしょうか?
 神が歴史に干渉をします。FSSの年表に記されている出来事は、干渉前のものなのか、干渉後のものなのか。僕の好きなタイムパラドクスものSFのようなわくわく感があります。
 まあ、おそらくは、その四十四分間の奇蹟というのは歴史の大きな流れに変化を与えるようなものではないのでしょう。アマテラスオオミカミに曰く「その程度・・・塵以下の影響もあたえますまい」だそうですから。
 「この物語が神話であることを示すため・・・」とのお言葉もあります。神話はSFではありません。科学や複雑な物語の構造といったものを通り越して、神の力を示す物語です。
 そして、アマテラスオオミカミはそれを「”ニュータイプ”の読者の方々」にも向けたメッセージとしても発しています。おお、全次元万能神は僕らのことまで視界にいれていらっしゃる。「お解りい頂けよう・・・ふふ・・・」僕らに何をわかれというのでしょうか。文法どおりなら、FSSが神話であることを、となりますが、後についた笑いが、なにかそれ以上の意味を感じさせます。
 タイムパラドクスなどという、物語をわかりにくくする構造はさすがに使われないと思いますが、僕は何か、今回の第六話では、いままでにFSSでは見られなかった物語の語られ方が使われるのではないかと、直感的に思うのです。そしてそれが登場するのが、「四十四分間の奇蹟」なのではないかと。

 それにしても、この天上世界の展開には独特の間と妙があって、実に味わい深く、読み返すたびに気づかされることがあります。
 今もふと、この見開きの最後の、目を伏せたマキシの表情に、どこか暁姫の面影を感じました。マキシが神になっていく、次元を超えた道のりの中で、いつしかその愛騎暁姫ともシンクロするのでしょうか?


五つ目の見開き

 不気味に黒い影を落とすエートールの群れを後方の斜め上から見下ろすショットに、やっと「FSS」のタイトルコールと、「#6 MAJESTIC STAND」「PART:1」「BOTH:3030」「=ハスハ崩壊=」という、時と場所、シーンタイトルが登場です。
 ならんでいるエートールのうち、先頭のものだけ装甲の形状が違います。
 肩の装甲が動かなそうなので、ひょっとしたら、ソープからカイエンがひったくってきたというエートールの装甲をつけたシュペルターかもしれません。あたまにS字のマークでも付いててくれれば確証がもてるんですが。コミックスの九巻187ページにAP騎士団のそれぞれの支隊の紋章が見られるのですが、どれがどの隊の紋章だかわからないのでどうにも絞り込めません。・・・・・・まてよ。どこかにAPの紋章と支隊名が並べてある表があったような。うう、みつからない。


六つ目の見開き

 ハスハ共和国の首都、静まり返った夜のハスハントです。一国の首都だというのに、街に光り無く人もいません。
 ハスハの騎士として僕ら読者にも馴染みの深いギラが、虚ろに夜空を見上げています。独特の心臓の鼓動ような音をたてて、臨戦態勢のエートールが佇んでいます。
「ヤーボが見たらびっくりするぜ・・・」
 ともにハスハのエースとして名を馳せた今は亡き友の名を呼ぶギラにかぶって、ラジオ(?)の中継の音声がはいります。
 二十三時間前にバッハトマのボスヤスフォートがハスハに対して宣戦を布告したのでした。
 その音声は、喋る者一人いないハスハの王宮内にも響き渡ります。
 うつむくラオ・コレット王。何かを待つように目を閉じているムグミカ。周りの様子をうかがうようなヘアード。両手で自分の体を抱くミース。サングラスに隠れて表情の見えないバルンガ。りりしい騎士に成長しているアード・ゼニヤソタ。アルルとマギー・コーターは同じ方向に視線を投げています。おそらくは、このどうしようもない雰囲気の中で、ただひとつけたたましく状況を伝えるラジオを何とはなしに見つめているのでしょう。
 大規模災害の被災者達が、無力感に打ちひしがれながらひとつところに集まっている。ちょうどそんな雰囲気です。
 宣戦布告したバハットマは、夜明けとともに衛星軌道上からMHを降下させ、王都を制圧すると宣言していると、ラジオが告げます。ハスハ側は民間人の避難を終え、王宮外苑にそれらを迎え撃つためのエートールを布陣しているわけですが、その表情は一様に暗いものです。


最後の見開き

 つま先をそろえて座っているマグダルと、その脇に立つデプレ。
 二人はまだ幼さがあるものの、りりしく成長しています。ジョーカーの年齢では、二人はこのとき三十三歳で、地球人でいうならちょうど十歳くらい。感覚的には、非常に聡明な小学生といった趣です。デプレは、日本史の古い時代、飛鳥時代の風俗を思わせるゆったりとした服装と瑞々しい髪が印象的で、ただ黙って座っているマグダルは、アトールの巫女のものなのかアトール聖導王朝の紋の入った大きな帽子とローブを身にまとい、感情の読み取れない能面のような表情を浮かべています。
 こちらも年頃の女性に成長しているヒン・モンダッタに、離宮に下がるように言われますが、それを遮るようにデプレは怒気を発します。
「何でボクたちが先に討って出られないの! このハスハが!!」
 場の空気を無視した発言をバルンガがいさめようとしますが、コレット王がそれを許可します。この場面では、まだ子供で状況のわからないデプレが読者に代わって質問をしていってくれます。
 その内容に移る前に、デプレに対するまわりの呼びかけ方に注目してみます。
 まずヒンの科白。「マグダル様 デプレ そろそろアルル様と離宮へお下りに」と、デプレにだけ「様」がついていません。これは別にヒンがデプレを見下しているのではなく、二人の信頼関係の現れだと思います。マグダルはムグミカの次にアトールの皇帝になるという、この国でもっとも高貴な身ですし、その佇まいには回りのものを寄せ付けないような、冷たさ、みたいなものがあります。それに対して、デプレはその元気のよさから推し量れるように、実に普通の、明るい少年に育っているように思います。年齢の近いヒンやアードとデプレ達が引き合わされたのが十年前ですから、それ以来、皇族と警護の騎士として以上に、非常に親しい友人や、兄弟のような関係で共に王宮生活を過ごしてきたのではないでしょうか。これはヒンからの呼びかけですが、デプレの屈託の無い性格が読み取れる部分です。
 そしてバルンガは、デプレのことを「皇子」と呼びます。以前からそう呼ばれていましたが、改めて確認すると、ハスハのエースとはいえ一介の騎士であったヤーボと、もともとはハスハに縁のないカイエン、その二人の子供ではありますが、マグダルが次期アトール皇帝にとムグミカに見出された時点で、デプレも同様の待遇を受けることになったのでしょう。デプレは、ハスハで国の皇子として扱われているわけです。

 ハスハが討って出られない理由が、コレット王の口から語られます。
 小国のバッハトマに食いつかれたからといって、先に敵の帝都を灰にしたとしても彼らは何も失わないのだと。このあたりには、大国としてのメンツなども見え隠れします。また、バッハトマの皇帝ボスヤスフォートの中枢はカステポーにあるので、バッハトマを叩いても効果がないのだと。このあたりは、さすが魔導大国ハスハ、ボスヤスフォートの正体を見抜いているといったところでしょうか。カステポーは独立自治区ですから、いくらなんでもまとめて灰にしてしまったりできるわけはありません。
 なおもデプレは食い下がります。二百騎を超えるエートール、そして二千騎の共和国騎士団のMHはどうしたのかと。今現在、王宮にはたった百三十騎のMHしかいないのです。ちなみにこのときも、デプレはコレット王を「おじいさま」と呼んでいます。ヤーボを失ってから、コレットの娘であるムグミカがデプレとマグダルの母代わりを勤めてきたという側面もあるでしょうし、また、「アトール聖導王朝」という、ハスハの地にすむ人々の「血」の中にだけ存在する国が、この国家の人々をまるでひとつの家族のようにまとめているという精神性の現れではないでしょうか。
 騎士団を王宮に集結できない理由は、敵もまた、複数の国家を動員する規模で広大なハスハの大地の全体に対しての侵攻を準備しており、それらに各連邦国家が無抵抗で蹂躙されるわけにもいかないからです。
 この状況は、すでに完全な負け戦なわけで、それがわかっているからこその、このシーン、一同の沈黙なのでした。
 ヘアードから戦況が確認されます。
 いくつものバッハトマ側の国家軍や傭兵団にまじって、クラーケンベール新大帝のメヨーヨ朝廷の軍の名も出ています。
 それらの報告を、だらしの無い姿勢で座ったままカイエンが聞いています。表情は見えず、その隣にはプラスティックスタイルのボンネットを外したアウクソー。テーブルの上には小さなグラス。場末の酒場でつぶれているロッカーといった様子です。
 そんな、暗い雰囲気のまま、次号へと続くのでした。

 蛇足。最後のページの柱に「次号、超バトル!!」とあるんですが、少年ジャンプのマンガみたいな煽りで、これはなんか違うなあと思いました。

まとめ

 前回の更新分で書きました、ハスハ開放戦の場に、名前の出ていない騎士達についてです。
 カイエンとアイシャ。この二人は、ずばりこの大戦中に命を落とすのではないかと思います。特にカイエンは、3030年の最初のバッハトマの侵攻に際して行方不明になってしまうのではないでしょうか。どうにも、このところのカイエンには死の影がちらついてしかたありません。
 古い西洋画の文法に、寝そべっている人物が、手をだらりと下げていたら、それは死者という意味である、というのがあると聞きます。今回のラストのコマの沈黙するカイエンは、ちょうどそんな風にみえるのです。
 3030年の現時点で、カイエンはハスハの騎士団長であります。もし生きているならば、四十五年後の開放戦でも先頭に立つはずでしょう。そして開放戦に名を連ねる人々は、ギラやバルンガなど、開戦時に王宮にいたはずの人物が多く、おそらく熾烈を極める戦いになるはずのハスハ王宮撤退戦では、誰かが、彼らの撤退のために時間を作ったのではないかと考えます。
 『ナイトフラグス』のカイエンの項に短くこうあります。
「『ただ生き続けること』~神々に最も難しいことを要求された男。」
 ファティマと同じく、いつ尽きるとも知れぬ寿命を持つ彼が、わが子を守るという場面に「死に甲斐」を求めたとしたら・・・・・・。わが子、というなら、ひょっとしたらマキシもこの時点ですでに生命として息づいている可能性があります。ミースの様子には変わったところは見られませんが、『ナイトフラグス』によればミースはカイエンのすべてを解析するのだそうですし、ミースとカイエンがハスハ入りして十年の月日がたっているわけですから、その解析がすでに終わっているのだとしたら、バランシェを上回る狂気の科学者といわれるミースの研究が次の段階に進んでいるという可能性も、考えられるのではないでしょうか。

 最強の騎士、剣聖であるカイエンが、戦の場で死ぬはずはないではないかと、思いがちです。
 しかし、今回の特集記事のほうで、作者は語っています。いざ戦争となれば、生き残るのは運がいいヤツだけで、星団最強などと言われている騎士でも、鉄砲の一発も当たれば終わりなのだと。リアルな物語作りに必要なまっとうな見識だと思います。それと同時に、「これから、誰かが死ぬよ」という冷酷な宣言であると僕は受け取りました。
 というところから、あまり根拠無く、重要人物としてもう一人、アイシャの死も僕は予言します。第一巻の冒頭のエピソードで語られているとおりに、アマテラスの星団制圧までには、アイシャも死ぬのです。女史はこれから、ヨーンとの関係がクローズアップされていくようですが、ヨーンはこの第六話のもう一方の主役であるわけで、アイシャは(おそらく不本意でしょうが)ヨーンのエピソードの脇役として、非常に重要な役割を果たすのではないでしょうか。
 ああ物騒だ。やれ物騒だ。


 まだ気になる部分はいくつもありますが、今号の読み解きはここまでにしたいと思います。
 冒頭で書きましたように、作者の永野先生とはファンタシースターオンラインで何度かごいっしょさせていただき、その気さくなお人柄と圧倒的なユーモアセンスに親しみを覚えさせていただくことしきりなのではありますが、今回の「いきなりマキシ登場」や「いきなり暁姫登場」といった読者への心臓よ止まれといわんばかりの攻撃、正体不明の重要人物群、消息不明の人気キャラクター達、といった演出をうけて、僕はまた身を引き締めてかからねばならないと、決意を新たにいたしました。
 この作者、やっぱり僕らを騙したり苦しめたりしては喜ぶ悪人です。決して気を許してはならないのです。
 負けるもんか。次号もどんと来いです。

読み解け今月のFSS7月号 (01年6月8日)

 物事には順序というものがあります。
 たとえば、五月の次に七月がきてしまうというようなことは、ありえないはずなんです。
 ……そんな不思議なことが起こってしまったこのコーナー、別に大した理由があるわけではないんですが、公開順が先月のものよりこの七月号分が先ということになってしまいました。
 一回飛ばしてしまったような六月号分ですが、すぐに更新しますので、どうぞご了承下さい。

 それにしても今月号も、また大変な話であります。今回は、いつものような見開きごとの読み解きで黒騎士団とハスハ騎士団の戦いの様子を見ていき、その後で、同時に語られているミースの衝撃の物語を追ってみたいと思います。


表紙

 デコース仕様のMHバッシュ・ザ・ブラックナイトです。
 二刀流で仁王様のように迫力のある佇まいです。以前に「読み解け今月(&先月)のFSS10月号の続きの続き」で扱った事のあるイラストのモノクロ版再録です。ナイトフラグスにも同じ図柄が載っています。
 ふと思ったんですが、このバッシュ、膝部分が逆関節っぽく曲がってませんか? いやもちろん、MHの可動性を考えれば、膝がある程度逆に曲がるくらいは当然ですけど。


最初の見開き

 まず上段五分の四ほどを見開きのコマです。
 前回のラストで、野生の獣のようなしなやかな姿勢でハスハの地に降り立ったMHバッシュの後ろに、バッハトマ黒騎士団のMHが無数に立っています。
 名前は出てきていませんが、コミックス九巻のパワーバランス表を参照しますと、こいつらはおそらくMHアウェイケンでしょう。右手に片刃のハンドアクス、左には星型の紋の入った盾が装備されています。
 率いるMHバッシュは、左に象徴ともいえる三つ巴の紋の入った円形の大型盾、そして右手に下げるのは少しだけ反りのついた実剣です。これも片刃に見えるので、太刀という表現が正しいかもしれません。

 下段は迎え撃つハスハのMHA・トール。すばやく指示が飛んでいます。


二つ目の見開き

 目もとの落ち窪んだ虚ろな表情を感じさせるフェイスマスクのMHバッシュのアップに、バッハトマ黒騎士団団長であるデコースの名乗りと、「今より王都を制圧する!」という宣言が重なります。
 そして、連載中ではついに初公開になるプラスティック・スタイルのスーツ姿のエストに、意外にも、といったら失礼かもしれませんが、デコースがまともな言葉をかけます。
 これ以降も何度か同様の描写が出てきますが、集団戦を束ねる戦闘指揮官として部下のMHを心配し、左のページに入って重装甲のA・トールを今から相手にするということで、注意点を説明したりしています。
 このシーンで、デコースは初陣という言葉を使っているのですが、「黒騎士」デコースの初陣であると共に、この黒騎士団の初陣であるのかもしれません。
 たとえば、僕らが鉄のパイプでも手に持って、厚いコンクリートの壁を思いっきり殴ったとすると、ひどく手が痺れます。そういうような注意をデコースはしています。感覚的に分かり易いです。
 やはりこの男、器のでかさは前から言われていましたが、将としての能力も多分に備えているようです。

 ところで、星団一美しいといわれるエストの足首までしっかり見えるあたりに作者のあざとさをうかがい知ることの出来るファティマルームのイラストをよく見てみますと、これがなかなかに興味深いデザインになっています。
 以前、コミックス九巻で「仮でじゃいん」ということでMHクルマルス・ビブロスをコントロールするメガエラのファティマルームが描かれたことがありましたが、ファティマの存在理由であるところのMHのコントロールと、プラスティックスタイルのスーツデザインは、かならずしも相性がよいとは言えないのではないかとすら思えてしまう、思考錯誤のあとが読み取れます。
 メガエラのときはボンネットの外にヘッドクリスタルが出ているという形で、そこから電波のようなものが飛び交ってMHの情報をコントロールしていたようですが、今回のエストは、ボンネットにMHからの情報ケーブルのようなものが無数に結合していて、エストの特徴でもあるヘアバンド形のヘッドクリスタルは側面あたりから情報の出し入れを行っているようです。
 そして、「未来的なデザイン」という言葉で表現できそうな、ボタンもスイッチも見うけられない透き通ったパネルに指を乗せ、エストはMHをコントロールしています。
 これらの意匠はおそらく、プラスティックスタイルが表すところの「未来感」のようなものを受けて作られたものだと思うのですが、これはどうにも、感覚的に「大きなロボットを操縦している」という表現としてはいささか力感にかけるような印象を受けます。
 以前の、ぱちぱちぱちっとキーボードを押しながら腕全体を動かすような表現のほうが、まあ、僕が好みだったというだけなんですけどね。
 むしろ、「死の妖精のおわすところ」としてはこの表現のほうが適切なのかも。

 にらみ合う両騎士団にそれぞれ前進が指示されて、次のページへ。


三つ目の見開き

 戦場から離れつつある戦艦で、おそらくデプレと思われる「始まったよ!」の叫びに、バルンガが答えます。
 MH戦だけならば、五分、五分とのこと。
 はて、ジョーカー星団では、MHの戦いというのが戦争の最終局面であるはずです。そこで同等というのなら、必ずしも負ける戦ということでもないでしょう。しかし、ハスハには明らかな敗北ムードが、戦闘の開始前から漂っていました。ならばバルンガやアルルはいかなる要素を考えて、今回の絶望感を抱くに至ったのでしょうか。
 はっきりとは判りません。現時点で判っている両者の戦力を比較するなら、数では恐らくバッハトマが勝っています。そして地の利でも、相手の王都まで戦場にしているという時点でバッハトマの優勢は動きません。でも、騎士団の質では、これは間違い無くハスハが上でしょう。メインの使用MHも星団三大MHに数えられるA・トールですからハスハが劣っているとは考えられませんし、それぞれの指揮官を比べても、デコースがいくら無尽蔵の強さを見せるとはいえ、現剣聖であるカイエンを上と見ていいはず。

 となると、戦力差は騎士の世界ではなく、もう一種の超人、ダイバーの世界がかかわっているのでは、と推論を立ててみます。
 一対一ではボスやん以外決して騎士には勝てない彼らですが、ちょっと頭を使えばダイバーパワーで騎士に勝てるということはコミックス四巻でティンが証明しています。
 いや、そういった武力ではなく、もっと総合的な、たとえば情報戦での優劣というのが関係しているかも知れません。なんせ、バッハトマはボスやんの魔道力をバックに急成長を遂げた魔法国家で、アマテラスのダイバーギルドに対抗しうる勢力であるといいます。もちろん、ハスハも魔道に関してはムグミカ王女というダントツの能力者を中心に歴史ある大国であるはずですが、ダイバーズギルドほどの力はないはず。そして、近代戦以降の戦争では、情報戦こそが勝敗を決する最大の要素であります。

 などと考えてはみたんですが、どうにも弱いような。まだ要素が足りない気がします。
 兵力だけなら互角というのは、非常に緊張感のある状況です。これからどのような要素で戦の行方が変わるのか、じっくりと見ていきたいと思います。


最後の見開き

 アウェイケンの頭部がA・トールのメイスで破壊され、また、A・トールがバッシュになで斬りにされます。
 乱戦の中、デコースは陣形を乱さぬようにと指示を叫びます。集団戦闘では、陣形の崩れから敵に付け入るスキを与えることになり、兵力の均衡が保てなくなって戦況に方向をつけます。そしてやがては以前から作者が言っているとおりの、最強騎士だろうと乱戦になれば死ぬ、という状況が訪れるわけです。
 こういった集団先頭であればこそ、兵隊は錬度の差が出るもので、そういう点ではハスハ騎士団は有数なはずですから、なおさら指揮をとって互角にわたりあっているデコースの非凡さが感じられます。戦闘の騒音で鼓膜が破れることを防ぐために、ヘルメットを装着するよう要請したエストに対して、デコースは「指揮官が視界を悪くしてどーするヨ ボケェ!」といった返事を返すほどです。

 しかし、ハスハ側はカイエンがまだ戦場に出ていないものの、お互いの戦力はまだ拮抗しているようです。この戦いの続きは、また来月ということにあいなりました。今月はちょっぴり短いです。作者曰く「今月はここまでじゃああ…すまん」。作者の大好きなゲームの待望の続編が、つい昨日発売されたばかりです。さて、来月の原稿量は、はたして。
 ちなみに今朝方も永野先生とそのオンラインゲームでしばしご一緒してしまいました。

ミースの逆襲

 では、今月号のもうひとつの重要な物語を見てみましょう。
 カイエンに安全な場所に下がっているように言われても食い下がるミースが、こんな発言をしました。

「聞いて!」
「私 自分の卵巣を アウクソーの体に 入れたの!」

 うひゃあ。
 思わず声に出して、うわーと叫んでしまいました。過去にもFSSを読んで思わず叫んだことが何度かありますが、現役のマンガで声を出すほどびびらせられるのは、僕はこの作品くらいなものです。
 最近の若い子は進んでるわネエ、くらいでは到底片付かない発言です。いくらなんでも、これは予想の範疇を越えてました。
 カイエンは一瞬の無言ののち、ミースを「てめえ」と呼びながらゆっくりと聞き返します。

「そうよ! アウクソーに お願いしたの! あなたの子供が 欲しいって!!」

 ああ、呪われし少女よ。
 その生々しい内容とは裏腹に、ミースの表情は、その姿は、願いは、あまりにも幼げです。僕らのよく知る、鉱山の村でアトロポスに教えを受けていたころの、バランシェの養子になったころの、モラードの庇護下にあったころの、あの聡明で健気なミースの面影を背負ったままです。
 ミースはカイエンが好き。年齢的に、結婚ができるようにもなっているでしょう。しかし、ミースの仕掛けたこの逆襲は、その思いは、あまりにも少女的ではあるまいか。
 両手両足をぐいっと突っ張って、涙ながらに叫びます。人間である自分は、ファティマに、ましてやカイエンのためだけに作られたアウクソーには、敵うはずがないのだと。

 あの日、Drバランシェから受け継いだ四十六例目の「作品」、超人間を生み出すプログラム。少女がそれを手にしたとき、はたしてその小さな胸の内には、すでに目の前の剣聖への思いが秘められていたのでしょうか。人より遥かに知的水準の高い彼女が、まるで年端も行かぬ少女が己の気持ちを全身全霊を込めて憧れの人への手紙にしたためる様に、その全ての能力を愛しい人の子を得るために傾けてしまったように思えます。
 最後のコマで、MH戦の轟音響く中ミースは告げます。純潔の騎士であるカイエンの精子は、卵子を破壊してしまうから、普通は血を残せないのだと。
 ならば、バランシェの伝えたプログラムを施した卵子で、それを受け止められるかもしれないと、少女は気づいてしまったのでしょう。

 やがて産まれるのは狂える最強の剣聖、マキシ。
 これは推測ですが、少女はそんな超人間が作りたかったのではない。ただ、愛しいあの人と自分の子供を残す方法が、それしか無かったから。そして、星団でただ一人、少女にはそれを可能にする能力と、立場があったから。

 先走りすぎてはいけませんね。これはまだ語られている途中のエピソードです。
 連載四月号にて僕ら読者を震えあがらせたマキシの狂気。それは、超人間を超えた超生命とでも言うべき存在であるということのほかに、この「母」の、紛れのない遺伝なのかもしれません。
 まさしく、目を離せない展開は、来月号に続きます。
 いつものとおり、ひたすら待ちましょう。


 あ、ちなみに、オンラインゲームで永野先生とお近づきになれたてなしもですが、FSSの話はほとんどしておりません。伺うのはマナー違反だと心得ています。
 はじめのころに思わず質問してしまったこともありましたが、その内容は「ウピゾナの髪の毛の色ってどんなですか?」「FSS以外の作品は描かれないんですか?」「ISSUEって、今までの五年に一度の別冊のシリーズと考えていいんですか?」くらいのものです。
 それぞれ、「軽い茶色かな。緑色とかヘンな色の人間はFSSにはいません。アイシャとかはカツラ」「忘れた」「そうです」とのお答えでした。

今年もやられっぱなし

 新世紀一発目の更新は、FSSの話ということにあいなりました。
 おそらく、今世紀中にも完結しない作品でしょうから、いち早く作者である永野護氏には延命のためのサイボーグ化手術を受けていただきたいものです。多分、最終的には23世紀くらいまで持つ体が必要になるのではないでしょうか。

 さて、空前絶後のボリュームと価格を誇った副読本『ナイトフラグス』の発売直後より、ファンの間からは一刻も早い連載再開を望む声が悲痛なまでに叫ばれ、喉から血を流したファンの屍が累々と積み上げられている昨今ですが、まだ生贄の数が足りないようで、一向にそういった希望の見える情報は伝えられておりません。いやになっちゃう。

 そんななか今月号、FSSの連載の載っていない月刊ニュータイプ誌をパラパラながめながら、「一ページ独占状態の榊さんに比べて、この大阪の扱いはなんだ!」とか「次のライダーってなんとなくガンダムっぽい」とか「野田宇宙元帥万歳」とか呟きつつ、のらりくらりと気だるい午後を過ごしておりましたら、一枚の広告ページでぴたりと僕の手と心臓が止まりました。

 ……心臓はそのままだとヤバいので慌てて動かしました。
 トイズプレスの広告のページに、「A HAPPY NEW CENTURY」というメッセージを添えて、モノトーンで印刷された、今までに全く見たことの無いMHが公開されていたのです。
 上半身だけの公開です。
 とにかく目を引くそのフェイスマスク。髑髏です。そして左右から長いツノが伸び、途中で死神の鎌のように鋭く折れ曲がっています。
 じっと見ていて思い出したんですが、これとそっくりなデザインのメカが、『マジンガーZ』にいたような気がします。
 それゆえに、こーゆーのがFSSの中でも許されるのか! というショックを受けたのでありました。
 ボディのデザインは、全体に華奢な感じで、MHというよりは永野氏が他の仕事で描いているシェル似です。「じつはこれFSSじゃなくてシェルブリッドなんじゃあ」という妄想もよぎったんですが、このロボットの肩には、ナイトオブゴールドやシュペルターのものと同じ、ナイトマスターの称号が燦然と輝いております。
 ということは、これはもちろんFSSに登場するデザインで、この騎体を駆るヘッドライナーはかなり名のある、つまり僕ら読者が知っているような騎士であるはずです。

 ここにきて、そのMHの横に、帽子を被った女騎士が、カラー付きで印刷されていることにやっと気がつきます。
 ぱっと見て名前が出てきません。しかし、どこかで見たことがあります。手に持った長ドスを肩に担いで、鮮やかなブルーのアイシャドウを塗った瞳は悠然と余所見をし、薄紫のエナメル質感のボディコン服の上から藍色のコートを羽織り、首にはチョーカーふくらはぎはロングブーツ、太腿が剥き出し。
 記憶の隅で引っ掛かったイラストを確認するため、月刊ニュータイプ誌の先月号を引っ張り出します。
 運良く、毎年恒例の豪華イラストレーター陣の描き下ろしカレンダー付録は、そこに挟まったままになっていました。
 このカレンダー、毎年最後の一枚は必ず永野氏が手がけ、しかも大抵の場合は僕らがびっくりするような仕掛けが施されているのです。数年前にプラスティックスタイルのスーツに身を包んだキャラクターがはじめて公開されたのもここでした。
 その今年の一枚、2002年上半期の日付が半年分記されているその上に、やはりこの女騎士のイラストは既出でした。並んで、スタンダードなプラスティックスタイルスーツに身を包んだファティマも一人。
 ここでまたびっくりです。そのファティマの腕には、真紅のダガー、AKDの紋章が刻まれております。このファティマのパートナーはこの女騎士でしょうから、ということはミラージュの騎士でもあるということになります。

 誰だ?誰だ誰だ誰だ?
 ミラージュで、こんな突飛なデザインのMHを駆るような、ナイトマスタークラスの、魔導大戦の時代に活躍する騎士って……。
 あ。
 きっとスパークです。
 イラストの女騎士はぱりっとしたロングヘアーで、スパークが過去に連載に登場したときは壮絶なモヒカンヘアーを長々と垂らしておりましたがそこらへんはウイッグか何かを使っているんでしょう。
 まあ違っているかもしれませんが、間違った予想を立てるのはこのコーナーの習慣のようなものでもありますから、かまわずいってしまいます。

 それにしても、なんという禍禍しいデザインのMHでありましょう。
 名前とかぜんぜん予想できません。AKDの未出MHなら、ひょっとしたら「フレーム・ハカランダ」かなとも思いますが、あれはアイシャが駆るはずですし。


 たった一ページ、一枚のイラストでも、僕らは右往左往させられます。角川書店もイイ商売です。
 ああ、はやくはやく連載を再開してください。

臨戦

 さあ、連載の再開です。
 結局、丸一年のお休みでしたが、その間にコミックスの第十巻や巨大設定デザイン集『ナイトフラグス』の発売、そして、これは個人的なことになりますが、ドリームキャストのオンラインゲーム『ファンタシースターオンライン』で実際に作者の永野護先生と一緒に遊ばせていただく機会に恵まれたりといったイベントがあったせいか、それほど長い休載であったという印象はありませんでした。
 ・・・・・・いえ、正直に申しますと、今回の再開があまりに楽しみなあまり、心の中に満ち溢れるその期待を認識してしまったら、待ちきれなくて発狂してしまうのではないかという恐れのため、「FSSの再開」というイベントの存在を意識して忘れていたというのが本当のところです。
 だからこその、シャッターを上げたばかりの書店に駆け込み、アニメ雑誌のあるコーナーにたどり着いて、待望の月刊ニュータイプ誌五月号の表紙を目にした瞬間の全身が蕩けてしまいそうな甘美な衝撃。

 それでは参りましょう。
 例によりまして、読み解きは基本的に見開き単位にて行ってまいります。


ニュータイプ誌の表紙

「あ、あんただれ?」
 思わず声に出してそう呟いてしまいました。その佇まいそのものが殺気を発しているようなダークブラウンのMH。そして、その胸元部分に立っているおっそろしく細身な女性騎士。
 二月号でちらりと姿を見せた、重帝騎ファントムとスパーク? とかちらりと思ったんですが、見比べてみるとぜんぜん違う。しかし、この髑髏を思わせるフェイスガードは、ルミラン・クロスビン設計のMHの特徴が色濃く出ていて、なんらかの関係をうかがわせてくれます。

 これです。
 読者にいきなり叩き付けられる無慈悲な新デザイン。
 最近にFSSの読者になった方は面食らってらっしゃると思いますが、ファン暦十二年の僕も同様に面食らっております。
 突き放しにかかる作者とそれにすがりつくファンという、『金色夜叉』の有名な場面のような経験をえんえんと繰り返す、それが永野先生とファンの関係なのです。
 その突き放し方に圧倒的な魅力があるからこそ、僕らはこうやってFSSをじりじりと取り囲み、何度蹴り倒されようとも、その魅力を一片たりとも見逃すまいと、目を凝らしているわけです。
 ああ、名前もわからぬ騎士とMHよ。なぜにソナタはそれほど格好良いのか。なぜにソナタはそれほどに美しいのか。
 せめてこの者達の正体を知らねば死んでも死にきれぬわい、とばかりに、中を開きます。
 すでに、この一年間蓄積していた僕の中の「FSSへの期待」というものが、たった一枚の表紙絵の謎に覆されてしまっております。


特集ページ1・クロスミラージュ(雄型)

 バケツ頭の便利屋さん、といえばおなじみのクロスミラージュ、その初公開デザイン「雄型」です。
 コミックス二巻にはディッパ博士の駆る「カルバリィC」が、そしてアイシャがアシュラテンプルと戦った「雌型」は五巻で登場していますが、ずっとその存在を予告され続けてきた雄型もついに登場です。
 半透明も、板バネも無い装甲形状は、改めて見るととてもシンプルで、ちょっと物足りなくすらあります。すでにそういった新デザインに目がなれてしまったようです。
 それでもこのシンプルな印象のMHの気になる部分を挙げるとするなら、脚部のかかとやつま先の形状でしょうか。
 ミラージュのMHといえば、LEDに代表されるその巨大なつま先からかかとにかけての、安定感のある大きなデザインが僕の印象としては強いのですが、こいつは妙にそれが小さくなっています。恐らくは、このMHの「完全な戦闘用でありながら、偵察、後方撹乱の任務もこなし得る」という特殊な用法をかなえるための、こまわりの利く設計なのでしょう。

 このページと、次のページに、大きく「嚆矢koushi」という言葉が貼り付けられています。
 手持ちの小学館の辞書で調べてみましたら、「かぶら矢」とありました。戦の開始を告げる、甲高い音をたてて飛ぶ特殊な矢のことです。まさしく、これより戦の開始です。
 ちなみに、手持ちの角川の辞書には載ってませんでした。あはは。


特集ページ2・アイシャ

 ルーマー王国の王位を継いだため「アイシャ・ルーマー女王」となったアイシャです。
 すみれ色のドレス。うーん、相変わらず、きれい、かわいい、さりげなく豪華。
 テキスト部にいろいろ面白いことが書いてあるんですが、はやく本編の読み解きに移りたいので割愛します。にげ。

表紙

 いよいよ本編です。
 表紙は非常にあっさりと、黒地に「THE MAJESTIC STAND」のロゴ、それだけです。


最初の見開き

 開けてびっくり。
 ついに本編初登場(例のシルエットクイズは除く)、FSS作品史上最強の個人、マキシです。
 いきなりそこは天上世界。絶対神アマテラスオオミカミに「ファーンドームの星王」と呼ばれながらの、対話のシーンから始まります。
 この部分、今回の物語の構成において非常に重要な場面なのですが、会話からそれを読み取るのは少々難しい演出になっております。
 神の主観時間、などという矛盾した言葉を使わないようにするならば、すべてが起こった後の話、とでも表現しましょうか。それもまったく正確な表現ではなく、なぜならその物語は作品内ではこれから語られるものだからです。
 とにかく、ファーンドームの星王は言います。ジョーカー星団にいたころの心残りを、今、思い出しているのですと。
 ページ左上に結ばれている笑顔のシルビスの像は、天上世界では思いと現象の間にはなんの差も無いというような、幻想的な表現になっているように思います。


二つ目の見開き

 これまたびっくり。
 場面は変わって・・・・・・一番手前に大きく「暁姫」、一段下がって「エンプレス」、その向こうに今回表紙にあった謎のMH、そしてさらにその向こうには三騎のエートールが、それぞれ待機状態で佇んでいます。
「いつまでこうやってるの? 城に突入するよっデプレ兄さん!!」
 ひときわ大きく響く、暁姫の騎士の声に、デプレが答えます。
 「だめだ!! マキシ! わかってるのか?」
 暁姫の騎士はやはりマキシでありました。城にはマキシの母であるミースと、彼らの父であるカイエンのパートナーだったファティマ・アウクソーが囚われているというのです。
 そう、これは、マジャスティックスタンドも終盤の、ハスハ奪回作戦の直前描写であります。
 大きな流れをつかむには、次の見開きまで読む必要がありますが、とりあえずはまずここで紙面のほとんどを占領している三騎のMHを順に見ていくことにしましょう。

 まず、暁姫です。
 別名を、LEDミラージュB4デストニアス。ああ、かっこいい名前。
 ミラージュのダガーが刻まれた半透明装甲が美しく、その内側の精密なフレームは露骨にメカメカしていて、フリークス的な色気すら感じてしまいます。肩部装甲にはきっちりとナイトマスターの紋章。
 頭部から後方に二つ、長く伸びたカウンターウェイトは、恐らくその左手に持たれた恐ろしく肉厚な実剣を前に持って構えたときに、全身のバランスがとられるように作られているのでしょう。この部分を見ただけでも、思いっきりピーキーな操縦感覚を必要とするMHであることが見て取れます。
 先日、ガレージキットメーカーであるボークスの秋葉原のショールームで、暁姫のキットを見てきました。去年の十一月に上野の博物館で見た中国国宝展に展示されていた至宝の仏像たちとも比肩しうるように思えるほどの、すばらしい作りこみが施されたキットで、眺めていてもよだれが出てきてしまうほどに精巧に作られていました。
 しかし、今回の、このついに連載中に登場した暁姫は、当然、今までに公開されていた設定画よりも細部が細かく、また、横からの描写なのでこれまでに見えなかった部分もはっきりとわかるので、ひょっとして、あの素晴らしいガレージキットにも、また今後改修が必要になってしまうのではないかなどと、いらぬ心配をしてしまっております。
 こうしてみると、扁平な頭部の形状がまた特殊だなあと思います。

 次にエンプレスです。
 騎乗するはデプレ。ページ左下に顔のアップがありますが、好青年に育っております。いや、まだ少年と呼んで差し支えないような幼さがあります。
 ナイトフラグスに曰く、彼は成長が遅く、弟のマキシに成長を追い抜かれてしまうとのことなので、この位の外見のまま、まだしばらくの時を過ごすのでしょう。
 エンプレスは、肩を覆ういつもの白い装甲を外した状態で立っています。というか、肩の装甲はいわゆる可動ベイルなのでしょう。エンプレスは二百年前に大活躍したMHですし、これを参考に、エートールの特徴的なアクティブバインダは作られたのかもしれません。腕の部分の浮遊式ベイルも、とりあえず見受けられません。
 ひょっとしたら、このハスハ開放戦に臨むまでの戦闘で失われてしまったりしているのでしょうか。

 さあて、件の謎のMHです。
 まず、シールドにでっかくミラージュマークとギリシャ数字の十です。ミラージュの十番といえば、表がハインド、裏がスパークです。ということは、まあ、スパークですね。ナイトマスターの紋章も付いてるし。
 と、騎士に目星がついたところで、依然としてこのMHについてはさっぱりわからない。装甲はともかく、断片的な情報を汲み取っていくと、フレームは例の「ファントム」に非常によく似ているように思うのですが、角の形状はまるで違います。これは多分、現時点では名称の判明していないMHと思ってしまってよいのではないでしょうか。
 一応、クロスビンの設計によるものの中で今までに名前が出ていて姿が公開されていないMHとして「グルーン・エルダグライン」の可能性も挙げておきます。でも、グルーンはジャスタカークのMHだしなぁ・・・・・・。
 こうして、未知のデザインに苦しめられること、これがFSSファンであることの最大の快感のひとつであります。マゾです、ええ。

 ちなみにここまでは、本屋さんで立ち読みでした。このページを見て、いきなりのマキシの登場に唇を噛んで驚き、これはやはり家で熟読せねばとレジに向かったのでした。


三つ目の見開き

 どげ~んと出ました、飛び出しそうなほどおっきな目ん玉のかわいこチャン。さらりとエグイことを言ってのけながら、その幼い純真さと、内に備わった狂暴さが口調に出ています。
 これがマキシです。うわさに違わぬ美少女っぷりです。男の子ですけど。
 さて、「母」であるはずのミースの命が危ないというのに、「戦闘区域に人がいたって戦う」という一般的な理論に基づいて平気で突入を進言するマキシを、「バカッ! マキシのバカッ!! わからずや!」とデプレが怒鳴りつけます。
 実の母ではなくとも、父カイエンとの間にマキシをもうけた、「この世でたった一人の本物の母様」であるミースを慕って、デプレは怒鳴ります。
 この場面は、人間的な感覚の欠落しているマキシを、仲間がどうやって押さえるか四苦八苦するというシーンです。このころ、マキシというのは、仲間でさえ扱いに手を焼くほどの問題人物であったわけです。
 マキシは、そもそもバランシェの作り出した四十六体目の作品であり、その特殊な遺伝子操作を行われた(おそらくはミースの)卵子に、超帝国の最強騎士、剣聖スキーンズとヤーン・バッシュ王女が、二人の受精卵をドラゴンに託し、それをこれまたバランシェが受け取ってファティマ・クーンの体に宿らせて誕生したカイエン、その遺伝子を組み込んで生まれたという、超人類なわけであります。
 実も蓋も無い言い方になりますが、これはもう、よくぞ人間の形で生まれたものだなあ、というのが、まっとうな評価なのではないでしょうか。
 そんな彼がやがて人間らしい心を持ち、タイカ宇宙へ渡り、ついには神になっていくという物語が、FSSのエピソードのひとつとしてこれからかなりの時間をかけて語られていくわけです。

 ここで、ビルトが戦況を報告してくれます。この時点でのマスターは、ワンダン・ハレーであるようです。コマの向こうにはバルンガ隊長も健在です。
 ハスハント市の西壁には斑鳩王子とタイトネイブの率いるミラージュ騎士団が布陣完了。
 南壁には、アルル、セイレイ、マイスナーの暴風三王女とディスターヴ隊。
 東壁はハスハの精鋭として名高いスキーン隊になんと、すでにクバルカンの法王となっているミューズのバング隊が加勢。
 そして中央北壁には「ナイアス様の”ファントム”」と聖導王朝騎士団。
 ほとんど、FSSオールスターズといった布陣になっています。(この場面で名前の出ていない人物に付いては、大変気にかかるところです。また後で記述します。)
 コミックス十巻の最後の書き足し漫画を読んで以来、斑鳩とタイトネイブの関係が気になっていたのですが、ひょっとしたらこのお二人、ちょっといい仲になってるんだったりして、とか邪推。三王女の揃い踏みも、きっとここにいたるまでに相当な紆余曲折があったのではと想像されます。そしてミューズ率いるバング隊の参戦。『ナイトフラグス』にはマジャスティクスタンドの終盤にクバルカンの参戦の気配ありと記述されていましたから、まさしくこれは魔導大戦の終盤なわけです。そして、「ナイアス様の”ファントム”」ですが、今回登場している「ミス・マドラ」と呼ばれる謎の女性がそのナイアス様なのだとしたら、これはもう素直に、さっきから僕を苦しめている件のMHをファントムとして認識してしまってよい、ということになりそうです。ちなみに、ミス・マドラがスパークなのは間違い無いと思われます。ミラージュの十番付けてますから。推測ですが、二月号で公開されたファントムは、大戦初期の装甲形状で、今月号の憎いヤツは大戦末期のスパーク用チューン版、ということなのではないかなあ。
 実はこの場面、キャラクターの配置に関して解釈に困っております。今この場に描かれているデプレやマキシたちは、上記のどれかに属しているのか、それともこのハスハント包囲網とは別に、バッハトマの城の前にいるのか、書かれている情報からは判断しきれないのです。バッハトマの王城というのがハスハントの中にあるのでしたらスッキリするんですが。

 ビルトの報告を聞く、スパリチューダとコンコード。報告の最後に、「今”エスト姉様”が到着した」とギラから連絡があった旨が付け加えられます。
 左のページに入って、折り目正しいフレアスカートに大きなヘアバンド、なのにどこかアブノーマルな雰囲気の漂うミス・マドラが語り始めます。
 四十五年前にバッハトマの黒騎士のファティマとしてハスハントを壊滅させたエストが、今度はハスハント開放のためにバッハトマと戦うというのです。
 黒騎士、エストといえば、われらがヨーン・バインツェル君。
 エストがこちらの陣営についたということは、少なくともバッハトマの黒騎士デコースは倒れたということです。ヨーンが本懐を遂げて、ひょっとしたら四代目の黒騎士になったのか、それとも・・・・・・。

 と、ここまで書いたところで、時間がきてしまいました。
 書きはじめからすでに五時間が経過しようとしておりますが、まだ全体の半分、といったところでしょうか。
 この続きは、翌十日付けの更新にて。

キャラクターズ+-

 天災(2000年9月11日の大雨)によって引き伸ばされてしまった、今回の「読み解け」の完結編です。
 大雨と大風で荒れてしまったベランダの後片付けも一段落したので、先ほど「ナイトフラグス」を買いに行きました。ところが、当然といえば当然なんですけど、入荷予定だった模型屋さんには、やっぱり大雨のためにまだ品物が入っていませんでした。
 しかし明日には入るということで、改めて予約を確認して返ってまいりました。
 というわけで、僕はまだ「ナイトフラグス」に目を通しておりません。


エンゲージ・オクターバーSR3
ファティマ・シクローン

 SR3は我らがセイレイ様のMHで、エンゲージシリーズの三機目にあたる騎体です。そのデザイン、およびカラーリングは、セイレイの父コーラス三世の乗っていた初期型ジュノーンSR2(ウリクル・ジュノーンというらしいです)とまったく同じなんだとか。コーラスではセイレイ・ジュノーン、イズモアストロシティではジェイド・テンプルと呼ばれているそうです。
 そのファティマはシクローン。ヘッドライナーであるセイレイではなく、こちらがSR3の主であると記述されています。クラトーマとV・サイレンのような、いわゆる専用ファティマというものなんでしょう。なんだか、ジュノーンとクローソーの関係も思い起こされます。
 それにしても、いつのまにやら初期型ジュノーンに「SR2」という型番がついています。
 試みに、これを鵜呑みにして勝手に系統立ててみます。まず最初に作られたのが剣聖ハリコンの乗機であり、そして現在はアルルが持ち出しているエンゲージ・オクターバーSR1。そして次に作られたのはマロリーのMK2。「MK2」ってくらいですからかなりの設計変更が行われたのではないでしょうか。その次が、多分、SR1の再設計版としての、コーラス三世のジュノーン(SR2)。それで、きっとほぼ同時進行で、次の代のコーラスの王子用にSR3も作っていて、それをセイレイが使っているといったところでしょうか。確か、このへんの時間的繋がりをはっきりさせる資料がどこかにあったような・・・
 あ、しまった。
 昨年の12月号の表紙の、コーラスの家系図に、今回の一連の「読み解け」の中でわからないとしてきたことがいろいろ明記されているではないですか。
 ありゃりゃ、シクローン、タイフォーン、モンスーン、ユリケンヌは四人合わせて「風の4ファティマ」といって、すべてアルセニック・アイツ・フェイツ・バランス10というマイトが作ったんだそうです。バランス10ということは、Dr.バランシェのお母さん?あと、四人という数字は4ファッティスと同じでこれまた気にかかります。
 かくもあっさりと、この家系図の読み解きを面倒がって後回しにきてきたツケがまわってきてしまいました。
 なになに、マロリーは「マイスナー」の名前を恋人からもらったって?アルルとナトリウム・シング・桜子(謎の少女A)は異母姉妹?マヨール・レーベンハイトはバランカ家の王子様?ぐわ、インプットしなおさなくてはいけない情報が多すぎます。なんだか、うれしい悲鳴と本心からの悲鳴の境目がぎりぎりになってます。

 逃げるように、次へ行きます。


ファティマ・ユリケンヌ

 アルルのパートナーで、そのコスチュームはカイエンのアウクソーと色違いの同デザインです。
 SR1と並んでハスハの旗騎となるシュペルター(A-TOLLバージョン)のファティマと御揃い、ということで彼女達はまさにハスハ軍のシンボルなのでしょう。ここから僕の予想的側面が強くなりますが、本来ハスハのシンボルとなるべきMHエンプレスは、魔導大戦開始の時点で、乗り手であるデプレがまだあまりにも幼いために不参加なわけです。そして、長く続く魔導大戦のうちにデプレは成人し、カイエンが倒れ(倒され?)、ハスハ軍の騎士団長の地位も継ぐことになるのでは。もちろん、そこにはやがてマキシの姿も見られるようになるはずです。つまり、魔導大戦というのは、主に暴風の三王女やこれまでのキャラクター達が活躍する前半と、その三王女やジャコー達もベテランになって、主役がデプレ達さらに下の世代に移る後半に分かれると考えると、すっきりするように思います。果たして、アイシャやクリサリスは天寿をまっとうできるのでしょうか?
 ところで、ユリケンヌに関して、不確かな妄想ながら気になる点を一つ。
 最近、オージェやらジュノーンやらの「元版」ががんがん登場してきたことで、どうやらコミックスの一巻以前の時代にも激しい戦争やドラマが繰り返されていたらしいということが、僕らに実感として伝わってきたように思います。
 そういった状況を端的に表す言葉があるとすれば、「歴史は繰り返す」といったところでしょうか。たとえば、魔導大戦終結後に発生するというハスハの十年戦争というのがあるそうですが、それも過去に剣聖デューク・ビザンチンがハスハを守って戦った歴史を繰り返しているという捕らえ方も出来ると思います。
 さて、一つ上のファティマ・シクローンのところでちらっと述べましたが、僕は「風の4ファティマ」と「4ファッティス」の関係がなんだかとても気になるのです。Dr.バランシェの先祖が作り出した星団最初の四人のファティマ達と、バランシェの母と思われる人物の作り出したこれまた四人のファティマ達。こじつけと言われたらそれまでですが、風のファティマの一人シクローンは、ハスハの地で、4ファッティスの一人フォーカスライトがその正体であるアウクソーと、同じデザインのファティマスーツを着てともに戦うというのです。なんというか、そこに「何か」があるような気がしませんか。
 ただ、さすがにこの二人が同一のファティマだとかいうのはありえない話ですし、実際にどのような関係があって、どんな物語が展開されるのかはまったく予想できないです。


おまけ・心配性のおぼっちゃま

 心配性だとは存じ上げませんでした、フィルモアの新皇帝ダイ・グ・フィルモアの少年時代のイラストです。
 スカートはいてるんで間違いありません。カイエンに大怪我させられる直前、といったところでしょうか。


バッシュ・ザ・ブラックナイト

 あまりにも重厚で、凶悪なたたずまいのバッシュです。
 ベイルを地面に置いて、手には二刀流。間違い無く、狂乱の貴公子デコーズ・ワイズメルの駆る騎体です。
 記述によりますと、魔導大戦の開始直後、まっさきにハスハ王宮に乗り込んでくるとのこと。迎え撃つのは、A-TOLL、スクリティ、エンゲージらのもようですが、騎士の質ではミラージュに一歩遅れを取ると思われるハスハの陣営で、果たして先日のミラージュ王宮での惨劇の再現なるか、見所が多い戦いになると思われます。
 もちろん、カイエンならば間違い無くデコースに勝てるでしょうけれど、カイエンがハスハの騎士団長になったことは星団中に発表されています。それをわかっているはずのデコースがわざわざカイエンの居る所に策も無く乗りこむとも思えません。


ファティマ・ミナコ3D(著者近影)

 あの、なんていいますか、その・・・。
 自分の作品上でさんざん「妖精」とか「魔性」とか描いておいて、著者自らがファティマを名乗るコスプレをするということが許されるのかどうか、ということは置いておきまして、男なのになんでこんなに脚がキレイなのか、ひょっとしたら奥さんより細いんじゃなかろうか、ということも置いておきまして、同誌上で友人の幾原監督も同様のコスプレをしているけれど、同様に脚が矢鱈にキレイなのはなぜだ、なんてことも一先ず置いておきまして、その・・・
 どうして永野先生、セーラーヴィーナスのコスプレしてらっしゃるんですか?


まとめ

 ミナコ3Dをはじめて見た時のショックがよみがえってきて、なにも言えません。
 はやくナイトフラグスをこの手にしたい&コミックス十巻が欲しい、それだけです。
 ミナコ3Dは、これからも時々登場するかもしれないとのことで、ひょっとして、さらにセーラー戦士を増やそうとか、そういう恐ろしいことを考えさせないためにも、永野先生にはどんどん仕事をして欲しいと思います。
 でも、悪いことに今回のドラクエはシナリオがとてつもなく長いらしいので、連載再開がいつになるのか見当がつきません。
 待つ身は辛いですが、結局これもいつものことと割り切らねば。
 希望が訪れる日を、ともに待ちましょう。忍ぶ愛です。

思わず嗚咽を

ごめんなさい。なんで今月分の更新がここまで遅くなったのかと申しますと、久々に連載休止に突入してしまった本編とのしばしの別れを惜しむあまりに、もし「読み解け」を書き上げてしまったらば本当にFSSとの暫時の別れを認識せねばならないのではないかという不安から、思わずてなしもは一人遠くに旅立ってしまって・・・
どなたも信じませんよね。もちろん冗談です。といっても心情的にはそれに近いんですけど、実際の理由は、表紙、内容ともにあまりに大変なものだったので逃げ回っていたということにつきます。弱虫です。逃げちゃ駄目だとつぶやく少年の姿が脳裏をよぎります。
しかし、いざ書くからにはやりますよ。ええ、やりますとも。


最初の見開き

内容から始めます。今号の表紙は、これから出版される副読本の内容紹介なんですから、後に回した方が納まりが良いだろうという判断です。

実はとってもデンジャラスなデザインの、ハスハのお城の塔の一室のテラスから、まだ少女と呼べるような佇まいの天才マイト、ミース・バランシェが空を見上げているカットから始まります。
アウクソーとミースの再会。それはおそらく、カイエンの手によってミースがDr.バランシェの養子にされた時以来のものなのでしょう。コミックスで言うと、4巻のエピソードですね。4巻のその内容がニュータイプ誌に掲載されたのは、確か1991年の初め頃です。・・・連載年数で言っても、ちょうど9年ぶりの再会ですよ、こりゃ。ジャンプでやってる「こち亀」の日暮サン(4年に一度、オリンピックイヤーにだけ現れるキャラ)より凄いかもしれません。ちなみに、作品内時間だと21年ぶりの再会ということになりますが、ジョーカー星団と僕らの世界とでは時間の流れ方が少々異なるそうなので、この年数通りの懐かしさだとは受け取らない方がよいでしょう。寿命も違うし。
・・・まてよ。ちょっと検証してみましょう。ジョーカーの人たちの限界寿命は、約300歳という話です。僕らで言うと100歳くらいでしょうか。約3倍です。で、21を3で割ると7。ものすごい単純計算ですが、感覚的には、命の恩人との7年くらいぶりの再会という感じかもしれません。ジョーカー人にとっての思春期というのがどれほどの長さなのかは解りませんが、もっとも多感な年頃にあこがれた人たちとの7年ぶりの再会ともなれば、そわそわするミースの、そして逃げ惑うカイエンの気持ちというのも、推して知るべし、でしょうか。いや、カイエンが逃げているのは、単純に「純粋に自分を想っている女性」に会うのが恥ずかしいからだと思いますが。
話題を本編に戻します。
アウクソーとの会話はこのシーンではわずか10あまりです。しかし、そこからいくつかの情報が読み取れます。
「バランシェ様」と呼ばれたミースは、「その名前は大きすぎる・・・」とつぶやいて、自分を以前のようにミースと呼んでくれと告げます。バランシェがマイトとしてあまりに巨大な存在であるということを、ミースは当然知っているわけです。すでに五本線のついたマイト服を身に纏える、立派なフルマイトになっているわけですが、そうなってみるとなお、バランシェという名前の巨大さが解るのでしょう。すでにミースは4巻の時のような物知らぬ少女ではないのでした。
照れながらカイエンの様子を聞くミース。自分の前に姿を見せてくれないカイエンが、気になってしょうがないのでしょう。それとなく聞いている風を装って、恥じらいながらよそ見までしています。いじらしや。
答えてアウクソーは「マスターはミース様がまぶしいみたいです」。しかしミースは、カイエンに避けられているように思えてなりません。ああ、恋するものは、えてして相手の言動を悪い方に考えてしまうものです。思い悩むミースは、自分がカイエンのお陰でここまで来られたのだというエピソードを語りはじめます。
カイエンに救われ、バランシェの養子になって間も無い頃と思われる少女時代。ミースは王立学校でのテストのカンニングの容疑をかけられ、それが濡れ衣であると涙乍らに訴えています。バランシェの傍らには、この頃里帰りをしていたファティマ・時が寄り添っています。ジャスタカークでMHグルーンを駆る天位騎士、アイオ・レーンのファティマです。といっても、この時代には何処に嫁いでいたのかは定かではないのですが。このファティマ・時は、この後バランシェの最期を見取るファティマでもあります。
代数の問題用紙があります。問題の数式の直後に、いきなり答えが書いてあります。バランシェはミースに詫びます。いきなりこんなレベルの高い学校に入れてしまってすまなかったと。カンニングせねばならないほど辛い状況に追い込んでしまったのかと謝ったわけです。
しかしミースは、泣きながら、そんなのは見たらすぐ答えがわかるのに、どうして複雑な式なんて使わなければならないのかと、バランシェに訴えるのです。バランシェは、その発言に違和感を感じて、ミースに問いかけを発します。「988年前の星団暦2001年、1月21日は何曜日だったかな?」、ミース一瞬で答えて「日曜日に決まってます・・・!」。まだ泣きじゃくるミースの前で、バランシェと時は自分たちが勘違いをしていたことに気がつくのです。僕は初めに読んだ時、ミースのこの能力は彼女が幼い頃に勉強を習っていたA-T先生、つまりファティマ・アトロポスの教育によるものなのかと思いました。バランシェはミースがアトロポスの教え子であるということは知らないはずですし。しかし真実は、僕なんかの予想をはるかに越えていきます。
この回想シーン中、バランシェはシルエットでしか登場していません。死の直前のその体は、すでにぼろぼろなのです。醜くなってしまったその姿をあえて見せる必要は無いのでしょう。バランシェは、死が訪れるその時までクールに描かれるのです。
それにしても、時のファティマスーツはまるで社長秘書のようで、フェティッシュな魅力がむんむんです。まさにインビンシブル・エロティシズム。デカダンスタイルまっしぐらです。


二つ目の見開き

バランシェはミースを試すことにします。なにやら得体の知れん100列からなる記号の配列を読み解き、101列目に来ると予想される記号列を述べよと言うのです。
超絶的な高性能生体コンピューターであるファティマの時ですら、それは全くわからないと言います。「4塩基配列」なんて言ってますから、遺伝子の話のようですが、僕らが知っているような知識はもちろん、なにやら高度な方法を用いたとしても先を予想するようなことは出来ないんだそうです。
ミースは一途に頑張ります。サンドイッチや紅茶にもほとんど手をつけず、おそらく数時間も集中し続けてこの問いに取り組んでいます。その傍らに「NEXT G4」と書かれたポリタンクのような箱があります。「富士の水」とも書いてあるのでほんとにポリタンクかと思ったのですが、これはきっとタワー型のコンピューターなのではないでしょうか。G4といえば、アップル社御用達のCPUの名前ですし。ミースの目の前のディスプレイにもコードが繋がってるようですし。富士の水というのは、水流式の冷却システムのことかなあなんて思ったりして。
さて、ミースが答えを出します。汗だくです。時はびっくりしています。そりゃそうでしょう、不可能事だと思っていたんですから。
バランシェはその答えを正解と認め、ミースを「マイト」であると断定します。複雑な数式から一瞬で答えを導き出し、閏年があるにも拘らず未来や過去の年月日の曜日を即答できる人間が、希にいるという話になります。暗算なんてしなくても、ぱっと頭に答えが浮かぶのだとか。それは、ジョーカーの世界では、”ルシェミ”というダイバーパワーの遺伝ということになっています。ちなみに、作中に書いてあるように、僕らの住む世界にもこういう「天才」というのはおりまして、アルバート・アインシュタインなんかも、答えが先に浮かんでから式を考える、なんて能力があったそうです。(これはついでの話ですが、以前てなしもはふと「天才」というものに興味を持ちまして、百科事典でその言葉を引いてみたんです。そしたら、そこにはこう書いてありました。「IQ160以上の人をそう呼ぶ。以前は140以上の人をそう呼んでいたが、最近は全体にIQが上がってきているので、160以上ということになった」それは古い百科事典でしたから、現在ではもっと数字が高くなってるかもしれません。・・・しかし、なんとも安易ですね(^^;。FSSの語る「天才」の神秘性のかけらもありゃしないと思います。)
閑話休題。”ルシェミ”というのは、非常に希なダイバーパワーであり、フルマイトになるための必須の能力のようです。そりゃ、生命を作りだそうというんですから、科学なんてものを超越した能力の持ち主でなければならないんでしょうね。努力と希有な才能がかみ合って、なおかつ優れた学習機関(ミースの場合はバランシェ)と出会わなければ、なれない職業。魅力的です。「マイト小説」なんて文学ジャンルが創れそうです。
それにしてもバランシェ、最初に「難しくはない」「ゲームだ」と言っておいて、次のページでは「このジョーカーでも私にしか解けぬ生体コードを解くか」と来たもんです。人を乗せるのがほんとに上手いお方。


三つ目の見開き

死を間近に覚悟しているバランシェは、自分にはもうこれくらいしかしてやれないと、ミースにディスクのようなものを渡します。それは、まさに恐るべき遺産でした。
バランシェが最後に取り組んでいた、”最強の女神”クローソーに続く、46体目の人造人間に関するデータです。それはすでにファティマではありませんでした。人の卵子に組み込まれ、受精をするとプログラムの展開が始まって人間のゲノムに食い込んでいくという、「超人間」を創るという技術の理論です。44体目にしてラキシスという「神」を創り出してしまった天才科学者が、さらにそこから進んだものを創りだそうとしているのです。
それを受け取った時のミースの表情は、まだ田舎育ちの無垢な少女のものです。しかし、その隣に描かれている、現在のミースの表情は違います。
何かを思いつめる女性が漂わせる、強烈な色香。名だけを継いだはずのバランシェから、その狂気も受け継いだのでしょうか。マッドサイエンティストが見つめる、その虚空には何が浮かんでみえるのか。
バランシェは告げました。それは「人の卵子」に埋め込むのだと。それは超帝国の純潔の騎士をも超える力を持つ存在になるだろうと。それは、バランシェの最後の作品であり、ミースの最初の”作品”であると・・・。
そのプログラムだけで、純潔の騎士すら上回る力を”作品”に与えることができるのならば、その素材の一旦である男性側の要因が、その超帝国の純潔の騎士に限りなく近い存在だったら、はたして何がおこるのか。何処まで行けてしまうのか。狂気の天才Dr.バランシェすら予想しなかったその領域の存在に気がついてしまった時、それがどんなバケモノを生み出してしまうのかも恐れずに、踏み出してしまうおぞましいまでの探求心を、持っている女性がいるとしたら。
自らの卵子にすでにその情報を埋め込み、その機会をうかがう狂気の科学者が、ひょっとしてここには描かれているのでしょうか。
そしてそうなるとミースは、はたして純粋な恋心だけでカイエンを求めているのでしょうか?
僕には、そのミースの横顔が、母の顔ですらあるように思えるのでした。・・・生まれ出た人の子供を取って喰うという、鬼子母神のような母の顔に。
ここで、FSSという作品上、最強の騎士と設定されている、「マキシ」の名前が、ついに連載中に登場いたしました。

さて、左のページに移りますと、わりと陽気なハスハ勢のお話になります。
まだ幼いながらも、後の凛々しさを想像させるデプレの表情にまずは引き込まれます。クリスティ隊の隊長(今もそうなのかは知りませんが)バルンガが、デプレにお土産の実剣を渡しています。こういった、実剣や光剣が人に譲られたり、受け継がれたりする話は、これからますます重要度を帯びて来るようです。
今回も、「人を殺した剣」と「殺していない剣」や「黒い光剣」などといった言葉が沢山出てきます。しかも、それを語るのはマグダルです。作中での超絶的なダイバーというのは、つまりある意味ではストレートに作品世界を語ってしまえる存在であるということだと思いますので、魔導帝国の女王たるマグダルの発言は、殊更大きな意味を持っていそうです。
今の所は、「YO!YOー!」なんて、クラブ乗りの挨拶がまことに可愛らしいのですが。


四つ目の見開き

まだ幼いこの双子にとっては、ひょっとしたらお互いは同一の存在であるのかもしれません。幼児にはよくあることですが、自分と相手の区別がまだはっきりとついていない状態なのかもしれません。そう思えてしまうほど、この二人は仲が良く、事ある毎に体を密着させているような気がします。のちにこの二人は引き裂かれ、安寿と厨子王のような辛く悲しい話になるといいますから、その分、今は幸せな時代として描かれているのでしょう。
しかし、いくらまだ幼いとはいえ、「新星団最強のくらっしゃーず」の名を襲名したこの二人を侮ってはいけません。会話の内容はすごいです。
まず、カイエンの尻を叩いてきたと。普通なら、利発でかわいい娘が渋る父親を後押しするなんていうのは和やかなホームドラマの一場面ですが、この場合はその結果、超人間であるマキシが生まれることになっていくわけで、上辺ほど生易しい問題では無いのです。多分。
そして次に、アマテラスが「いらしてたの」と言います。アマテラスは遠く離れたフロートテンプルで、やっとエイリアスを生み出すための眠りに入ったばかりであるにもかかわらず、マグダルが語っているのは過去形です。これはいったいどういう事なのでしょう?とりあえず確かなのは、「マグダルにとっては、それは過去の事になっている」ということなのですが、やはり意味がわかりません。先月に登場していたマギー・コーターにソープが会いに来るというエピソードがあるはずなので、これから(つまり連載再開後)そのハスハでのシーンが登場するのかと思っていたのですが・・・。マグダルがカイエンの後押しをするシーンも含めまして、この辺はコミックス化した時に書き足されるのかもしれませんね。多分、次の次である11巻の話になってしまうと思いますが。
それにしても、普通にみたら微笑ましい以外に印象の持ちようが無いはずのこの二人のじゃれあいを、矢鱈と真剣なまなざしで見つめるバルンガが不気味です。この男、一見ただの不気味さんですが、バランシェファティマのスパリチューダを娶るほどの騎士ですし、アルル・フォルテシモをスカウトして来るほどの腕も持っていますから、初登場の時は「ただのいい人」でしたが、この先侮れないです。
で、アルル様のご登場です。お美しや。
先日はDr.ダイヤモンドの元にいましたが、ここでハスハ入りを果たします。連載再開後のマジャステッィク・スタンド本戦にまで参戦するのかどうかは解りませんが、デプレの剣術の師匠にはなって行くようです。ということは、デプレの戦闘術は、黒騎士やコーラスと同じロンド系(この言い方で正しいのか解りませんが)ということになりそうですね。これでファティマがDr.モラードのものなら完全にコーラス系ですが、どうやら母親のパートナーだったコンコード(マイトはDr.スティル・クープ)を継ぐらしいので、系としてのなんとなくハスハオリジナルな匂いは残っていくみたいです。
さて、マグダルはアルルに告げます。「大きな黒い剣の持ち主を探しているのね」。
これはもちろん、彼女が持っている懐園剣のことでしょう。もとは超帝国の純潔の騎士ナッカンドラ・ビュー・スバースの物で、ハスハの剣聖デューク・ビザンチンに受け継がれ、今は何故かアルルが持っている大太刀です。ビザンチンが持っていたというならば、今回のことでハスハにそれが戻ったというのも、なんとなく肯けるような気がします。その剣の導きで、アルルがハスハ入りしたと考えればよいわけです。
彼女が探しているという、「懐園剣の持ち主」とは、すなわちこれから生まれて来るマキシの事に他ならないのですから。
しかし、マグダルの言の中にある「黒い光剣はこっち。黒い大きな剣はあっちでないと、さやから抜けないわよ」とはどういう意味なんでしょう。黒い光剣というのはもちろんカイエンが持っているもののことだと思います。ひょっとすると、懐園剣が一度、敵勢力、つまりボスヤスフォートの側の手に渡るということでしょうか?・・・そういえば、デコースが一時期それを持つなんて話を、どこかで聞いたことがあるような?むむむ?混乱混乱。
混乱しつつ次のページへ。


五つ目の見開き

マグダルの言葉が、抽象的ながらも核心を言い当てているようで、アルルは冷や汗のようなものを流しながらこの幼い少女を見つめています。「あなたの”白い剣”が、”黒い剣”から私たちを守ってくれるから・・・・・・」マグダルはそう言います。
「白い剣」とは紛れも無く、アルルの所有しているMHエンゲイジ・オクターバーでしょう。ならば「黒い剣」とは、MHバッシュのことでしょうか。
MHエンゲイジは、すなわちMHジュノーンの元になった機体であり、ある意味でMHとしての魂みたいなものを共有していると考えます。ならば、はるか未来のジュノーにおいて、すみれの騎士バナロッテを守った「白い剣」にまで連綿と繋がる、そういう「何か」であると考えます。それと対になるのが黒騎士モンドの「黒い剣」であることもまた道理。はるか未来では共に戦う二本の剣も、この時代では敵、味方に別れて戦うことになってしまっているのでしょうね。
そして明かされる、太天位騎士ジャコーも一撃で沈んだ恐怖の必殺技「かーちゃんキック」の秘密。ポイントは、先にスカートを捲って見せることでした。一瞬そちらに気を引かれた隙に、しこたま股間を蹴り上げるという、身の毛もよだつような残虐な技です。アルル様なんかにこれを出された日には、まず男なら食らってしまいます。でも、これを男であるデプレに教えてもしょうがないような気もしますが・・・。(余談ですが、この技の仕組みって、「セクシーコマンドー」なのではないでしょうか。「すごいよ!マサルさん」をご存知ない方には意味不明だと思いますが、そう思ったもので・・・忘れて下さい。)
そして、ハスハに風が吹きます。
思えば、最初のエピソードではハスハは王様がお披露目に姿を見せたのみ。コーラスXハグーダ戦では参戦予定はあったもののラルゴ・ケンタウリのしくじりでタイミングを逸し、それ以降も所々に人物は出て来るものの、なかなか国自体が表舞台に出て来ることはありませんでした。しかし、マジャスティック・スタンド、そして後に続くと思われる「ハスハ動乱」ディフェンス・スタンドは、ハスハの物語です。
まさしく、この国に風が吹き始めたのでした。
風が吹き、その空が繋がって、AKD、フロートテンプルへと舞台は移ります。
美しいラキシスの膝を借りて眠る(ように見えている)年相応のボケじじい・・・もとい、能天気なアマテラスを、不敬な言葉で見下ろしながら呼び捨てにする謎の存在が現れます。


六つ目の見開き

今まで見たことのない四つ星のエンブレムを付けた、奇抜なデザインの戦艦がフロートテンプルに降り立ちました。謎の存在が、AKDの現状を語ります。
リィが死んでMHレッド・ミラージュの追い込みがストップ。これはミラージュですから当然アマテラスの私費で行われていた事業だったとは思いますが、AKDの国策でもあったはずです。いきなり、国としてのつまずきです。
総司令官のログナーは、一度死んでしまったので、十分に戦闘指揮の可能な状態にまで成長するのに30年はかかるとのこと。これは読者視点ですが、現在が3010年でマジャスティック・スタンド開始が3030年ですから、ログナーが表舞台に立つには10年足りません。
変わりに大兄になったサリオンはまだまだ力不足。これも、ボスやんに手玉に取られたという事実がありますので、しょうがないこと。実際、こう言われても、まだ今の彼にはふくれていることくらいしか出来ません。
アイシャはルーマー王国(AKDの属国の一つでしょうか)の女王陛下になったとかで、もう忙しくて動けないとか。これはまた、なんとも残念な話です。数年前には、まだキュキィを連れてボォスをうろついたりしていましたが、いよいよ、出番が減ってしまうのでしょうか。しかし、まだまだ彼女には、これから物語の中核になっていくはずのヨーン・バインツェルとの絡みがふんだんにあるはずなので、ここは期待して待ちましょう。コーダンテ家は、ワスチャという人物が継いだそうです。設定に見える、アイシャの妹でしょうね。その娘がおそらく、後にミラージュ入りするというルート・コーダンテなのでしょう。
さて、ここで問題です。”ファンタグリナス”とはなんでしょう。
・・・うう、なんじゃそりゃあと思わず泣きそうになりました。これはひょっとして、二重王朝とでも言うべきものなのでしょうか。アマテラス家にそんなシステムがあるなんて、聞いてないぞ、予想すらしていなかったぞ。
昔から日本では、特別格の高い神宮などに、天皇に近い血筋の者を斎宮として使えさせるという風習がありました。元は神だとかそういう日本の皇族の話は置いておきまして、このシステムは、大雑把な言い方ですがなにか中央で非常事態があった時に、そういった宗教組織に派遣されている皇族が中央のバックアアップとして活動できるという、便利なものになったりします。今回出てきたこの聖院サマは、AKDに対してそういった役割を持つ方なのではないでしょうか。
一緒に連れてきているファティマ・ダイオード。そのスタイルは表紙によれば「マンティック・モード」なんだそうですが・・・そんなの、知らないよ~(涙)。どうにも、他のファティマと比べて(バクスチュアルよりも!)機械的な印象がありますし。手を広げて走ったりとか、こういう仕種は個人的には好きなんですが。
話を聖院サマに戻しますが、ただ、このお兄さん、政治的などうのこうのよりも、どうやら他のキャラと同じく自分中心、唯我独尊でぶっとんでるキャラクターらしいので、こういうところは初めて見たキャラクターとは思えません(笑)そしてよくよく観察すると、襟元に、戦艦にも付いていた四つ星の紋章が、その意匠をより明確に僕らに見せてくれています。中にアルファベットが描いてあります。
A、U、G・・・E・・・まさか!


最後の見開き

華奢なボディ。広がった腰のスカート。特徴的なアームガード。そして、大きくせり出した両肩の、間違いなくアクティブバインダーな重装甲。その全てが黄金色に輝いていれば、言わずもがな。これは、オージェです。しかも、エルガイムに出てきた風の。
顔面部には、女性の顔をかたどったようなフェイスガードが張り付いています。聖院サマは「この世で一番美しいMHは、こいつだ!」なんて叫んでらっしゃいますが、なんとも悪趣味だともっぱらの評判です。僕もそう思います。装甲の下の積層金属構造とか、爪先の立ち具合とか、ふくらはぎの構造とか、細部のデザインにはちょっとビックリする所があったんですけど、この顔はいただけません。足元で変なポーズを取っているダイオードは、なんとも良いのですが。
しかあし。その来歴を読んで、僕らの度肝が抜かれます。マシンメサイア(MM)の時代から伝わっている、MHだって!?
それはつまり、MHエンプレスにMMエンシーのエンジンが積まれているというように、何か超帝国時代の、おそらくはオージェという名前のMMから、脈々とエンジンが受け継がれているということなのでしょうか。いや、そもそも、アマテラスのグリース王家はそんな超帝国時代から存続しているような、歴史のある王家でしたっけ?それはハスハやフィルモアの特権だったのでは・・・?
とりあえずそれは置いておきまして、最後のコマの話です。聖院サマは言います。「帝にお会いするのは、250年ぶりだというのに、かわらないなー」。250年前といえば、まだアマテラスがミラージュ騎士団を組織する前です。ならば、彼が「ミラージュに協力する気はない」と言うのもわかる気がします。そんな新造の騎士団がどうしたというんだ、という気持ちが無いわけはないでしょう。
あ、彼について一個思い付きました。日本の斎宮は、男系継承が基本である為か皇族の未婚の女子が派遣されるんですけど、AKDでは、アマテラスは例外的に男王ですけど、基本的に王位は女系継承でしたから、男子が斎宮になっているのかもしれません。まあ、これで彼の何かの謎が解けるというわけでもないのですが。
そんな謎な聖院様が、「いったい帝は何者なんだろうか、ホント・・・」とさらにアマテラスを不思議がるところで、ついに連載休止になりました。次期再開は、早ければ三ヶ月後、遅ければ半年以上も先のことになるでしょう。柱に書いてあるとおり、早い連載再開をお祈りしつつ・・・。

まとめ

見所ありすぎです。こんな状態でお休みに入っちゃっていいのでしょうか。
え~、今回の更新を書き始めた時点では、表紙に関する話も一気にやってしまおうと思っていたのですが、内容があまりに面白く、頭が混乱してきてしまったので、ちょっと間を空けることにします。すみません。

それにしても、果てしなく増えていく、人間、ファティマ、MH達。それらは、使い捨てにされることなく、時間の経過とともに複雑に絡まりあいます。3人キャラクターがいれば、それだけで十分に複雑な関係は構築できるでしょうに、これほどまでに増やされてしまっては、頭の中を全てFSSにしてしまってもまだ追いつかないくらいです。
そういう時に、このコーナーのような文章化され、一応整理されたテキストがあることは、少しは助かるのだなあと、以前の分を読み返していて思いました。少しでも人の助けになるのならば、不本意ながらに社会不適合者をやっている者としては、尽力せねばならんなあと、深く反省する所存です。

なんでも、今年の7月あたりにはファイナルファンタジーの最新作が登場するそうですが、ちょうど作者がそれにはまって、連載再開が一ヶ月は遅れそうなのが痛いです。さらに、夏のうちにはドラゴンクエストの最新作もでてしまうとか。ああ、合わせて二ヶ月は待たされるでしょうね。
FSSファンとは、つまるところ作者のドレイです。共にただ、耐えて待ちましょう。合掌。

キャラクターズ

 このHP唯一の連載企画といわれていたコーナーが半年ぶりに戻ってまいりました。
 とは言っても、我らがFSSの本誌連載が再開したというわけではありません。今月号、および先月号の月刊ニュータイプ誌上におけるFSSのページの内容が、それぞれ4ページづつという少分量でありながらあんまりにも濃いために、「こりゃ読み解いておかねば、あとあと整理がつかなくなって大変なことになるわい」と思い立ったというわけです。
 ところで、どうやら無事発売されたらしい待望の本格副読本「ナイトフラグス」(9月9日時点でまだ未入手)と、突然発表された9月末発売のコミックス第10巻。皆さんお買い逃し無きよう。
 この二ヶ月の誌上でのFSSページは、ようするにその「ナイトフラグス」の内容を少しだけ公開して購買意欲を煽ろうという企画なんだと思いますが、その「ナイトフラグス」自体が第一版が予約だけですでに売り切れ、二版は10月まで待ってね・・・とはどういうことだトイズプレス!(FSS関連本の出版元。)
 まあ、怒っていてもしょうがないので、とっとといつもの読み解きに移ります。公開順とは逆になりますが、今月号から参りましょう。
 ちなみに今回は、いつものように「ページごと」ではなく、紹介されているキャラクターとその紹介文ごとに読み解きを行います。
 あと、僕のPCの辞書ソフト変更に伴って、この更新から本文の文頭が一文字下がるようになりました。読みやすいですね。(自画自賛)

エンゲージ・オクターバーSR1

 「オリジナルジュノーン」なんて勝手な呼び名で呼んでは返って混乱を招くかもしれませんが、とにかく、FSSという作品に登場するすべてのロボットの中でももっとも人気の高いMHのひとつであるジュノーンや、他のエンゲージシリーズの元になっている、最初のエンゲージです。
 ご使用中のブラウザやモニターの性質によっても変わってしまうと思いますが、このページの背景の色の塗装をされた、ここ最近発表されたMHの中ではシンプルなデザインラインを持った騎体です。(誌上でMHに対して「騎体」という言葉が使われているので、ここでもその言葉を使います。)
 乗り手はアルル・メロディ・フォルテシモ4。魔導大戦ではハスハの旗騎として活躍してしまうのだそうです。
 連載の休止間際に、ハスハのMHが本格的な戦争に向けて重武装化していることが読み取れる記述がありましたが、それらの中に立つこの華麗な騎体はひときわ冴えることだろう、と記述されています。
 ジュノーンのシリーズはみんなそうですけど、二の腕が美しすぎます。


アルル・メロディ・フォルテシモ4

 上記のエンゲージSR1のヘッドライナーです。
 それぞれほんとに見目麗しいコーラスの暴風三王女のお一人で、パートナーは・・・誰だっけ?
 特別に新しい衣装というわけでもなく、連載に登場したときのペルシャの王女様のようなひらひらのいでたちです。
 この方、まさかコーラスの敵になると知っていてハスハに入ったわけではないんでしょうが、結果的には自分の出身国の軍勢と戦うことになります。まともな神経なら出撃拒否も辞さないんじゃないかと思うんですが、確か、彼女の行動原理は、コーラスの存在するロンド大陸の剣技の強さをを世に知らしめるコトだったはずですから、自分が勝てばそれでよし、負けたら負けたでコーラス軍の強さが証明されるんだからそれでよし、といったところでしょーか(まったく間違っているような気がしますが)。


セイレイ・コーラス王女

 コミックス三巻にもちらりと登場していたコーラスの王女様です。現コーラス国王であるコーラス4世の実の姉にあたるわけですが、見事なヤンキー家出娘に育っております。
 それにしても、なんと可愛い方でしょう。僕、彼女に完全にまいっております。降参です。
 騎乗するMHは先月に公開されているエンゲージ・オクターバーSR3です。
 魔導大戦の中では、どうやら彼女はどこかの軍勢に属するのではなく、目に付いた強そうなヤツに喧嘩を吹っかけたり、戦争の最中に突然現れてど真ん中に飛び込んで来たりするというとんでもなく無茶な役回りのようです。ああ、ヤンキーの心意気。
 ところで、何度でも言いますけど、彼女は可愛いです。衣装も大変にすばらしい。
 淡い緑色の生地が体に密着した上半身部分のデザインと、フレアスカートのように広がる下半身部分。白いロンググローブに、やっぱり白い膝までのハイヒールブーツ。腰までの短いマントを背にまとい、額に紋章のついたティアラを巻いて・・・あっ!
 このデザイン、「セーラームーン」ですがな。
 くしくも、セーラームーンの育ての親と言われる幾原監督と永野氏は最近異様に仲がよろしいわけで、なんだかそこらへんからデザイン原案を持ってきたのでは、などと考えてしまいます。
 しかし、セーラー服のイメージはすっかり払拭されているあたりが流石です。あえて挙げるなら、パレードのバトントワラーのようにも思えます。
 まあ、衣装の元デザインに予想がついたからといって、バトンならぬ細身の日本刀を手に持って、何者かを睨み付ける彼女のりりしいイラストの前に僕がへろへろになっているということには、何ら変わりはありません。


マロリー・ビュラード・ハイアラキ

 今回はじめて御三方並んで登場された暴風三王女のトリをつとめられますのは、これまた物騒な名前をお持ちのマロリー様です。初めて家系図に名前が出てきたときにはマロリー・マイスナーだった方ですね。
 この方、紹介文に目ん玉飛び出るような記述が満載です。
 まず、ボード・ビュラードの実の妹であり、名前を見ればわかるとおり剣聖「ハイアラキ」の名を継いでいて、ルース家の長女で、コーラス・マイスナー家のMH(エンゲイジMK2)とファティマ(モンスーン)を持ち出していて、魔導大戦ではアイシャと合流してアイシャの「フレーム・ハカランダ」と自分のMR2並べて大暴れするんだとか。な、なんだそりゃ。
 三王女の中では唯一の黒髪で、服装も派手な先の二人に比べてシックな忍者ルック、おまけに履いている靴も二人のようなハイヒールではありません。三人は手に持った剣もそれぞれで、アルルは光剣、セイレイ様は空色の鞘の日本刀、マロリーは朱色の鞘の二本差です。
 それにしても気になるのはこの三人の人間関係です。三人が三人ともそれぞれ異なる立場で魔導大戦に参加するみたいですし、今は「三王女」なんてセットで扱われてますけど、連載に登場したら意外とお互いに憎みあっているような剣呑な関係だったりして。


ファティマ・モンスーン

 コーラスの”デカダンスタイル”のファティマスーツに身を包んだ紫色の髪のかわいこちゃんです。
 マイスターは不明。最近わさわさと登場した新しいファティマ達と同じく、詳しいことはとにかくわかりませんが、元々はマイスナー家のファティマだったそうですから、間違い無く立派な銘があることと思います。ダイオードとか、このあたりのファティマの設定のために、過去のファティマ・マイトにもそろそろ焦点があたるのかもしれません。
 MK2の専属ファティマでもあるようです。


エンゲージ・オクターバーMK2

 ものすごくシンプルなデザインが返って力強さを感じさせる白灰色のMHです。エンゲージシリーズに限らず、今まで公開されているすべてのMHを見比べても、このMK2が一番シンプルな装甲形状をしているように思います。
 SR1と比べてみると、脚部、特にふくらはぎの形状の違いが目に付きます。建造された時点で、運用目的が違ったのかもしれません。(MHは原則として全天候・全地形対応の兵器ですけど。)
 もちろんヘッドライナーはマロリーです。

 ふぅ。やっと見開きひとつ分終わりました。ああ、東の空が白んでいます。
 今日中に完成しますように。


ファティマ・チャンダナ
ダイ・グ・フィルモア新皇帝
V・サイレン・プロミネンス

 このページの三キャラクターは騎士とファティマとMHが揃いになっているので、まとめていきます。
 登場以来、ずっとスカートファッションを続けているダイ・グ新皇帝君、以前に同誌面で線画で公開されていためちゃめちゃワイルドなファッションで登場です。
 その服の色と、チャンダナのプラスティックスタイル・スーツの色は、MHプロミネンスと同じ鮮やかなオレンジです。ドリームキャストカラーです。多分関係ないですけど。
 それにしても、クリスティンのネプチューンがカブトムシで、このプロミネンスがクワガタということなんでしょうが、なんとも勇壮な前立てをつけたMHです。
 紹介文の記述によりますと、その二騎の皇帝騎を、四騎のアルカナ・サイレンに率いられた六十騎以上のサイレンB・C・D型でガードするんだとか。さらに、元剣聖の慧茄とクラトーマ(レーダー王からもらったのかな)が、最新型MH「重帝騎ファントム」を駆って参戦するとのこと。「この布陣を崩すことなど絶対に不可能であろう。」はい、そりゃ不可能です。
 それにしても慧茄さん、少し前まで騎乗するMHが決まってなかったようでしたが、まさかフィルモアの新型に乗って現れるとは。しかも、人間なのにプラスティックスタイルの服を着て登場なさるとか。元気なおばあさんです。
 他にも、チャンダナの戦闘能力に関する記述とかいろいろ気になるところがあるんですが、見逃せないのは、ダイ・グのところにある「魔導大戦では若い騎士が一堂に会するため、接触も多く起こる。このフィルモア皇帝が前ページのヤンキー娘を食事に誘ってもおかしくはありません。」なるトコロ。むきー、セイレイ様に近づくなー!と早くも嫉妬モードに入っておりますお見苦しくてすみません。
 とにかく、魔導大戦はフィルモアがハスハに大侵攻を仕掛けるところがいきなりの見せ場なわけですから、この新皇帝の言動はストーリーの重要な要素に鳴っていくことは、間違いが無いのであります。


ファティマ・アンドロメーダ
MH・姫沁金剛

 IME98って便利ですねぇ。読みのわからない漢字をマウスで書いて検索できるなんて。「沁」の話ですけど。
 このMHの名前はきしんこんごうと読みます。ファティマはアンドロメーダ。ヘッドライナーは言わずと知れたクラーケンベール・メヨーヨ大帝です。
 別名はフランベルジュ・テンプル。テンプルと付くくらいですから設計はDr.ダイアモンドです。わ、名前に金剛って入ってる。こりゃよっぽどの自信作ですね。デザインは釣鐘と観音像だそうで、アンドロメーダのサリーのようなプラスティックスタイルとあいまって、全体的にインド風に仕上がっています。インドには釣鐘は無いでしょうけど。
 MHの装備は、左手にまんま釣鐘の形のシールド、右手には幅広のだんびらを下げております。今回紹介されているMHは、すべてこの「左手に盾、右手に剣」の装備です。きっと、ほとんどの騎体は連載に登場してもこのまんまの装備でしょう。そのヘッドライナー達は皆、実用性より見た目を重視して、なお苛烈な戦場で生き残れる騎士ばかりですから。


最近の美奈子さん

 ページの左上の方に活字と写真で構成された囲みがありまして、その中で先月号のFSSページにて彗星のように現れたファティマ美奈子・3D”氏”の近況報告が、どうやらご本人によって語られております。
 某有名ネットRPG2にはまりまくり、外見上の問題でレザーアーマーより上の鎧をまとわないソーサレスを操って、ディアブロやメフィストを瞬殺して遊んでいるそうです。
 バトルネットをやっていると「美奈子」さんにお会いすることもあるみたいで・・・やろうかな、PCも新しくしたことだし・・・。
 は。
 FSSの話題に戻ります。

ページ最後の小さな囲み&まとめ

 「ケサギ達のガスト・テンプル」
 「ユーゾッタのヴァイ・オ・ラ・エンプス」
 「錫華のハープーン・テンプル」
 「フェードラC(ツェー)」
 「ウラッツエンの兄、ダッグナートが駆るラインシャル・ヒューメトリー」
 ページの最後になって、いきなりこれだけの数の、いままで見たことの無い、ほとんど聞いたことの無いMHの名前がぽんぽん出てまいりました。そして、僕はひとつの不安に襲われたのです。
 ページを戻して確認してみると、他にも
「アイシャのフレーム・ハカランダ」

「慧茄の重帝騎ファントム」
なんて未知の名前も出てきています。
 僕にとりついた不安それは・・・「ひょっとして、それらの新しいMHは、『ナイトフラグス』にも載ってないんじゃないだろうか」というものです。
 「ナイトフラグス」が発売になったのは、予定通りならばつい数日前のこと。それを手に入れ、まるでもう、自分は魔導大戦におけるすべてを知ってしまったのだという満足感に微笑むファン達を、地獄の闇へ突き落とす、「まだあんたらに見せてないデザインはごまんとあるんだよ~」という作者のふんぞり返った笑い声が、なんだか誌面の向こうから聞こえてくるような・・・。冒頭に書いたとおり、僕はまだそれを手に入れていませんから、これらのことは憶測に過ぎません。しかしながら、もし、僕が予定通りに先にそれを手に入れており、そのデザイン郡の圧倒的なボリュームにもみくちゃにされ、自虐的な快感を味わいながら「へっへっへ、これでマジャスティックスタンドもどーんと来いじゃ~」とうすら笑っていた矢先に、そんな「未知の名前の群れ」を目撃してしまったとしたら・・・
 ど、どうなんでしょう。どなたか、もう「ナイトフラグス」を入手された方はいらっしゃいませんか?教えてください、どうか。ハープーン・テンプルはそこにいますか?フェードラCは何色のMHなんですか?

 恐れおののきつつ。
 いきなりですが、本日の更新はここまでにしとうございます。
 ここまでさんざオチにむけてのネタ振りをしてまいりましたが、体力、および時間的に限界が来てしまいました。
 「読み解け先月のFSS」は、9月10日分の更新にてお楽しみください。


 中途半端で切ってしまったので、なんだか、月に代わってお仕置きされそうです。

キャラクターズ+

 昨日から今日の間にかけて判明した重大な事実があります。なんと、「ナイトフラグス」の発売日が9月9日にずれ込んでいたのです。
 すぐさま懇意にしている模型店に入荷したかどうか問い合わせましたところ、月曜日に問屋からの便があるので、それに入っているかもしれないとのこと。
 つまり昨日、原稿を書いている時点(早朝)では、まだ日本中の誰も、ナイトフラグスを手に入れていなかったのです。焦ることありませんでした。
 模型屋さんの手違いが無い限りは、僕も明日の昼過ぎ頃には入手できますから、一日はゆっくり内容を確認するとして、明々後日以降の更新にてその内容を反映させたものが書けることと思います。

 そうそう、改めて読み返してみましたら、昨日の更新のあちこちに間違いがあることに気がつきました。とりわけ、セイレイ様の所属陣営について「とくに無いらしい」なんて書いた部分は大きな誤りで、月刊ニュータイプ9月号のFSSページの記述によれば、彼女はコーラス軍のエリート騎士団トリオに混じって魔導大戦に参加するとのことです。
 資料の読みを軽視するとこういうことになるのだという戒めになりました。今日はそんなことが無いように注意いたします。

 では、昨日の続きにまいりたいと思います。
 先月号、つまり、月刊ニュータイプ9月号の中ほどに載っていたFSS関連記事4ページ、その中で紹介されたキャラクター達の、僕の主観的な整理、読み解きです。
 AKD陣営の四キャラクターと、ハスハやらバハットマやらフィルモアやらの五キャラクター、そして分類不能な存在・約一名が紹介されています。


ファティマ・イカロス

 ついに出ました、男性型ファティマのプラスティックスタイル。
 女性型と同じく、全身くまなくエナメル系素材で覆われたデザインです。ひょっとしたら男性型には男性型の異なるデザインラインがあるのでは、とも思っていたのですが、基本的に同じモノであるようです。
 最近、MTVなどで見かけるミュージッククリップなどに、まんまプラスティックスタイルなコスチュームの人がいたりしますけど、さすがに男性にこれを着せているのは見たことがありませんでした。やっぱり永野氏は突きぬけてます。(特に、少し前にカセットテープのCMか何かで、歌手のMisiaさんがまるでコンコードのプラスティックスタイルのような衣装で歌い踊ってるものを見たときは驚きました。ボンネットまでつけてました。時代ですね。)
 男性型ファティマだと、どうしても股間が気になってしまいますが、それも意図的なデザインの一部なんだと僕は考えます。女性型ファティマのものも、股間部は少々露骨に食い込みが描かれていますし、こういう、全身をくまなく覆い尽くす未来的なイメージのデザインだからこそ、そういった根源的な要素も強調する必要がある、ということではないでしょうか。
 って、そんな目で見ちゃいけないのかもしれませんけど。


ファティマ・弁天(ヴィンティン)

 ニームとも呼ばれ、三つの名を持つファティマとして、設定だけはかなり古い資料にも載っているファティマです。
 脇の記述にも「良い出来だ!!ようやく登場。」とありますように、昔から作者のお気に入りのファティマであったようです。昔から設定があったということは、間違い無くデカダンスタイルのデザインもあるのでしょう。見たいなあ。
 褐色の肌、赤いアイシャドウ、ピンクのルージュと派手お化粧のわりに大人しげな印象を受けるのは、アーリア人系の穏やかな輪郭と優しげな表情のせいでしょうか。
 手元の資料によりますと、クリアランスはVVS1、パワーゲージはB-A-A-2A-Aで、バランシェファティマの№6。パワーゲージの読み方は、順に戦闘能力、MHコントロール能力、演算能力、耐久性、精神安定性です。戦闘能力がBである以外はすべてA以上で、特に耐久性においては2Aときわめて優秀です。
 マスターは、強天位騎士のジャコー。操るMHは、多分シルバー・シュペルター・ハイドラです。

 さて、この「マンガの話」の中のFSSに関する更新で、以前僕は 「4ファッティスについて」 というのを書いておりますが、その時に、このファティマ・ニームについてある予想をたてました。
「4ファッティスの一人『ニーヴ』とバランシェファティマの『ニーム』は、『ハルペルとインタシティ』『アウクソーとフォーカスライト』のように、同一ファティマなのではないか」
というものです。
 根拠としては、「名前が似ていること」あとは「ちょっとボケ子ちゃんファティマであること」程度しか挙げておりませんが、もしこれが当たっていれば、ボケ子ちゃん繋がりで残る最後の4ファッティス「SSL」の正体はチャンダナということになって、4ファッティスの現在の姿が全員確定することになります。
 この「ボケ子ちゃん繋がり」というのは、つまり、「寿命が来つつあるファティマ」ということです。同世代のインタシティはすでに寿命で亡くなっているわけで、ひょっとしたらこの二人も老衰寸前のファティマなのではないかと。フォーカスライトは、アウクソーは複数の情報体を持っている、という話が以前にちゃんとありましたから、そのおかげで二倍長生きできたりするのでまだ寿命ではない、みたいな設定になっているのではないでしょうか。
 それにしても、この予想が当たってしまうとすれば、ニームとチャンダナに関しては魔導大戦中にインタシティのような悲しい話が描かれることになりそうで、少々切ない気分です。


セイント・グリース

 出ました、グリーン・ネイパー、聖院サマ。連載休止の最後の回にいきなり登場されて、僕らを混乱のどん底に叩き込んでくださった、その地位、セリフ、お供から背景にいたるまで、謎だらけのお方です。
 僕は、FSSというのはつまるところ「人類が神を産む物語」であると考えているのですが、その「神」にもっとも近いところまで近づいたお方の一人がこの方なのではないでしょうか。
 太陽星団内では無いと思われる謎の場所「走馬灯と蜃気楼の空間・ファンタズマゴリア」から250年ぶりに帰還中ということで、きっと彼には、星団の外での重要なお仕事があるのでしょう。遥か昔の時代にスタント遊星に向かい肉体を捨てた「炎の女皇帝」や、モナークセイクレッドのかなたへ旅立ったといわれる「オプチカル・タイフォーン」のような存在なのでしょう。もちろん、彼と彼女らが何を目的に、どこで、何をしているのかは僕には全然わかりませんが、ただ一つ言えることは、このFSSの物語の中でその彼らよりもっとすごいことを、アマテラスはのちにやり遂げるのだろうということです。
 彼らはかなりの超越的存在ではあるようですが、まだ「人」ではあるようです。しかし、アマテラスは「全次元全能神」になる存在なのですから(いや、もちろんすでに神なんですけど)。
 あ、そういえば、どうしてアマテラスって産まれつき「神」なんでしょう?さしもの聖院サマもアマテラスの正体についてだけは首をかしげていらっしゃいましたっけ。アマテラスの出生の秘密、それはつまり過去のAKDの王家の秘密であるはずです。ということは、古くから王家を知る存在であるはずの聖院サマが、これから何かそういった話を展開してくれるかもしれません。
 ただ、魔導大戦においては、どうやら国家間の思惑といったような常識的な理由で無い部分で思いっきり武力介入をしてしまう役ドコロの模様・・・。エンゲージ・オクターバーSR1のアルル様と戦うことになるようです。


レッド・ミラージュ

 記述部分にいきなり「このロボットは星団最強のMHなどではない。」と宣言されています。
 以下、まんま引用します。

 「史上最強のロボットである。もはやモーターヘッドとは呼ばれず、モーターメシア、モーターカイザーと呼ばれるにふさわしい。破壊と殺戮の本能しか持ち合わせず、騎士とファティマが搭乗することによって何とかその本能を抑えられているにすぎない。唯一、黄金のMHのみに服従する。
  この最強のロボットはバングもシュペルターも、ヤクトミラージュさえも数秒で破壊する。事実、物語が終焉する7777年まで、このレッド・ミラージュを倒せたMHは一騎たりとて存在しない。」

 ついに行われた最強宣言。ガンダムよりも、ジャイアントロボよりも、マジンガーZよりも、マッハバロンよりも、ゴジュラスよりも、ユニクロンよりも、マクロスよりも、ガオガイガーよりも、ガンバスターよりも、イデオンよりも、ゴーグよりも、隠大将軍よりも、テムジンよりも、ロボット刑事よりも、ついでにドラえもんよりも、レッドミラージュは強いんです。
 はい、納得です。それを納得させるだけのたたずまいが、このイラストにはあります。
 ところで、このレッド・ミラージュ、もちろん形式番号の類はついてないんですけど、ただファティマルームに「オレンジの三つ巴」が。
 まさかヤーン・バッシュ王女ご自身ではないでしょうから、乗っているファティマはエストです。ううむ、いったい何時、誰が駆る騎体なのでしょう。ログナーか、アマテラスか・・・。

 と、ここまで来たところで、ふと時計を見るとすでに9月10日もあと30分を切っております。
 すみません、二日連続の時間切れです。
 最後の見開き1ページ分はまた明日、9月11日の更新にて行うことにいたします。


 9月号のFSSページを最後まで見た方だけがご存知のあの「恐怖」が、もう間近に迫っております。